アルトとケルシュと
はじめに。
黒いビール、白いビール
これらの話を書き終えまして。
いつか書く ビール大国 ベルギーのお話の前に、
いくつか書かねばならない
ドイツ生まれのエールのスタイルをば。
ドイツはラガーが誕生した国でもございますが、
バイエルンでヴァイツェンが華開いたように
エールも地域ごとに独特な進化をしております。
それではやっていきましょう。
デュッセルドルフのアルト
日本人が多く住んでいると噂の
デュッセルドルフ。
そんなデュッセルドルフですが、
どうやらドイツ全土でもっともよく飲まれているらしいビール
アルトの発祥の地です。
アルトとはドイツ語で”古い”という意味です。
アルトの原型となるビールは13世紀に出来ていたらしいのですが、
それよりも前にビールは存在していてます。
(厳密に言えばグルート、またはエール)
それでは、何が古いのか?というと
15世紀にバイエルンで生まれた新しいスタイルのラガービール。
これに対して古いということなのです。
ラガービールが生まれるまでのビールを
ざっくりと一括りにした言葉がアルトなのです。
ラガービールが生まれるまでのビールって?
そう、エールですよね。
言葉が違ったり、地域によって
捉え方が変わっていって大変ですが
アルトビールとは
ドイツに入ってきた英国のエールのことを指します。
その昔、エールが
ローマ人のキリスト教の普及で、
各地に修造院が建てられ、修道僧がエールを造り始めたとか
13世紀にハンザ同盟により
貿易が盛んに行われ、
色んな都市との交流があったりで
様々な地域に飛び交っていったエール。
そのエールはそれぞれの土地で
独自の進化を遂げていき、
その一つにデュッセルドルフがあったのでしょう。
現在でいうアルトはデュッセルドルフで進化を遂げていき、
ラガーが誕生したときにその名前が付けられました。
(ちなみにラガーを新しいビールということで、
“ノイ[新しい]ビール”と呼んでいたみたい。)
ドイツ全土でもっとも飲まれているビールと言いましたが、
そりゃあそうでしょう。
ドイツの各地で発祥とされたビール達も、元はと言えばアルト。
つまり、ブリテン島で誕生したエールなのですから。
もっちろん。
現在はスタイルという概念が生まれ、
それぞれ醸造方が確立されているので
全部一緒ということはありませんが。
アルトが暗いダークな色をしているのも、
古いビールの名残りだと思います。
アルトってエールのことなの?
アルトの原型は13世紀にはあったんじゃないの?
僕もそう思ったのですが、
きっと
エールがデュッセルドルフに渡り、
そこで独自に進化し、現在のアルトと言われるものが
13世紀に出来ていた。
こういうことなのでしょう。
色々調べましたが、
多分そうです。多分。
アルトといえば、ツム ユーリゲ
絶妙な甘さと飲み応えです。見つけたら、是非。
ケルンのケルシュ
ラガーの記事を書いたときに、
カリフォルニアン・コモンという
ややこしいスタイルの紹介をしたのを
お覚えでしょうか。
ラガー酵母をエール酵母のように発酵させたスタイルだと。
デュッセルドルフやや下に、ケルンという都市にて誕生した
ケルシュはまさにその逆のビール。
エール酵母をラガー酵母のように発酵。
そして、ラガービールのように低温で貯蔵させます。
そうすることによって、
エールビールでありながら、ラガーのようなキレのある
ビールとなります。
写真のように
ラガーみたいな見た目ですね。
とはいえこのビールも
出来た当時は案の定暗い色してたみたいで、
この色になったのは、ラガーが出来てかららしいですよ。
そして、このビールは提供方法が独特です。
写真に写っているグラスをシュタンゲ
お盆みたいなものををクランツと呼びます。
シュタンゲはケルシュ専用のグラスです。
縦長で口は小さく、容量も200mlほどしか入りません。
このシュタンゲをたくさん入れたクランツを
店員さんが持ちながら店内を歩き、
テーブルに空いたグラスを見つけると交換するのです。
それはもう、わんこそばのように。
もう飲めないと思ったら、グラスにコースターで蓋をして、
もういらないよ!と合図するのです。
ケルシュの名称ですが、
よくわからないんですね。
ケルン産のビールだから。でいい気もします。
現に、ケルシュというスタイルが認められたのは
1985年?86年?と、とっても最近です。
ただ、ケルシュは原産地管理呼称が認められています。
つまりは、ケルンで造られたケルシュだけがケルシュで、
ケルン以外の地域で醸造されたケルシュは
ケルシュ風ビールとなります。
細かく言うと、
ケルンで認められた24の醸造所のみがケルシュの醸造が可能で、
それ以外の醸造所が造ったケルシュが
ケルシュ風のビールですね。
これはケルシュ協定とも呼ばれ、
先に書いた、ケルシュを入れるグラスや提供方法、醸造についてなど
16の掟が厳しく定義されているのです。
とはいえ、現在で日本の醸造所が造っているケルシュを
いちいちケルシュ風と言っているところはないと思います。多分。
いつかケルシュを飲む機会があれば、
うんちく程度に覚えていただければ幸いです。
地図の写真を見てお分かりの通り、
デュッセルドルフとケルン。
はちゃめちゃ近いですね。
なんなら、2つのビールは同じ州の生まれです。
デュッセルドルフではアルトになったが、
何故、ケルンのビールはアルトとはならなかったのか。
簡単に言うと、
ケルンの人々のプライドが高かったのです。
15世紀ごろまで、ケルンの市民と領主が
自治権などで巡って争っていました。
しかも、ケルンを統治してる人が
神聖ローマ帝国に選ばれし人で、
とても権力を持っていた人でした。
そんな人から、15世紀に自治権を獲得した市民達は
自分たちを誇り高く思っていて、
私たちのビールは、他の都市のビールや、
デュッセルドルフで出来た新しいビールとは
格が違うのだ!と。そんな感じだったんですねぇ。
そのプライドの高さ、自分たちの造るビールの誇りが
ケルシュ協定まで作ってしまう。
そういうビールなんですねぇ。
余談ですが、日本でドイツ流のビール言えば
富士桜高原さんですね。
こちらではケルシュは造られたことがありません。
僕も何度か醸造長のてんつーさんに
ケルシュ造ってください!一緒に造りましょう!
と話したことがあるのですが、
その度、あまりいい顔はされませんでした。
頑なにケルシュを造らないのは、
ケルシュ協定を守っているからなのかな。
今度会ったら、聞いてみます。
ケルシュといえば、フリューのケルシュ
または、ガッフェルが有名ですね。
ライ麦畑でロッゲンビール
めちゃくちゃサクッと書こうと思ったのに
もうこんなに。
最後こそサクッとで終わりにします。
ロッゲンビール。
んまぁ〜聞き慣れないビールかと思います。
ほとんど日本で造っているところもないでしょう。
ロッゲンはドイツ語で”ライ麦”です。
ライ麦を多く使用したビールがロッゲンビールです。
ビールには多くの場合、大麦と小麦を使います。
15世紀のドイツ バイエルン。
ライ麦はよくビールの醸造に使われていましたが、
凶作の時期に、ライ麦はパンのみに使用することになったそうです。
そこから500年ほど忘れ去られたビールなんです。
全く無い、ということはないと思うので、
見つけたら飲んでみてください。
あまり見かけませんが、ベアレンさんで季節限定で出ているような。
はい。
以上です。
最後に。
書けば書くほど、ドイツはすごいですね〜。
まだまだドイツ発祥のビールありますからねぇ。
そんなドイツと同じくらいかそれ以上ボリューミーな国
ベルギーの多彩なビール事情を次から書いていきたいと思います。
まとめられるか、今から不安です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
それではまた。
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