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ヒトの脳に死後に発現する遺伝子がある…?

はじめに

脳科学の話ってワクワクしますよね。私は大学での多重専攻の一つで心理科学という精神や脳について学んでいるのですが、脳という未開の地を学習することで人間の新たな可能性が見えてきそうで楽しいものです。今日はそんな脳科学にまつわるお話です。

人間は長い間、死に関して病的なほどの好奇心を抱いてきました。老化を治療するために、10億米ドル規模のバイオテクノロジー産業が存在しています。認知機能の低下や神経変性がなぜ起こるのかを解明しようとする研究も数多く行われています。永遠の若さを手に入れるのはまだ先のことですが、この問題を解決すれば、認知機能の低下を食い止めることができるかもしれません。

人間の場合に限った話ではありませんが、脳の研究は非常に難しいです。何しろ、アクセスできないのです。血液と違って、脳細胞は自分で補充することができませんし、新鮮で生きた脳のサンプルを見つけるのは容易ではありません。

患者さんらは、ときには脳組織のごく一部を摘出する必要があります。また、患者さんの同意を得て、研究者が実験のためにこれらの脳の断片を研究することもあります。科学者たちは、提供された脳組織を新鮮な状態で分析したところ、奇妙なことがわかりました。このサンプルで発現している遺伝子は、他の死後の脳とは大きく異なっていたのです。この謎を解明していくうちに、科学者たちは脳細胞の死に方の違いを発見したのです。

脳の中からゾンビ遺伝子の発見

脳組織を調べると、どの遺伝子が病気に関係しているかがわかります。通常外科医が新鮮な脳組織を摘出した場合、摘出されて処理されるのを何時間も待つことがあります。実は脳から細胞を取り出しても、細胞はまだ生きています。すべての細胞が死ぬには時間がかかります。

ここでまず上記の研究についてのお話をします。

研究者たちは、提供された新鮮な組織の遺伝子発現を分析し、他のデータセットと比較しました。新鮮な組織は、死後の組織に比べて、当然ですが摘出後非常に早く処理されます。そのため、新鮮なサンプルを分析すると、より多くの細胞が生きていることがわかります。新鮮な組織と死後の組織を比較すると、遺伝子発現に大きな違いがあることがわかりました。

細胞が死ぬと、その機能を維持するために必要なバックグラウンドのプロセスが減少します。死後の期間中、遺伝子はこの減少に対応しています。しかし、説明のつかない遺伝子発現の変化もが発見されました。研究者たちは、何が起きているのかをさらに詳しく知るために、組織を24時間放置したときに何が起きるかを調べることにしました。そしてサンプルを室温で0〜24時間放置し、組織が死ぬときの状態を再現しました。

神経細胞に見られる信号伝達活性遺伝子の発現が、時間の経過とともに急激に低下した一方で、グリアと呼ばれる脳の別の細胞にある特徴的な遺伝子は、時間の経過とともに増加した。そして研究者が脳組織をよく見ると、死にかけているグリアの形が変化していることがわかった。グリアは、脳内の免疫細胞として、傷に反応したり、ゴミを食べたりしていて、組織を24時間放置すると、これらの細胞は拡大して活性化した。神経細胞が最初に死滅することがグリア細胞の活性化につながり、グリア細胞の死滅速度は緩やかになったのです。脳細胞は一様には死なないことがわかりました。


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おわりに

死後に動き出す遺伝子の存在意義は未だ議論されてはいるのですが、この遺伝子の存在は非常に興味深いです。

本研究の著者であり、UIC医科大学の神経学・リハビリテーション学の教授であるJeffrey Loeb医学博士は、今回の発見の重要性を次のように述べています。

『多くの研究では、心臓が停止すると脳のすべてが停止すると考えられていますが、そうではありません。今回の発見は、ヒトの脳組織を使った研究を解釈する上で必要なものになるでしょう。これまではこれらの変化を定量化できていませんでした。』Jeffrey Loeb


研究者は、どの種類の細胞が早く死ぬのか、その遺伝子発現がどのように変化するのかを考慮する必要が出てきましが、これは、法医学者が、脳がどのくらい前に死んだのかを判断するのに役立つかもしれません。また、死後の脳組織を研究している科学者がにとっても細胞死の動態を理解することは、脳損傷を治療するため方法を模索する上で役立つかもしれません。

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