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わたしの可愛い人―シェリ (2009) CHERI 監督 スティーヴン・フリアーズ

レア(ミシェル・ファイファー)は、ベルエポックの時代の、かつての高級娼婦。瀟洒な豪邸に住んでいて、執事と何でも話せる家政婦がいる。40代後半になっても体形と美貌を保ち、美しい衣装を着こなし、知性と優美さと品格を兼ね備えた女性。

かつての仲間の息子フレッド(ルパート・フレンド)は19歳。父のことは知らず、母の愛もあまり知らずに育った。既に遊び飽きて、19にして退廃的雰囲気を醸し出している。レアのことは慕っているし、レアも彼のことを生まれたときから知っていて、シェリ(かわいい人)とよんでかわいがっている。

このフレッドの母が、フレッドをレアに任せちゃおうというんだからなんだかちょっと理解しづらくないですか? でもまあ、年は離れていてもこの二人が贅沢に6年一緒に暮らしたっていうのは案外違和感なく納得できました。セリフが英語だったり、時々入るナレーションが妙に軽い感じだったりするのが少し気になったけれど、衣装やレアの豪邸、車、ビアリッツのホテルはそれは素敵で、単純に楽しめました。

でも、やっぱり、40歳を越えた女じゃないとレアの痛みはなかなか感じられないだろうと思います。子供といってもいいほど年の離れた男との恋。日々男になってゆく彼。一方、日々衰えていく自分の美貌、枯れてゆく“女”を毎日鏡の中に感じる苦しみ。美しさと品格を精いっぱいに保ちつつ、シェリの突然の結婚話にも、その若い結婚相手の女に対しても嫉妬を隠す。平静を装い、それでいて彼の保護者になることは避けなければならない…。ジリジリと痛みを感じました。

原作となった小説の「シェリ」も後から読んだんですが、結末が全然違います。映画のほうがきれいなエンディングなのかもしれませんね。

女がかなり年上の恋の話には、サガンの「ブラームスがお好き」があります。1961年に映画化もされているようだけど見ていません。それでも、女はまだ39歳。「華麗なる恋の舞台で」という映画はたしか45歳くらいの女優をアネット・ベニングが演じていたっけ。あれはしたたかで大変良かったです。

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