"空想日記"⚡️⚡️⚡️no.110
利根子『そんな………。』
利根子の声が震える。
天音『伯父様…
"なき頭"って…なに?』
天音が不安そうな表情で尋ねた。
幸杜『そうだね…
もう何年も現れていなかったから
子供達は分からないな…
…… 天音ちゃん
" 堕鬼(だき)"は知ってるかい?』
天音『うん。
お母さんから聞いたことがある…
怖くて、人を襲う悪いケモノ…』
幸杜『……そう
雷山に棲む獣達の中から
時々、現れる
呪力に侵された獣を
"堕鬼"と呼ぶんだ。
堕鬼となった獣は…
骨格が変わり、体の至る所が裂け
肉が剥き出しになる。
絶えず腐臭を漂わせ
草食で大人しいものでも
狂暴になり、手当たり次第
他の生き物を無秩序に喰らう
その様は、まさに鬼以下の獣物…
これが"墜鬼"と呼ばれる所以だ。
そして、
その堕鬼の中には
人の頭だけを喰らう
堕鬼が存在する…
他の堕鬼と違い
何故、頭だけを喰らうのかは
わかっていない…
恐ろしいのは、
誰もその姿を見た者がいないという事…
頭の無い遺体、"なき頭"
それ以外の痕跡をのこさず
腕に自信のある狩人達でも
探し出す事が出来ずにいる。
本来の堕鬼とは異なり
高い知性を持っていると考えられる。
その存在を唯一
指し示す"なき頭"は
首を引き抜かれるように
残されている事から
皆は、その獣物を…
"首鬼"(くびき)
そう呼ぶ…。』