見出し画像

アイスランド語の語形変化を調べる

アイスランド語を学ぼうと思っても、日本語ではあまり情報がありません。そこで、日本語でアイスランド語学習の一助となるものを紹介します。今回は、活用形を調べるときに重宝するウェブサイト「Beygingarlýsing íslensks nútímamáls」を紹介します。なお、変音規則については扱いません。

現代アイスランド語の語形変化を調べるために

アイスランド語を学ぶとき、日本語にはない語形変化に戸惑い、高い壁を感じて諦めてしまう人がいるようです。いくつかのパターンがあるので、それを覚えれてしまえば(そこまで)辛いものではありませんが、覚えるまでは確かに何度も確認することになるでしょう。アイスランド語における活用形を調べるのには、以下のウェブサイトが重宝します。

Beygingarlýsing íslensks nútímamáls (現代アイスランド語の活用表)

画像1

例えば、原型が分からない語を検索窓にいれ、「Leita að beygingarmynd」の横にあるアイコンをクリックしてチェックマークを表示させ(デフォルトでは非表示)、「Leita」をクリックすると、候補の語が表示されます。

名詞の活用表

試しに「nútímamáls」(「現代語」の意。nútímamálという中性名詞の単数属格形)を調べてみると、以下のような結果が表示されます。

画像2

格変化一覧の太文字(nútímamál)が原形です。その横には、中性名詞(hvorugkynsnafnorð)と書いてあります。

表のうち、左側の2列が単数形(eintala)で、右側の2列が複数形(fleirtala)です。そして、奇数列は冠詞なし(án greinis)の格変化、偶数列は冠詞あり(með greini)の格変化を表しています。

それぞれの列が表す格変化は、上から主格、対格、与格、属格の順です。(nf.はnefnifall(主格)の略、þf.はþolfall(対格)の略、þgf.はþágufall(与格)の略、ef.はeignarfall(属格)の略です。)


せっかくなので、形容詞や動詞についての語形変化も見てみたいと思います。

形容詞の活用表

このウェブサイトの名前に含まれる形容詞(íslensks)で検索します。

画像3

まず、「íslenskur」と原形が表示され、その横には形容詞(lýsingarorð)とあります。その下にある太文字は、上から原級(frumstig(比較級でも最上級でもないもの))、強変化(sterk beyging)とあります。ここで詳しい文法の説明はしませんが、強変化は、冠詞や指示代名詞が付いていない名詞に使うときの活用形、という理解で十分です。

さて、形容詞の活用表も、名詞のときと同様に大まかにふたつに分かれています。左側が単数形(eintala)、右側が複数形(fleirtala)です。そして、格が4つあることも、名詞と同じです。

しかし、アイスランド語の名詞には性が3つあるので、形容詞は、それぞれの性に合わせて語形変化させねばなりません。単数形と複数形のそれぞれの表が、左側から、男性(karlkyn)、女性(kvenkyn)、中性(hvorugkyn)に分けられています。

形容詞の変化表は、さらに続きます。ページをスクロールしていくと、まず弱変化(veik beyging)の活用表が現れます。

画像4

その次には、比較級(miðstig)の弱変化の活用表があります。

画像5

ありがたいことに(?)、比較級には強変化がありませんし、活用形のほとんどが同じ形なので、覚えるのも簡単です。しかし、この次に来る最上級(efsta stig)には、強変化と弱変化がそれぞれあります。

画像6

画像7

ここまでで、形容詞の活用表は終わりです。英語でいえば語末が「-ing」や「-ed」の分詞形容詞と呼ばれるものは、形容詞の活用表に含まれていません。そのため、形容詞かと思って検索した語が、実は動詞の過去分詞だった、という場合もあるかもしれません。最後に、動詞の活用表をみてみます。例として「leita」(「探す」という意)を取り上げます。

検索結果が複数ある

画像8

「活用形を探す」(leita að beygingarmynd)にチェックしたままで「leita」を検索したので、候補が3つでてきました。つまり、原形だけでなく活用表も含めると「leita」という語形をもつ単語が、3つあるということです。今回調べるのは、一番上の女性名詞(kvenkynsnafnorð)でも一番下の中性名詞(hvorugkynsnafnorð)でもないので、真ん中の動詞(sagnorð)を選びます。(ちなみに、原形の横に「leitaði、leitað」とあるのは、活用の一部です。「leitaði」は直説法の単数過去形で、「leitað」は完了分詞です。)

動詞の活用表

画像9

今まで通り、まず太文字で原形(leita)が表示されました。その横には、直説法の単数過去での活用形(leitaði)と、完了分詞での活用形(leitað)が並び、最後に動詞(sagnorð)と書かれています。

この下には、太文字で能動態(germynd)とあり、その次には不定法(nafnháttur)と書かれ、「að 原形」という形で不定形が示されています。その下には太文字で人称的用法(persónuleg notkun)とあり、その次には直説法(framsöguháttur)と書かれています。一番最初に来るのは、直説法の活用表です。

この表も、名詞や形容詞の活用表と同様に、左右ふたつに分かれています。左側は現在時制(nútíð)で、右側は過去時制(þátíð)です。そして、奇数列は単数形(et./eintala)での変化、偶数列は複数形(ft./fleirtala)での変化を表しています。行については上から一人称(1. pers.)、二人称(2. pers.)、三人称(3. pers.)です。(各人称を略さずに書くと、それぞれ、「fyrsta persóna」、「önnur persóna」、「þriðja persóna」です。)

動詞の活用表のうち、人称と活用形の間に載っているのは、それぞれに当てはまる人称代名詞です。
「ég」は一人称単数、
「þú」は二人称単数、
「hann」(男性形)「hún」(女性形)「það」(中性形)は三人称単数、
「við」は一人称複数、
「þið」は二人称複数、
「þeir」(男性形)「þær」(女性形)「þau」(中性形)は三人称複数
です。

一人称と二人称の代名詞には、性がありません。また、形容詞と異なり、動詞自体の活用では、主語の性を気にする必要はありません。ただ、述語や修飾語として用いる形容詞は、一人称や二人称の代名詞が指す人物の性別によって、語形変化させなければいけません。たとえば「私はアイスランド人です」というとき、「私」が男性なら「Ég er íslenskur」となり、女性なら「Ég er íslensk」となります。)

直説法の現在形と過去形の次には、接続法(viðtengingarháttur)の活用表が来ます。アイスランド語には、接続法現在(viðtengingarháttur nútíðar)と接続法過去(viðtengingarháttur þátíðar)があります。ここでは、接続法についての解説はしません。

画像10

さて、接続法の次には、中動態(miðmynd)と太文字で書かれ、その下には不定法とあります。能動態のときと同様に「að 原形」で中動態での不定形(leitast)が示されています。この次には、中動態における直説法と接続法の活用表が続きます。

画像11

画像12

能動態の接続法の活用表が終わったら、命令法(boðháttur)の活用表です。左右で能動態と中動態に分かれていますが、中動態の方には何もありませんので、気にしなくてかまいません。

命令法の表は、上から短縮形(stýfður/stýfður boðháttur)、単数形(et./eintala)、複数形(ft./fleirtala)の3つです。

短縮形は、動詞の原形そのままです。後続のものに比べて口語的な表現で、否定副詞の「ekki」のあとに置いて(たとえば「Ekki leita」のように)「~するな/しないでください」と言うときに使われることが多いです。また、大人よりも子どもがよく使う表現です。

単数形の命令法は、誰かひとりに向かって使うときに用います。複数形は、複数人に向かって使うときに用います。このふたつの活用形で否定副詞の「ekki」を使う場合は、動詞の後に置きます。単数形では「Leitaðu ekki」、複数形では「Leitið ekki」です。

もう少しで動詞の活用形も終わりですが、命令法のあとには現在分詞(lýsingarháttur nútíðar)が載っています。動詞「leita」の場合は、「leitandi」です。

現在分詞の次には、完了分詞(sagnbót)の活用形が来ます。能動態と中動態でのそれぞれの活用形が載っています。能動態では「leitað」で、中動態では「leitast」です。

画像13

過去分詞(lýsingarháttur þátíðar)の活用表が続きます。過去分詞は、受動態を作るときに用いたり、形容詞的用法や補語としても使います。そして、過去分詞の活用表は、形容詞のものと同様で、1)強変化か弱変化か、2)単数か複数か、3)性、4)格によって語形変化させる必要があります。

画像14

強変化のあとに弱変化の活用表が来ます。これで、動詞の活用表も終わりです。他にも、人称代名詞の変化表なども別にありますが、上記のものに比べれば何でもありません。

おわりに

アイスランド語学習での最初の壁は、語形変化を覚えることにあるようです。いくつかのパターンがあるので、それを覚えてしまえば大きな苦労はないでしょうから、早いうちに覚えると楽だと思います。ただ、語形変化には例外がありますし、どの活用形を使えばよいのか分からなくなったときなどには、このウェブサイトBeygingarlýsing íslensks nútímamáls (現代アイスランド語の活用表)はとても重宝します。

次回は、アイスランド語学習で重宝する辞書を紹介します。

いいなと思ったら応援しよう!

朱位 昌併(AKAKURA Shohei)
アイスランド語−日本語および日本語−アイスランド語辞書の作成やアイスランド文学の翻訳・研究のために使わせていただきます。