インターネットカオスとマインドの同一化
以前からオンライン化の流れはあったがコロナが広まったことで、それがさらに加速された感じがある。全ての仕事の注文はネット上で、それを提出して価値をつけられるまで全て小さなスクリーン上で行われているように見える。実際はWebと言う地球全体に張っている蜘蛛の巣をすごい速さで情報を駆け巡らせることでできていることなのだが、1人で仕事をしているとなかなかそれに気づきづらい。
オンライン化が加速し始めて少し経った頃(2020年5月終わり頃)、日本から遠く離れたアメリカでBLM (Black Lives Matter) という人種差別撲滅運動のでもが活発化し始めた。数時間まで対岸の火だったものが、いつの間にか自分のスマホのアプリを、いくらスクロールしてもBLMの話題ばかりになった。その数時間後には自分のリアルでの友達がアメリカのことについて日本でも声をあげようと発信し、その何週間か後には日本でBLM関連のデモが起こった。
その投稿の中に、「この投稿を見た人も自分の身の回りのことそして自分お言動や行動を考えてみてください。人種差別はアメリカだけの問題ではありません。賛同する人は声をあげてください。声をあげないことは差別を容認しているのと同じです。」というようなものがあった。実をいうと、私はこの運動の呼びかけに対して無視し続けている。もちろん、考えていないわけではない。自分の周りのこと、自分がこれまで無意識にしてしまった差別を思い返してはなぜこんなことが起きて、社会システムに組み込まれてしまうほどまでに肥大化するのか、日々考えている。じゃあ、なんで賛同しないの?と言われると、インターネットという世界だからだ。
インターネットの世界は、カオスだ。整備されてきてはいるが、匿名性や誰でも書き込める便利さがそのカオスさを増す原因になっていると思う。インターネットカオスの1つの特徴は声をあげた1番最初の人が正しいような気がするところだ。その情報が性格か、フェイクなのかではなく、1番早かったのだからそれが正しいというような風潮があるような気がする。みんなそれに便乗して、声を大きくする。ある一定の人の耳に届けばYahoo Newsとかに載る。
しかし、インターネットに1度流れた情報に対して批判的な態度を取ると、「なんで?」っていうくらいボコボコに殴られている人たちもいる。俗に言う炎上だが、インターネットではこの殴られ具合がひどい。少しでも違う意見や、情報の持っているエネルギーを減らす可能性がある他の人の意見や情報を見過ごせない人たちが一定数いる。はじめは、一番最初の情報を否定した人を見過ごせない誰かが始めた些細な喧嘩や野次が始まりだったかもしれない。しかし見過ごせない人たちは他人の喧嘩や野次を"引用"して、だんだん集団リンチになる。しかも、なぜ叩いているのかわからないと言う人まで加担してくるから厄介だ。
BLMの話題に戻ると、「賛成してください、声をあげないのは差別しているのと同じです。」というのは、「そうは思いません。」と言う声はどこにいけばいいのだろう。もちろん考えて、自分なりに行動するのは大事だ。その先がSNSでもデモンストレーションでも人を傷つけなければなんでもいいと思う。でも、「人種差別がなんたるものかわかりません。教えてください。」とか「完全には賛成できないけど意見はあります。」と言う人たちの居場所がどこにもない。これを、インターネットカオスによるマインドの同一化と私は呼んでいる。SNSを見ていると、発信しない人の声は完全に無視され、白黒はっきりした意見を常に持っていないといけないような強迫まがいの投稿をたくさん見かける。何も考えず、いつの間にか集団リンチの一員になったり、集団リンチされたりする。傍観はよしとされないような雰囲気がずっとある。
実際、私は後者「完全には賛成できないけど意見はあります。」で、BLMの考え方には賛成だが、デモ抗議には反対だ。たくさんの人とディベートなりディスカッションをして対話を深めていくことで現代の人たちの人種への考え方をすりあわせていくべきだと思っている。必ずしも全員がアメリカの人種に関する法律ができた時代と同じ考え方だとは思わないし、法律よりも先に社会が変わっているはずだ。BLMに賛成の人も反対の人もお互いに対話を続け、理解しあうことを続ければおのずと新しい法律の形や社会システムが構築されていくと思う。時間はかかるかもしれないが、より多くの人ともっと長い時間をかけて対話を持つということが大切だと思っている。
インターネットはあまりにも早く物事が進みすぎて、「ん?ちょっと待って。」と考える時間を与えてくれない。少しよく考えたら、違う視点が見つかったり、最終的には誰かに賛成していても、思考のプロセスや、始まりの地点は違うかもしれない。
それなのにいつもいつも「あなたはどう思いますか?」「あなたは何を考えていますか?」「賛成ですか?反対ですか?」「意見を言ってください!私たちに賛成してください!」…。ちょっとうんざりしてしまった。おかげで今私はInstagramとTwitterは完全に使っておらず、他のSNSもそこまで深く見ないようにしている。自分でSNSを見なくても友達と話していればSNSで話題のことは否が応でも話題になるので、自分で見る必要性はないかな、と思っている。