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mr_stagram_
全力で推したいリストラ
「俺がリストラ……ですか?」
「あぁ。我が社も前回あんな事があったから規模を縮小したくてね。非常に残念だが……。」
勤続10年、人一倍有能とは言えないにせよそれなりに頑張ってきたじゃないか!
皆とは仲良くやってきたつもりだったが、それは結局の所俺の思い込みだったということか……。惨めだ。確かに最近妙に皆そっけないとは思ったが。
茫然自失のままに帰路につく途中、携帯がけたたましく音を立て始めた。この着信音は……。
「神獣が出現したぞ。出られるな?」
神は心の暇すら与えるつもりはないようだ。
トイレに駆け込み、シンボリックで分かりやすく、派手なコスチュームに身を包み、矢の如く空に跳躍する。さて、ストレスの発散相手になってもらおうじゃないか。
彼は知らない。
会社の人達が避難先で固唾を飲んで彼の事を応援していることを。
前回の襲撃で会社を守った彼の正体を知ってしまったことも、二足のわらじで疲弊していく彼を見かねていたことも。