チームを作ること#3ー事件処理の士業チームを作り、活用する具体的方法 赤井塾14
振り返り 「士業の理想の姿」を実現するために必要な4つの条件
①顧客と他士業から「選ばれる士業」になること
②仕事を効率化すること
③セルフマネジメントを行うこと
④チームを作ること
今回は、4つ目の条件である「チームを作ること」のうち、「事件処理の士業チームを作り、活用する具体的方法」について解説をします。
士業チームで事件処理を始めた理由
私は、事務所内の複数の弁護士とチームを組むのとほぼ同時期に、事件処理を共同でやってくれる他士業の先生方に声をかけ、事件を受任する時点からチームとして一緒に動いてもらうというやり方を始めました。
これは、そのころから手がけようとしていた事件を最も依頼者の利益になるように処理するためには、他士業の先生方の受任時点からの協力が必要不可欠だったからです。
そこで、私は、事件を受任する時点から他士業の先生にチームに入ってもらい、そのチームで事件を処理するようにしました。
チームで事件処理をするメリット
よりベターな事件処理提案と、より正確な見込みの提示
事件受任時点から、複数の士業がチームを組んで対応することで、まずは依頼者に対して、よりベターな結果となる事件処理の提案ができるとともに、その見込みをより正確に伝えることができます。
例えば、遺産分割の事案では、法律的にはベターでも、税務的にはそうではなく、逆に税務的にはベターでも法律的にはそうではない事件処理が多く見られます。
しかし、当初から弁護士と税理士がチームで対応すれば、法律的にも税務的にもベターな解決方法を導き出すことができます。
また、その相続が事業承継がらみで許認可の継続性等が問題になる場合には、当初から行政書士に関与してもらうことで、そのリスクにあらかじめ対応することができます。
また、事業承継に伴い従業員の異動が生じる場合などの対応については、社会保険労務士に関与してもらうことで対応することができます。
そして、遺産に不動産が含まれている場合には、スキームとして考えた分割方法での登記ができるのか否か、その登記のために分割協議書にはどのような記載が必要なのかを司法書士に関与してもらうことで対応し、分割方法として分筆等が必要な場合には土地家屋調査士に、対象不動産の税務的な評価が問題になる場合には不動産鑑定士にそれぞれ対応してもらうことで、不動産のよりベターな分割方法を提案することが可能になります。
さらに、知的財産権の承継がかかわる場合には、その取扱いについては弁理士に対応をお願いすることで、適切な処理が可能になります。
このように、事件受任時点から、複数の士業がチームを組んで対応することにより、依頼者に対して、関係するより広い事項に目を配った、よりベターな結果を導くための事件処理スキームを提案することが可能となり、同時に考え得るリスクを踏まえたより正確な見込みを伝えることが可能となります。
そして、当然、実際の事件処理においても、士業のチームによる対応によって、より迅速でより良い結果を導くための処理が可能となります。
全体の費用見積を提示できる
当初から関係士業がチームとして対応することにより、各自の費用見積から全体の費用見積を計算して、この全体の費用見積を依頼者に提示することが可能になります。
この点、従来は、士業ごとに請求を立て、その時点もバラバラなため、当該事案処理のためにトータルでかかるコストというものが分からないままに依頼者は依頼せざるを得なくなっていました。
士業のスキルアップにつながる
チームで仕事をすることにより、個々のスキルアップが図られます。
少なくとも、他の士業の仕事や動きが分かるだけでも、個々のスキルはアップします。
メンバーの人選・チーム作り
メンバーとしては、人間として信頼できて、自分と仕事に対する考え方やスタンスが近く、一緒に仕事をしてみたいと思える人を選んでいくことになると思います。
そして、事件ごとにチームを組んでも良いのですが、いつでも一緒に動いてもらえる恒常的なチームを作れればベストです。
私は恒常的に仕事を頼めて、チームとしての仕事もやってくれる方を集めて、士業のチームを作りました。
私は、チームを結成すると、まずは、毎月集まってもらって、メンバー一人一人から、全員に対して、各自のできることを詳しく説明してもらいました。
それからは、毎月、勉強会をすることにして、定期的に交流を持つようにしています。
既に、このチームで事件処理を何件もやっていますが、弁護士単独では決して実現できない高いクォリティーと素晴らしい事件処理速度を実現できています。
一度このやり方をしてしまうと、事案によっては、もうチームでの処理以外は考えられなくなります。
チームのメンバーとなるメリット
これまでは相談を受けても「畑違いだから」などという理由で、門前払いをして聞くことすらしなかった相談を聞くことができるようになります。
チームの他のメンバーがそれぞれできることを分かっているので、チームに、あるいはチームの誰かにその相談を持ち込めば何とかなるとの考えで、これまでより受け付ける相談の間口を広げることができるようになるからです。
これは、他の同業者との差別化にもなり、自身のビジネスチャンスを広げることにもなります。
まとめ
今回は、「士業の理想の姿」を実現するために必要な4つの条件の4つ目、「チームを作ること」のうち、「事件処理の士業チームを作り、活用する具体的方法」についてお話しました。
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