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一夜限りの港区女子2
窓の外に見える巨デカな東京タワーと、
東京タワーなんかに目もくれない女子たち。
開催されたお部屋は有名美容整形外科のお医者さまのお宅だった。
いや、正確にはそこに居住はしておらず、
ただ借りてるだけの部屋だった。
薄暗い間接照明に、カーテンなしの窓。
ソファとテーブルだけのまるで生活感のない部屋。
テーブルにはオードブルが広げてあり、
「シャンパン飲む?お酒弱いなら冷蔵庫にカフェパとかもあるよ!」
初対面の男性がニコニコ話しかけてきた。
よく分からんが自己紹介とか不要らしい。
勝手に好きに飲んでくれと。
家主のお医者さまのほか、
TV局のディレクターという方とか
ハイパーメディアクリエイター(古い)的な謎の肩書きの方たちがいた。
私は先輩の横でカフェパをすすりつつ、
存在感を限りなくゼロにして周りを観察していた。
しばらく経ったとき、
「今日誕生日の子がいまーす♡」
キラキラ女子の1人が声を上げた。
今日は誰かの誕生パーティだったのか。
知ってたら花でも適当に買ってきたのに。
拍手の中、
ロウソクが付いたケーキが運ばれてきた。
そして
私の前に置かれた。
え?
プレートには
「Happy birthday AKANE♡」
茜ちゃんって子、他にもいるのかな?
先輩の方を見ると
「早くロウソク消して♡」
と圧強めに拍手を送っていた!!
「わ…わーい!ありがとうございます!」
フー
ケーキの味とかよく分からなかった。
私の誕生パーティーだったという混乱。
その後、
「終電なので帰ります♡」
という数名の女子と一緒に退室。
先輩と駅に向かって歩きながら、
「あのー、どういう会だったんですかね?」
「いつもあんな感じだから気にしないで。
誕生日近いって言ってたでしょ?だからケーキ買っといてもらっただけ」
これが港区の日常か…
その後私が港区女子に目覚める事はなく、
先輩は何かの若手ベンチャー社長と付き合い
六本木からタクシー出社をかます日々。
そして一夜限りではあったけど、少しだけ後日談。
約1年後の私の誕生日が近づいた頃。
「茜ちゃん!お誕生日のお祝いに東京湾クルーズしない?」
あの日なぜか連絡先を交換することになった
男性の1人からメールが来たのだ。
1年間何もやり取りしてないのに。
既読後、そっ閉じ。
おしまい♡