【本30】生産性
「生産性を上げる」とはどういうことか。
どうすれば生産性が上がるのか。
とてもわかりやすく、実践にも使える方法がたくさん書かれています。
少子化と高齢化が急速に進む日本では、今後、今までよりはるかに多くの人が、働きながら育児や介護を担当することになる。
こういった社会的問題についても、生産性を向上させることで本質的な課題を解決することにつながります。
目指すべきは『生産性向上』。
そしてなぜそれに取り組むのか、をきちんと共有して、本気で取り組むこと。
それが第一歩。
☆本の内容☆
「成長するとは生産性を上げることである」
成長するとは、新たな知識や技術を習得することでも、英語がうまくなることでもない。
それらを駆使して仕事の生産性を上げることができたかどうか。
それがすべて。
○軽視される「生産性」
生産性という観点に絞ってみれば、最も生産性の高い状況とは、
『最終的に入社をする10人だけが応募してくる』こと。
もちろん現実的にはそんなことはありえない。
しかしこれが目指すべき方向性だということは理解しておく必要がある。
採用には多大な経費と人手がかかる。
自社の採用基準を満たし、かつ確実に入社してくれる10人が受けに来てくれたら、他に何人もの応募がある必要はない。
これは本当にその通りですね!!
生産性を上げるとはどういうことか、を考えさせられます。
○量を追う発想が生産性を下げる
とはいえ、採用目標が10人の企業に10人しか応募がなければ、たとえそれら応募者の質が非常に高くても、多くの企業では「応募者が少なすぎる」という声が上がる。
おそらく人事担当者は、経営陣から大目玉をくらうことになる。
なぜ多くの企業がそういう方向に走ってしまうのか。
理由は二つ。
まずは、「採用人数を増やすためには、応募人数を増やすしかない」と思い込んでいること。つまり、生産性を上げるという発想がないこと。
「応募者が多ければ多いほど、採用可能な学生が増える」という思い込み。
「50人集めれば、採用できる学生が一人はふくまれている。だから10人採用したければ、500人を集める必要がある」というロジック。
これは、「ある仕事を仕上げるには50時間が必要だ。したがってその10倍の仕事を仕上げたいなら、500時間の労働時間が必要になる」というロジックと同じ。
生産性の観点からは、「50人に一人ではなく、50人に二人、採用できる学生が含まれるようにする方法」を考えるのが正しい検討の方向。
それを50人に3人、4人と増やしていく。
これが究極的には「10人の応募で10人採用」につながる目指すべき方向。
あの手この手で無理やりに応募者を集めれば、ある時点以降はその質も入社意欲も急速に低下し始める。
さらに、応募者が増えると採用プロセスに時間がかかるようになるため、内定を出すまでの時間が長くなる。
このため有望な学生が他社から先に内定を得てしまう可能性も高まり、最終的な採用の生産性はさらに下がってしまう。
そしてもう一つは、経営者の見栄という大問題。
「ライバル企業の説明会には1000人の学生が集まったらしい。うちの説明会にはなぜ300人しか集まっていないのか?」と文句を言う役員や、その役員を説得できない(もしくは、するのが面倒だからやらない怠惰な)人事部門が存在するために、採用の生産性が下がってしまう。
ここは大事なとこなので、ちょっと長くなりましたが。。
どうしても「量を追う」という考え方が抜けきらない部分があると思います。
これをいかにして「質」にシフトさせていくか。
ここの認識の違いは、大きな溝につながっていくと思います。
○セルフスクリーニングの重要性
応募者がセルフスクリーニングできるよう情報提供をする。
学生側が「この企業は自分に合っているか?」と判断するのがセルフスクリーニング。
セルフスクリーニングを機能させるには、採用サイトやパンフレットの作成にあたって、「いかに多くの学生を惹きつけるか」ではなく、「いかに自社が欲しい学生だけを惹きつけるか」という視点を入れる必要がある。
とりあえず応募する、という人を減らす。
そのためにはまず、会社がどんな人材を求めているかを明確にアピールする必要があります。
会社がそこをアピールせずに「求めていた人材と違う」と言っても、何の説得力もありません。
○生産性向上のための4つのアプローチ
生産性が正確に理解されていない組織では、
・成果を増やすために安易な資源の追加投入が行われ、生産性が低下する。
・コスト削減以外の手を打たないため、生産性の向上幅はごくわずか。
といった状況に陥りがち。
①改善(無駄の排除、効率化、スキルアップなど)による投入資源の削減
②革新(新技術、パラダイムシフト、ビジネスプロセスの再構築など)による投入資源の削減
③改善による付加価値の増加
④革新による付加価値の増加
生産性を上げるために、するべきこと。
これを常に意識しておきたいですね!
○ビジネスイノベーションに不可欠な生産性の意識
生産性の向上に無関心な企業が、次々とイノベーションを起こす革新的な企業になれるはずがない。
組織全体が生産性の向上に意識的になることこそが、イノベーションを生みやすい組織風土を作る。
・イノベーションに必要な二つの要素
①イノベーションのための時間的な余裕
生産性を軽視する企業では、オペレーショナルな業務(定型的な作業)に忙殺され、新しいアイデアや試みに投資する時間や資金、そして気持ちの余裕を十分に確保できない。
②生産性という概念を日常的に、強く意識させておくこと
社員に「問題認識力=課題設定力」と「その問題を一気に解決したいという強い動機付け」をもたせることが不可欠。
思考は、制限が設けられるとそれをバネにして「今いるところとは異なる次元」に入っていくことができる。
時間的な余裕がなければ、イノベーションだけでなく、コミュニケーションも悪化する場合があります。
その点でも、時間的な余裕というのは最優先で作り出す必要があるな、と感じます。
また、「問題認識力=課題設定力」と「その問題を一気に解決したいという強い動機付け」。
これは日々意識しておきたいことです。
問題を認識しなかったら、これ以上良くなることはありません。
○量から質の評価へ
・会議の時間短縮は正しい目標ではない。
大事なのは、会議の時間(=量)を短くすることではなく、会議の質をコントロール(向上)すること。
・残業規制も量のコントロールにすぎない。
「同じ仕事をより長い時間かけて終わらせた方が収入が増える」=「生産性を下げた方が収入が増える」という、生産性を向上させる上での逆インセンティブとなる大きな問題が存在している。
問題の本質は『残業を少なくすること』=量のコントロールではなく、『仕事の生産性を上げること』=質のコントロール(向上)だから。
この2つの考え方は、社内でみんなが同じ認識でいないといけませんね。
すごく大事なことです。
○成長とは「生産性が上がる」こと
①今まで何時間かかってもできなかったことが、できるようになった。
②今まで何時間もかかっていたことが、1時間でできるようになった。
③今まで1時間かかって達成していた成果よりはるかに高い成果を、同じ1時間で達成できるようになった。
④②や③で手に入った時間が、別の「今までは何時間かけてもできなかったこと」のために使われ、①に戻る。
成長のスパイラル!!
・成果主義も量から質の評価へ
「去年より部門の生産性を上げること」を管理職の評価基準にする。
例えば、
*自分や部下の残業時間が昨年より○%減少した
*休日出勤をするスタッフがほとんどいなくなった
*できない社員のスキルアップを図り、できる社員への仕事の集中度を緩和した
*部下の有給休暇取得を奨励し、取得率が上がった
評価基準が変われば、現場の働き方は変わる。
現行制度の大きな問題は、評価基準に生産性の概念が入っていないこと。
すなわち、労働の質ではなく労働の量を評価する仕組みになってしまっていること。
そうではなく、成果も達成目標も生産性の伸びによって設定すればいい。
そうすれば目標に上限もなくなるし、毎年ごくわずかの生産性の向上でも、長年続ければ大きな進歩となる。
こうして生産性を評価基準に取り入れることで、社員もまた「出した成果の絶対量ではなく、成果の出し方=労働の質」に意識を向けるようになる。
評価基準に生産性の概念を入れること!
毎年ごくわずかな向上でも、長年続ければ大きな進歩となる。すごく大切なことです。
○管理職の使命はチームの生産性向上
「忙しくて部下の育成に手が回らない」のではなく、「忙しいから早く部下を育成しなければ!」へと意識を変える。
仕事の成果は、自分や部下がより長い時間働くことで上げるものではなく、チームの生産性を高めることで実現するもの。
・「みんなで高め合う」体験を。
「上司でもないのに、ほかのメンバーの仕事のやり方に口を出すのは憚られる」という人の気持ちは、「感謝される可能性もあるが、嫌な気持ちにさせてしまうかもしれない。そうなれば関係もぎくしゃくする。そもそも自分は管理職でもなく、アドバイスをするような立場でもない」というようなもの。
この言葉にはまさに、生産性の概念とリーダシップの欠如が現れている。
・ノウハウの言語化を促進する
人は長い間同じ業務を続けていると、思考を止めて手だけ動かし、機械的に作業を続けるようになる。
「とりあえず目の前の仕事をこなす」モードに入ってしまい、集中力は高いけれど、頭は全くうごいていないという状態に陥る。
・3割と3%を意識する
3%の生産性向上はインプルーブメントによって達成すべき目標で、3割の方はイノベーションによって達成すべき目標。
3%と3割の二つの目標を与えることで、単なる日々のオペレーション改善活動だけでなく、業務のあり方を根本的に変える大きな革新を目指すこと。
目の前の仕事をミスなくこなすだけでなく、将来を見据えて今何をすべきなのか、しっかりと考えさせ、決断までさせる。
生産性を上げるために注意しておかなければならない大事なことです。
・負担の転嫁には限界がある
100人のうち10人だけに「配慮すべき理由」がある時代なら、残りの90人に少しずつ負担を転嫁することで問題は解決できた。
しかし今後は、100人のうち60人〜70人もが「配慮すべき理由」をもつ時代になるという前提での制度設計が必要。その負担を残りの30%の人に移転して解決するのは、もはや不可能。
これから企業に求められるのは、すべての人が、希望するワークスタイルを実現できるよう、支援すること。
時短勤務や在宅勤務も子育てや介護中の社員だけでなく、あらゆる社員に認められる制度とするのが目指すべき方向。
そして社員全員にそういった働き方を可能にするためには、企業は組織全体として今よりはるかに高い労働生産性を実現する必要がある。
つまり必要なのは、負担の移転ではなく(生産性の向上による)総負担の軽減。
『必要なのは、負担の移転ではなく(生産性の向上による)総負担の軽減。』
これは、負担を移転することの方が簡単だから、今まで問題を先送りにしてきた感があります。
総負担の軽減こそが、本当に目指すべきところ。
・「イシューからはじめよ」
「何が問題なのか」という起点の正しい理解が、何より重要だということ。
解くべき課題=イシューを取り違えると、どれほど詳細に問題を分解し、膨大な情報収集や多岐にわたる分析を行っても、正しい解にはたどり着けない。
目指すべきは生産性向上による総付加価値の拡大。
生産性を上げて成果の絶対量を増やし、その配分を通じて同一労働同一賃金を実現するのが、正しい道筋。
「インプットを増やして問題を解決しよう」➡︎「人手不足だ。では新たな働き手を見つけよう」というのでは、コインの裏返しにすぎない。
働き手を増やすだけでは、生産性の低い仕事や働き方はいつまでも温存されてしまう。
そうではなく、人手が足りないなら、生産性をいかに高めるかという方向で考えるべき。