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知識が豊富な人こそ学ぶべき「インストラクションの技術」


ヨガのインストラクターとして、
様々な資格を取得したり
本を読み漁ったり…
知識を常に積み重ねてる方も多いのではないでしょうか?

解剖学、アーサナの歴史、ヨガ哲学...
知識を深めれば深めるほど、
生徒さんに伝えたいことが増えていく。

しかし、不思議なことに、
知識が増えれば増えるほど
「うまく伝わらない」
という悩みを抱えるインストラクターも多いのです。

本来はインストラクションのコツを
お届けしようと思っていましたが、
今回は、なぜ知識豊富なインストラクターこそ、
インストラクションの技術を学ぶ必要があるのか、
お話しすることにしました。

知識が深いからこそ陥りやすい3つの落とし穴

1. 「当たり前すぎて」説明できない

私たちは、経験や学びによって、
多くのことを
「体が覚えている」
「感覚として分かっている」
状態になっています。

例えば、
「足の裏全体で地面を捉える」
という指示も
インストラクターにとっては当たり前の感覚。

しかし、デスクワークが多い生徒さんにとって、
足の裏全体で地面を感じるという経験自体が、
実は非常に少ないかもしれないのです。

当たり前すぎることほど、
具体的な言葉に置き換えることが難しい。
これは、知識や経験が多い人ほど難しくなるのです。


2. 専門用語が多くなりすぎる

解剖学の知識が増えれば増えるほど、
つい専門用語を使いたくなります。

「大腿四頭筋を意識して」
「仙骨を立てて」
など、正確な表現う方も多いかと思います。
そうすることで
より的確な指導ができると考えがちです。

しかし、生徒さんの多くは、
これらの専門用語に馴染みがありません。
専門用語を使えば使うほど、
かえって理解の壁を作ってしまう可能性があるのです。

余談ですが「鎖骨の上に手を当てて」と伝えた時
何回かに1人くらいは「恥骨」や「骨盤」に
手を当てる方もいらっしゃいます。
知識を持てば持つほど、
どこまでが一般的に使われる表現なのかと
考えさせられるできことです。


3. 細かすぎて核が伝わらない

知識が豊富になると、
一つのポーズにも様々な要素が見えてきます。

  • 足の向き、

  • 膝の角度、

  • 骨盤の傾き、

  • 呼吸

全てを完璧にしようとすればするほど、
指示が細かくなり、
生徒さんが「何が一番大切なのか」
を見失ってしまいます。


なぜ「初心者の視点」を忘れがちなのか

私の話になりますが、
息子がもう少し小さい頃自転車を買ってもらったので
乗り方を教えることになりました。
今でこそ当たり前にバランスが取れているので
どうやって乗っているのか
言葉にすることが難しく感じました。

経験者にとってはあまりにも基本的すぎて、
もはや意識せずに行っている動作を
言語化して伝えることは実は難しいことなのです。

同じように、ヨガの知識や経験が豊富なインストラクターにとって、
「初心者の視点」
を思い出すことは、
意外なほど難しい課題なのです。


知識を「橋渡し」するスキルとしてのインストラクション

では、豊富な知識を生徒さんに届けるために、
私たちに必要なものは何でしょうか。

それは、知識と生徒さんを結ぶ「橋渡し」としての
インストラクションスキルです。

インストラクションスキルの3つの要素

1. 「翻訳」する力

専門的な知識を、
生徒さんの日常生活の感覚や経験に置き換える力が必要です。
例:「骨盤を立てる」→「椅子に座るときのように、お尻の骨で床を押す」

2. 優先順位をつける力

たくさんある指示の中から、
その生徒さんにとって、
今最も重要なポイントを選び出す力が求められます。

全てを完璧にする必要はありません。
その日、その生徒さんに最も必要な1-2点に焦点を当てることで、
かえって学習効果が高まります。

3. 生徒さんの状態を読み取る力

生徒さんの表情、呼吸の様子、
体の動きから、理解度を読み取り、
必要に応じて説明を変える柔軟さが重要です。

実践!知識を活かすインストラクションの具体例

ダンダアーサナ:杖のポーズ
を例にご紹介します

Before:

「脚を前に伸ばし、骨盤を後傾させず、仙骨を立てて座りましょう」

After:

「脚を前に伸ばし、
お尻のゴリゴリっとした骨をマットにしっかり下ろしましょう。
いつもよりもおへその下の部分が太ももにくっつくようなイメージで座ります」

シンプルな表現であっても、
解剖学的な理解に基づいた指示は、
より効果的な結果をもたらすことができます。

まとめ:知識が深い人だからこそ、インストラクションを学ぶ意味

豊富な知識は、
インストラクターとしての大きな財産。
しかし、その知識を効果的に伝えるためには、
また別のスキルが必要になります。

  • インストラクターの当たり前を言語化する力

  • 専門用語を日常語に置き換える力

  • 優先順位をつける力

これらのスキルを意識的に磨くことで、
あなたの持つ深い知識は、
より多くの生徒さんの心と体に届くようになるはずです!

次回からは
インストラクションスキルを向上させるための具体的な練習方法
インストラクターが意外とやっていないこと
などをお話ししていきます。

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あかね//ヨガインストラクション研究室-失敗から学んだ、伝え方のヒント-
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