
チームを作ること#2ー事務所チーム(組織化)を作る具体的方法 赤井塾13
振り返り 「士業の理想の姿」を実現するために必要な4つの条件
①顧客と他士業から「選ばれる士業」になること
②仕事を効率化すること
③セルフマネジメントを行うこと
④チームを作ること
前回から、4つ目の条件である「チームを作ること」に入りました。
今回は、その中の「事務所チーム(組織化)を作る具体的方法」について解説をします。
チーム化・組織化のメルクマール
前回お話したように、私は、独立後は最低限のスタッフで、その後事務所内の複数の弁護士とチームを組み、現在では2名の弁護士をパートナーに法人化をしています。
私が何をメルクマールに、このようにしてきたかというと、それは次の3つです。
・自分のやりたい仕事は何か
・提供するサービスは何か
・欲しい売上はいくらか
私は、この3つの目的に合うようにチーム化、組織化をしてきました。
これだけでは抽象的で分かりづらいと思いますので、私の場合に当てはめて説明することで、具体的方法を理解いただければと思います。
第一段階
私は、独立後は、最低限のスタッフでやっていました。
具体的には、担当事務員1名体制でやっていました。
しかも、その事務員には、コピー取りや書類の送付など本当に最低限のことしか任せず、ほとんどを自分1人でやっていました。
完全に自営業のレベルです。
私は、効率的にスキルアップを図りながら経験を積むために、独力で処理できるレベルの事件について、迅速かつ高質なサービス提供を完璧なまでに突き詰めた形でやりたいと考えていました。
その結果、こういうスタイルを取りました。
また、売上については、消費税が本則課税される手前の5,000万円を超えない程度で十分だと考えていましたので、売上という面からもこの体制で足りました。
売上を抑える代わりに、経費をできる限り削って、利益率を高めていました。
以上のように、独立して約8年間は、独力でできる範囲で、全てにおいて効率化を第一に考えた末にこのような体制を取りました。
また、このころは、事務所で作業する時間を必要最低限にしてプライベートとのライフワークバランスを図りながら、1年間ぐらい仕事が全くなくても大丈夫なぐらいの事業用の安全資金を早く貯めることを目的としていました。
第二段階
独立から約8年が経過し、私のスキルや経験値は上がりました。
事業用の安全資金のストックも目標額を達成しました。
ここで私は、これまでは独力で処理できるレベルの事件しかやってこなかったので、今後は単独では難しい規模の大きな事件や複雑な事件などを手がけたいと考えました。
そのためには、私の仕事に対する考え方やスタンス、さらには事件処理のやり方を理解して、一緒にやってくれるパートナーが必要でした。
このときのためというわけではありませんでしたが、私は、前の事務所に3名の弁護士を引き入れていました。
ただ、それまでは各自が別々に各自の計算で仕事をしている単なる自営業者の集まりでした。
私は、この3名に対して、自分の仕事に対する考え方やスタンス、さらには事件処理のやり方を示し、チームを組むことにしました。
これまでの単なる経費共同から、収入も共同にして、しかも利益分配は均等な頭割りにしたので、私の収入は激減しましたが、ここではお金よりもやりたい仕事の方を優先しました。
その結果、大型の破産管財事件や複雑な相続事件など、これまで手がけてみたかったけれどもできなかった事件を手がけることができました。
大型の破産管財事件を手がけるようになったので、複数いた事務員の中から当該事件専属の事務員を育成してチームに入れました。
このようにして、私は、やりたかった仕事を手がけることができるようになりました。
これにより、それまでの仕事では得られなかったスキルや経験を積むことができました。
それでも、チーム化したことで、事務所で作業する時間は以前と変わらず、引き続きプライベートとのライフワークバランスを図ることもできました。
第三段階
私は、さらにチーム化を推し進めるため、共同化していた弁護士のうちの2名と前の事務所を離れて、新たに法人を設立しました。
それが現在の形です。
法人として受任した仕事を複数弁護士がチームとして処理していくというスタンスを取り、さらに今後弁護士の移動が生じても依頼者に対するサービス提供に影響がないように法人化をしました。
複数弁護士によるチームとしての事件処理というのは、次のようなものです。
事件を受任するにあたり、全ての情報を共有して、複数弁護士が協議して処理方針を決定するとともに、その後の分担を決めて協働しながら処理をしていくというものです。
私は、主にマネジメントに仕事の主軸を移行していきたかったこともあって、このような形を取りました。
このようなチーム化、組織化は必ずしも必要だというわけではありませんが、受任した仕事の継続性や経営の安定化といったことを考えれば、検討する必要はあると思います。
士業のこれから
私は、これから先、士業の世界で自分の望み通りの仕事内容・仕事の仕方を実現しようとすれば、どの段階までという程度の差はあるにしても、チーム化、組織化というのは不可欠であると考えています。
やはり、独力でというのには、自ずから限界があるため、本当に独力でできる範囲で満足できるのかということを一度自分自身に問いかけていただきたいと思います。
まとめ
今回は、「士業の理想の姿」を実現するために必要な4つの条件の4つ目、「チームを作ること」のうち、「事務所チーム(組織化)を作る具体的方法」についてお話しました。