"空想日記"⚡️⚡️⚡️⚡️no.170
十造は
神妙な面持ちで
語り始めた。
十造『地獄の山籠りも
いよいよ大詰め。
"妙雷山"と"霧幻樹海"を繋ぐ難所…
《千針峡谷》(ちばりきょうこく)を
抜ける修行。
通称"剣山下り"の最中だ…
霧幻樹海から発生する
霧によって
足場が濡れていて
視界は、ほぼ皆無…
誤って、
足を滑らせたら最後…
剣山のように切り立つ
岩肌に叩きつけられ
絶命する…
まだ、"壁翔け"を
習得していない
俺たちにとっては
自殺行為に等しかった。
今考えると
馬鹿げた修行だったな…』
誠剛と私は
深く頷いた。
十造『連日の鍛錬で
俺たちの疲労は
とっくに限界を超えていた。
少しでも早く
下山して
修行を終えたい。
そういう
気持ちの焦りが
良くなかった…
案の定、
俺は足を滑らせ
谷に落ちてしまった。
悲鳴にも似た声を
あげたが…
皆、自分の事で手一杯。
…死を覚悟したよ。
その時だ…
誰かが
谷を落ちる
私の足を掴んだんだ。
逆さまで
よくは見えなかったが
大きな荷物を背負った
女の子だったと思う…
その時は、正直…
幻でも見ているのかと思ったよ。
そのまま、気を失ってしまったから
すっかり忘れていたが…
さっきの
幸杜の話を聞いて
一つ、はっきりと
思い出したことがある。
その娘の目は
透明感のある深い青、
瑠璃色に輝いていたよ……。』