日常を治すくすり
針の様なつららが並んでいて
屋根の上から、どどどと大きな音を立てて雪が落ちて来た
これを不幸ととろうか?
それとも幸福ととろうか?と私はひとりでしばらく悩む
『でも、面白かったし見れてよかったよ』
そんな事を呟いてザクザクと深い雪の上を歩き来た道を帰る
飲み切ったコーヒーを入れていた水筒を抱えて
どんな出来事も、きっと捉え方次第だと言うのに長年の癖は抜けず
ついつい物事をいつも悪い方へと考えてしまう
大人の世界で生きるには、私の様な目線の人間には少々酷で
だからこそこうして、わざわざ雪の日にほとんど足跡のない場所に行く
メガネの付け替えはそんなに早くできないから
思えばそんな場所をずっと探していたのを思い出したのは
山中の川の真ん中の大きな岩に座っていた時に車の音が聞こえた時のこと
何もないのがいい
とそう思ってからは
私は日常が義務で染められて行くに連れてフラフラと暗い森に入りたくなった
時に、民家の薪を見て少し救われて
コンクリートに、人工物だらけの街でなんとか生き過ごして来た
日常を治す薬
熊のフンがあるところ
熊にパクッと食べられちゃうかもしれないところ
動物の足跡探しが楽しいところ
本当の自分に帰れるところ
最近の私の日常のくすり
Hollow Coves
疲れた時は良い音を聞いてしばし目を閉じる
akaiki×shiroimi
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