「シカシカシカシカ...」 国道240号に突如現れる独特な「シカ注意看板」の設置秘話を聞いた!
シカ
シカ…!
シカ……..!!!
シカが多すぎるて!!!
こんにちは。
シカの多さに驚いています、協力隊の崎です。
いや、本当に阿寒町に引っ越してきて最初に驚いたのが「シカの多さ」でした。だってシカなんて奈良公園か厳島神社でしか見たことなかったですもん。
まさか道路脇であんなに見かけるなんて思ってもいませんでした。たまに普通に町内を歩いているのも見かけます。
しかも、ただ道路脇にいてくれるだけならいいんですが、困ったことにヤツらは道路に急に飛び出してくるんですよね…
すでに何度もシカと車の衝突事故現場を見かけました。私自身も危ない瞬間を経験しています。(あと数センチで当たってた)
徐々にシカの多いエリアや、シカを見つける特殊能力みたいなのが備わってきましたが、初めて走る道や観光客にとってはそんな能力を持ち合わせているはずありませんよね。
そういった事前情報がなくても「シカの飛び出し注意」をドライバーに伝えるために、この世には「動物注意看板」というものが存在します。全国の道路にもありますよね。このような動物が描かれた黄色い看板。
シカに限らず、キツネやタヌキのほか、クマやリス、タンチョウなど地域特有の動物が描かれた動物注意看板もありますね。
さて、そんな動物注意看板ですが、
阿寒町を縦に走る「国道240号」に独特なシカ注意看板があるのをご存じですか?それがこちら。
こんなシカ注意看板、見た事あります???
初めて見た時はびっくりしました。
1枚目はシカがうじゃうじゃいる4頭もいる看板。2枚目は子鹿?のような2頭目が描かれた看板。どちらもかなりメッセージ性が強い看板ですよね。
シカ注意看板に新しいデザインが加わったのか?と調べてみたのですが、どうもこのデザインの看板は全国でもここだけのよう。
詳しく掘り下げてみたくなった私は、この看板の設置を決めた担当者さんへ取材を依頼。快く受けてくださいました。
今回はそんな「独特なシカ注意看板」の設置秘話をお届けします!
■国道240号は道内トップクラスのシカ衝突事故エリア
ー本日はどうぞよろしくお願いします。あの独特なシカ注意看板について色々とお伺いさせていただければと思うのですが、それにしても本当にこの国道240号線はシカが多いですよね。
担当者さん:まずはこの資料を見てください。
ーこれってまさか….
担当者さん:平成26年度(2016年)〜令和3年度(2021年)に国道240号線(弟子屈道路事務所管内)で起きた「シカ衝突事故」リストです。
ものすごい数の事故が起きているんですよ。
ーこんなに起きているんですか…しかも弟子屈道路事務所の管轄エリアって国道240号線の途中までですよね?
担当者さん:そうですね。国道240号線は釧路市と美幌町までをつないでいて、その内の阿寒町エリアを私たちは管理しています。この区間内で起きたシカ衝突事故の数が先ほどの資料に書かれていますね。
担当者さん:国道240号(阿寒町)は道内トップクラスのシカ衝突事故が起きている道路なんですよ。
■シカ衝突事故防止対策を考えるなかで…
ー道内トップクラス…でも確かにそれを疑わせないほどシカの数は確かに多いですね…。やはりあの独特な看板も「事故を減らしたい」という思いが発端なのですか?
担当者さん:もちろんその通りです。まずは鹿注意看板の設置箇所の見直しを考えました。
ー見直しですか。なるほど。
担当者さん:そうです。というのも、環境の変化などによりシカが多く出没するエリアもそれに伴って変わってきていると感じたんです。
それを踏まえて、今設置されている注意看板の場所は適切か、数は足りているかを改めて見直そうと考えました。
ーなるほどなるほど。
担当者さん:そこで、先ほどのシカ衝突事故リストをもとに、どこで多く事故が起きているのかをリサーチしていきました。
これは事故が起きた箇所を赤点で示したものです。赤点が多いほど、その場所で衝突事故が何度も起きているということになります。
ー徹底なリサーチ!すごいですね…この資料とても興味深いです。確かにこの赤丸が大きいところはよくシカを見かけます。
担当者さん:このようなリサーチを終えて、「標識の設置基準と照らし合わせて国道240号のシカ注意看板を増やそう!」という結論に至ったんです。
ーそうなんですか!過去よりも看板の数が増えたんですね。確かに看板の数は多いとは思っていましたが、そういう背景があったとは!
●ただ増やすだけではなく…
担当者さん:ただ増やすだけじゃなくて、特に事故が多いところは、よりドライバーが看板に意識を向ける工夫が必要だと考えたんです。
ーあ!その工夫がまさに!
担当者さん:そうです。あの独特な看板が生まれることになったんです。
ーなるほどそういう背景だったんですね!!
●数種類の候補から選ばれた"2枚"
ーあの2枚のデザインになった経緯はどういったことがあったんですか?
担当者:実は新しいデザインの看板は他にも候補があったんですよ。笑
この6案がありました。
ーええ!そうなんですか!これめっちゃ面白い。やはり当初から複数のシカが描かれていたんですね。
担当者さん:そうですね。
やはり、「シカは1頭だけじゃない」というメッセージは強く打ち出していきたかったですね。群れで行動する、後に続くように2頭目が出てくるというシカの習性に沿った看板を描いてもらいました。
ーこの看板めっちゃ奇抜ですね。笑 これがもし設置されていたらじっくり見てしましそう。
担当者さん:そうだよね。実際に見たらインパクトに関しては申し分ないですね。
ー「4頭バージョン」と「反転色バージョン」はパッと見ても全然違うなとわかるんですが、そのほかほぼ一緒のように見えるんですが….
担当者さん:よーく見ると違いますよ。前足の向き、後ろ足の向き、首の太さ、顔の向き。どれも似ているようで違うはずです。
どれが1番シカっぽく見えるかをデザイナーさんが細かく提案してくれました。
ー確かに!ほんとですね。よーく見ると違う。
ここから採用の2枚にはどうやって絞られたんですか?
担当者さん:事務所内で検討し選定した結果が採用されたという流れですね。
■シカとの衝突事故を防ぐには?
ー看板誕生秘話とても興味深くて面白かったです。ありがとうございました。
続いてなんですが、道路のプロ直伝の「シカ衝突事故を防ぐポイント」を教えていただきたいのですが何かありますか?
●早朝と夕方、夜は特に注意!
担当者さん:シカって時計でも持ってんじゃないかと思うくらいに早朝と夕方に道路脇に現れるんですよ笑 やはり、日の出と日の入り前後の時間帯と夜中は注意して走ってほしいですね。
ー日が暮れる時間になった途端に現れますよね。交通量の少ない夜中は道路の真ん中に立ってるシカもいるし危ない…
●不自然な反射や影があればまずは減速
担当者さん:難しいかもしれないけど、不自然な反射を感じたらブレーキを踏むことかな。例えば、対向車のライトが影になったりすれば、それは対向車の前を何かが横切った可能性もあります。
あとは動物の目の反射ですね。夜中に走っていて小さく2つの光がチラついていればそれは動物の目の反射光の可能性もあります。
とにかく不自然な光や影を感じたらまずは減速することを意識するのは大切かもしれないですね。
ー難しい…けどとても大切な意識ですね。夜は特に遠くが見えないから、光や影を頼りに見つけるしかないですもんね…
●まずはスピードを出しすぎないこと
担当者さん:あとはやはりこの付近を通るときはスピードを出しすぎないことですね。笑
ーこれはもう鉄則ですね。夜は怖くてスピードなんて出せない体になりました。
■もしシカと衝突したら??
ー最後に、もしシカと衝突事故を起こしてしまった時の対処法を教えていただきたいです!
担当者さん:まずは警察に電話ですね。事故の処理などは警察が必要に応じて道路管理者に連絡してくれるはずなので、事故を起こしたらまずは警察を呼ぶ。これはどんな事故でも変わりないと思います。
ただ、「事故を起こした場所がどこかわからない」ということが結構多いんですよ。あまり走らない道だとここが国道何号かなんて意識しないですよね。観光客なら余計に。
ー確かに。それは僕も不安かもしれないです。まだまだ知らないエリアも多いですし。そういう時ってどうすればいいんですか?
担当者さん:そういう時は道路脇の標識とか、矢羽根ポール(道路の端を示す矢印の形をしたポール)に書かれた「キロポスト」という数字(管理番号)を警察に伝えればいいんです。高速道路にも同じような数字が書かれた看板があるはず。
ーこの数字を警察に伝えればいいんですね!
担当者さん:そうです。この数字をもとに正確な位置を警察が調べてくれるはずです。
ーめちゃくちゃ勉強になる….
■取材後記
ーそれにしても、あの看板に他の候補があったとは…
特にあの色が反転するやつ、実際に設置されてたらどんな感じやったんやろう?笑インパクト強すぎてそっちに目がいってしまいそう。
設置秘話だけでなく、シカ衝突の対策なども聞けて、深みのある記事にすることができた。どうやらこれからの春と秋シーズンは国道240号線で特に事故が増える時期らしい。シカが移動する時期なんだって。
とにかく北海道の道を運転する皆さんはシカに注意すること!景色も良くて、信号もなくてスピードを出してしまう気持ちもわかりますが、油断禁物です。
自分も注意しなきゃな…
事故だけは本当にしたくない…
それでは皆さんもお気をつけて!
最後に道路脇で優雅に草を食べていためちゃくちゃ大きい雄シカを置いておきますね。それでは!
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