MGSV THE PHANTOM PAIN レビュー シリーズ最高傑作は悲しくも切ない。メタルギアサーガは終わりを迎えた。

**総合評価 10(傑作) **

ステルスアクションはシリーズ最高峰の仕上がり。ストーリー進行は今までと異なっているMGSだったが、芸術的な域に達した唯一無二な作品だった。

ストーリー演出
国語という思想と喪失をテーマに思想の深淵に近づいたような作品で非常に興味深い。演出は一風変わり、かなり映画的かつ芸術的なものだった。

人は、国に住むのではない。
『国語』に住むのだ。
『国語』こそが、我々の『祖国』だ。
ルーマニアの思想家:エミール・シオラン

国語が本作のテーマ。
属国になり、言語が強制されれば、元あった自分達の価値観(国語)を喪ってしまう。戦争によって文明や価値観を駆逐した歴史、国語が持つ思想の強さ、国語とは人間そのものを表しているのだと考えさせられる。

世界では移民も増え、人の競争が激化している。国際競争で日本人は決して強くない。社会が希薄化し、国語や言葉の持つ不思議な力を理解する日本人の学習能力は低下しているのではないか。日本人の国語力の低下は日本の国力低下と相関しているかもしれない。この仮説が正しければ、この物語は身近だ。
僕自身、言葉の持つ不思議な力、文学や思想の面白さを理解するのに非常に時間を要した。

平和、文化といったMGSから伝え教えられた哲学は本作で、かなり深い境地に達しており、シリーズ最後に相応しいものだった。

私的には、今回の悪役であるスカルフェイスがシリーズを通して1番興味深い敵だったと思っている。

私は小さな村で生まれた。幼い頃、外国の兵隊たちが私の村を奪った。
大人から引きはがされ、彼等の言葉を植え込まれた。戦争が変わるごとに支配者は変わり、その度に違う言葉をしゃべらされた。
言葉が変わると私も変わった。性格、物の考え、善と悪。
言葉は人を殺す。 スカルフェイス(MGSV)

中央のスカルフェイス様。黒に包まれた謎な男で、声優もスネイプ先生と、まさに謎なオーラに包まれた人間(いや、ヴォルデモート卿？？)

物語のストーリーラインとしては散々プロモーションで謳われた"復讐の鬼"は完全なるミスリード。Vなるスネークと共に、悲哀なスネークの物語を見届けるものだった。このメインストーリーは小島監督とKONAMIの関係性、遂に訪れたMGSシリーズの完結とリンクし、結果として悲哀がかなり強調された物語に仕上がっていた。
正直言って、MGS4までは悪役配置、戦闘等かなりストーリーがわかりやすかった。今作はかなり複雑化したことが、世間からの批判に及んだのかもしれない。また、未完成であったことは非常に残念でならない。

演出はシリーズ最高だと思います。
冒頭の病院脱出はシリーズで最も緊張感溢れた。
終盤に近づけば近づく程、寂しくなっていく体験は他では味わえなかった。また、MGS4で台詞の多用がかなり目立っていたけれど、Vになって、非常に台詞のない演出がかなり目立つ。これが作品全体に深みを持たせていた。
MGS4で満身創痍だったスネークと共に、限界を迎えたかと思ったが、まさに限界を超えたものだった。

戦闘、システム
救済措置はあるものの、かなり難易度は増し非常に歯応えのあるステルスアクション。攻略方法は自分次第な究極なる潜入。

バレると完全なる無警戒状態にはかなり時間が経過しないと戻らない。バディの長所短所を正しく理解し、一瞬一瞬の戦局に応じた判断が求められるシステムだった。またサヘラントロプス戦はかなり難しかったと記憶してます。(挙動がメタルギア史上最強じゃん...)

やり込み
高難易度ミッションの数々、攻略法の数々、兵士集めや豊富なサブミッション等、やり込みは十二分。一方で、マップは広大だが同じような景色が広がっている印象が少しであるが、否めない。

物語的にはトルコ辺りだとか、市街地のあるマップがあむても良かったと思うんですよね。確かに少しずつフィールドは違っているのに気付くのですが、、、、

音楽、映像
クワイエットのテーマを代表とするオリジナル曲から、デヴィッド・ボウイのthe man who sold the worldをはじめとした、沢山の音楽に溢れており、センスは抜群。映像は綺麗で、FOXエンジンの性能の高さが伺えた。

クワイエットのテーマが最も素晴らしい楽曲だったと思います。
こちらのトレーラーの冒頭の曲がクワイエットのテーマ
https://youtu.be/PGFmc-Gs81Y

名優、キーファー・サザーランドの起用とキャプチャーした技術力の高さが演出に深みを持たせていた。

FOXエンジンの開発にかなりの労力を費やしたのだろうし、KONAMIはこのエンジンをもっと活用しないんでしょうねぇ。

激しい服装のクワイエットさん

おわり