DEATH STRANDING レビュー “繋がり”と“思想の渦”
・はじめに
総合評価 10(傑作)
今年プレイしたゲームでベスト。総合芸術の域に達したと感じました。ゲームの新境地を切り拓いたと思います
インタラクティブに富んだコンセプトで、他のプレイヤー、NPCとの“繋がり”を実感し、“繋がり”に溢れたゲームでした。
映画や文学、音楽から着想を得た小島監督が生み出した、まさに“思想の渦”のような作品。
・ストーリー、演出について
ストーリー、演出
小島監督による映画的な演出が散りばめられている。そして、文学や哲学的な思想、現代の風刺も効いた極上の物語
MGS2に代表されるよう小島監督の作品において、言葉、哲学、思想が主題性の一つになっていると思う。
今作では、安部公房の“なわ”の一説が登場します。安部公房は、極めて優れた発想力を持っていて、非常に独特な文体の小説家であると、私は思っています。
「なわ」は、「棒」とならんで、もっとも古い人間の「道具」の一つだった。「棒」は、悪い空間を遠ざけるために、「なわ」は、善い空間を引きよせるために、人類が発明した、最初の友達だった。 安部公房 「なわ」
なわは善い空間と悪い空間の2つを引き寄せることが可能です。安部公房はなわで、棒の使い方をした人間を批判しています。
このゲームでも、繋がりを作っていくことが100%善であるのか、言及されていて、人間社会の困難を暗示しています。
DEATH STRANDINGは深い主題性に富んだ作品であり、非常に考えさせられるゲームです。このゲームから主題性が提示され続け、常に考えさせられました。このゲームをプレイすることによる余韻は計り知れません。
DEATH STRANDINGは思想が流動的で、濁流のように流れ出てくるようでした。同時に、思想という深淵に引きずられるような感じもしました。なので、“思想の渦”だと感じました。
"深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている"(ニーチェ)
メインとなるストーリーは壮大なもので、サムを中心としたBB、フラジャイル等の数々のキャラとの絆が色濃く描かれています。サム達の選択に感動します。
キャラクターデザインは小島監督ならではの独特なSF感に溢れるもので、発想力に驚かされました。
退廃的な世界の描写がすごく上手い。(個人的には、アルフォンソ・キュアロン監督のトゥモローワールド(原題Children of Men)のように、廃墟に動物がいたりしたらもっと良かった。笑)
(アルフォンソ・キュアロン トゥモローワールドのワンシーン
退廃した世界というと、この映画とブレードランナーを思い浮かべました。前者の方がDEATH STRANDINGに近い)
台詞回しも場面に応じて、量が調節されていたように感じました。ゲームでは、少ない台詞で如何に、感情を表現するかがすごく難しいと思います。MGSVからこの演出が非常にレベルアップされていて、今作では更に素晴らしくなっていました。
また、ノーマン・リーダス、マッツ・ミケルセンの演技は非常に素晴らしかった。特に後者の演技は圧巻。小さな所作まで余すところなくゲームに落とし込んだ技術にも圧倒されました。
茶目なマッツも見れるところがまた面白い笑
小島監督の遊び心が活かされていて、マッツとノーマンの起用はハマったと思った。
このキャスティングを達成できたのは、小島監督の手腕とギレルモ・デル・トロ監督、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の尽力、人脈によるものだったんだと思う。
・戦闘、システムについて
戦闘、システム
画期的なソーシャルストランドシステムの実現と、足跡を残す仕様は新体験で、素晴らしい。
建物建設や、インフラ整備は安全な運搬に欠かせない要素で、他のプレイヤーとの協力が必要になる。また、看板や温泉の発見、隠し要素の発見等様々な場面で他のプレイヤーの存在を実感する。たとえ1人ぼっちであっても、このシステムはゲームの繋がりや絆を感じる場面を作っていた。
点と点を結び、どう進んでいくかは自分次第。その過程が足跡となる。他のプレイヤーの足跡も刻まれていき、草から地面が現れ、道となっていくこの様が素晴らしい。
本作は今までよりも殺傷のペナルティが大きい。だけれど、国道建設やインフラ整備の為、通行の為には戦闘を回避することができないことも多い。その中でどう戦っていくか考えたり、敵の拠点を制圧するための戦略作りはMGSから継承したアイデンティティだと感じた。
・やり込みについて
やり込み
時間を忘れるほどの探索、隠し要素の発見は流石小島作品。しかし、インフラ整備の完成度合いによって、サブミッションが作業化する。
いいね岩、社、温泉等の面白スポットは各地に点在しており、遊び心はまさに小島作品ならではのもの。それを先述の通り、ソーシャルストランドシステムで協力し合いながら発見できたりする。攻略本やサイトを見なくても発見できるのは凄く嬉しい。
サムが安全に運び、S Legend以上の評価を貰うためにはインフラ整備が欠かせない。インフラ整備が醍醐味の一つで素材を集めにひたすら奔走する。しかし、完成してしまうと途端にただ安全に移動するだけのゲームと化してしまうため、魅力が落ちてしまう。
・音楽、映像について
音楽、映像
SILENT POETS/Low Roarの挿入曲はどれも素晴らしい。映像美は際立っており、唯一無二な世界観を作り出していた。
好きな曲ランキング
1. Almost Nothing feat.Okay Kaya/SILENT
https://youtu.be/kzHT-Hjwm9o
2.Death Stranding/CHVRCHES
https://youtu.be/tae8F4gkfiw
3.I'll Keep Coming/Low Roar
https://youtu.be/Kky1aNmWbPc
映像は美しく、カメラワークも秀逸です。演出としては曲のかかるタイミング、どれをとっても素晴らしいです。
・あとがき
新規IP、独立後初の作品でGame awardsで監督賞受賞だなんて、優秀なメンバーがついてきてくれたんだなぁ。小島監督の人の力恐るべしです
おわり
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?