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Ghost of Tsushima レビュー 誉の光と影。

8/10(秀作)
侍や武士道が与えた民への平和とその愚かさや影を描くことに成功した本作。欠点や突っ込みどころはありましたが、和を超越した見事なアートディレクションには拍手を送りたいです。本作の成功は、一日本人として嬉しい限りです。

1.ストーリーと演出 〜黒澤明リスペクト〜

黒澤モードを実装した本作ですが、あちこちに黒澤明といった日本の時代劇をリスペクトした点を感じました。(特にビジュアルと音響)

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ストーリーですが、主人公境井と対馬の地頭志村の父子のような愛情と軋轢の物語で、境井を支える友人達目線で描かれることも多く、侍を主観的・客観的に捉える工夫が凝らされていました。

侍や武士道がもたらすカッコよさ⇄残虐性
侍や武士道の名誉⇄愚かな死
といった対比構造が明確にあって、様々な部分で感じ取れました。

黒澤明の名作七人の侍が大好きな自分にとって、少しばかりか物足りなさを感じました。それは何か__ 実に、”百姓”が欠けていたことだと思います。
古来の日本で最も多い職種は百姓です。百姓から見た侍とはなんだったのか。そして、侍以外の人間達が日本をどう支えていたのか。侍から見たらその人達はどうだったのか。日本の歴史を語る上で外せないし、この要素があれば、より奥深さをもたらしてくれたのではないかと思っています。

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        (七人の侍より最強の13歳児こと菊千代様!!!!)

演出ですが、作り手は本当に日本が好きなんだろうと何度も感じました。
それは、風や花、森林や海、寺社、田畑、温泉といった神秘的な風景描写。
或いは侍の斬撃といった戦闘描写にもリスペクトを感じました。
少しやりすぎ感は建築物や景色にありましたが、その点がツシマを唯一無二にしていて、興味深かったですし、良かったと感じています。

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本当に綺麗です。対馬に行ってみたいと思わせてくれます。

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          (神社の発見楽しかったです)

2.戦闘:死にゲー的体験→無双ゲーへ。血迷ったステルスアクション

序盤の手に汗握る緊張感と死にゲー的な高難易度さには興奮しました。
侍の戦いってとても緊張感があると思ってました。(七人の侍をみてそう思っていました。)

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   (七人の侍の久蔵のカッコよさ。。。。これこそが侍の戦い方っ!!)

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ちなみに、ボス戦の中では、古賀泰平戦が一番楽しかったです。

中盤から冥人(くろうど)スタイルになっていくにつれ、強くなりすぎてしまったのか、戦闘が短調になり、無双ゲームのような作業感を感じるようになってしまいました。結果、緊張感をあまり感じなくなっていき、虚しさを覚えてしまいました。

ステルスアクション部分は明らかな短所です。客観的に見てロープや屋根の上にいれば、バレないだなんておかしいです。また、敵AIは非常に頭が悪いです。ステルス部分は残念でした。

3.探索その他システム 〜斬新性と利便性〜

探索パートですが、狐に導かれたり、風のガイドを使ったりと自然を利用した新鮮なものでした。
確かに、不自然です。また、不具合を感じる場面もありました。それでも、面白くて斬新だったなと感じてます。
個人的には鳥が壁にぶつかってガイドしてくれないという場面が嫌でしたが。。

また、騎乗状態で、ワンボタンで素材の回収ができたり利便性を感じました。ロードは非常に速く、ユーザーに配慮した設計でした。

4.総評

侍の光と影の部分を描き、商業的に成功を収めた本作。
個人的には優れた作品だと感じています。しかし、ストーリー体験や戦闘等あと少し何かあればという歯痒さを感じたのも事実です。
一番秀でていたのは美術部分でした。ツシマを愛馬で駆け巡り、美しい景色を眺め、フォトモードで写真を撮る楽しさには時間を忘れてしまいました。

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おわり



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