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ルーシー・R・リパード「美術の非物質化」の要約

本稿は、1960年代以降に発生したと言われている「概念芸術(イデアルアート)」についての考察を行なっている。本稿では、この概念芸術が作品の物質性をなくし、非物質化を呼び起こすものであることを主張している。この非物質化によって、作品の中でオブジェは否定され、全く廃れてしまうだろうと予言している。

まずリパードは、概念芸術の方向性を、観念的なものと行為的なものに分けた。観念的な芸術は、情感を観念に置き換えており、物質性を否定する。その一方で、行為的な芸術は、概念への一つのエピローグとなる。物質はエネルギー・運動・時間として用いられる。例えば、写真やパフォーマンスなどの表現は行為的な芸術にあたると考えることができる。
また、彼女は「観念としての美術と行為としての美術には共通して、ある連続的な配置があるという。例えばその中で、「動きはパターン生成の根源である」とリパードはいう。写真でいえば、時間層の積み重ねという連続性のパターン。また、ルウィットの作品は、部分を一つの彫刻として見ることができ、また全体を彫刻として見ることができ、作品の中に単一性と統一性を同時に認めることができ、我々の思考を発生させる。

概念芸術のアーティスト

さらに彼女は、画家ジョセフ・シリンガー『芸術の数学的基礎』を引用し、概念芸術が
美学以降に発生する芸術であると述べる。そのような具体的な事例を以下のアーティストの作品が挙げている。
ロバート・ラウシェンバーグ、イブ・クライン、クリスト、クレス・オルデンバーグ、ロバート・モリス、カール・アンドレ、ソル・ウィット、メル・ボクナー、ジョセフ・コズス、クリティン・コズロフ、河原温、テリー・アトキンソンとマイケル・ボールドウィン、ハンス・ハーケ、ジョン・ヴァン・ソーン、ウィリアム・アナスターシ、ウォルター・デ・マリア
また、以下は概念芸術としては美学的な展開をしている、もしくは概念芸術の否定をしている作品。
ダン・フレイヴィン、ロバート・ライマン、マイケル・カーヴィ、フォレスト・マイヤーズ、ロバート・スミッソン、ロック・バースルム、ロバート・ヒューオットーなどが挙げられる。

非物質化した芸術の源

彼女は、非物質化した芸術の源は、ダダやシュルレアリスムであると考える。この最もとプロトタイプとなるのは、デュシャンである。ここで彼女はデュシャンの作品の時間性や非物質性の関心を分析した。デュシャンの幾何学や数学、宇宙、4次元の関心から作られる作品は、その後の概念芸術を予言しているかのようである。

合理性の極みの果てに、非合理性のアウラの発生

また、彼女はこのような概念芸術の中に理解し難いような作品についても語っている。このような作品には、作品は一見シンプルだが、複雑な概念を内包しているがゆえに、観客の理解を得られないような結果になる。しかし、概念的な美術も極端な非合理のアウラを帯びることができる。例えば、ダンボーベンやアンドレなどの「無限に繰り返されるある同一の形、もしくは列における見たところまともで、かつ教唆的な己の前提に、ほとんど狂気に達するほどの詩的で凝縮された強かさをにじみこませる」という。

芸術批評の終焉

上記のような、考察の上、概念芸術の難解さゆえに彼女は未来の芸術をこのように語る。「知的・美的なよろこびは、作品が視覚的にも強く論理的にも複雑なとき、この経験に同化しうるのである」と。そして、「近い将来には、芸術家が文筆家になるのと同じように、文筆家も芸術家になる必要が生じてくるかもしれない」。オブジェの非物質化は、最終的に、批評の解体に導くと彼女は考察し、論を閉じている。

学術的意義 背景

当時の背景をアートスケープ沢山氏のテキストより抜粋

マイケル・フリードは、ミニマリズムの芸術について、R・モリスやD・ジャッドの作品に見られる観念の実体化こそを批判したが、リパードもまた、モリスのミニマリズムを定義するうえで、その形態的な単純さよりも、むしろデュシャンに通じるような観念性に注目している。つまり、リパードの論考は、「非物質性/超概念性/観念性」という論点から、コンセプチュアル・アートとミニマリズムとの境界が曖昧に受容されていた68年当時の状況を生々しくドキュメントしているのである。

https://artscape.jp/artword/index.php/%E3%80%8C%E8%8A%B8%E8%A1%93%E3%81%AE%E9%9D%9E%E7%89%A9%E8%B3%AA%E5%8C%96%E3%80%8D%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%BB%EF%BC%B2%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%89

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