涙バンク
大きく心が揺さぶられる時に流す涙ほど素晴らしいものは無い。
勝てる筈がないと評された強敵を、主人公が艱難辛苦の果てに打ち破った瞬間を見るカタルシスといったら。
しかし、同じ展開がもしまた起きても私や諸兄の涙腺は緩まないだろう。感動できる量は有限なのだ。
だから私はこの涙バンクが大好きだ。
涙が流れそうになった時、それが取るに足らない感傷的な事であれば、そこで流す涙は、きっとミネラルウォーターよりもチープだろう。
だから大切な場面のために取っておく。
加えて、涙バンクは貯めた涙を年利0.0001%で増やしてくれるのだ。複利も考えれば、私の心が今後どれだけ揺さぶられるかを考えるだけで胸が弾む。
最近は、積み立ての投資信託も始めた。20年間年利5%でもしうまく運用してくれれば、私が70歳になる頃に流せる涙は1トンになる見込みだ。それまで涙は一切引き出せないのが少し残念だが。
ああ、私の人生は何と素晴らしいものになるだろうか。