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たくさんのカワイイをありがとう
サンリオ展 ニッポンのカワイイ文化60年史 を見に行った。
子どもの頃、時たま行くショッピングモールでサンリオのお店に寄るのが大好きだった。毎回ではないけど何か買ってもらうときはたくさんのかわいい商品たちから悩んで選び取るふんわりした幸せを味わっていたものだ。
大人になるにつれてキャラクターものはあまり身に着けなくなり、わざわざサンリオのお店に行くことも減ってしまった。でも20年ぶりくらいにサンリオピューロランドに行ったら全てがかわいくて愛のある世界に語彙を失った。そして、大人になったけどサンリオ好きでいていいよね!ということを確認してしまったのだった。
そして、2021年から全国を巡回しているサンリオ展に行くことが叶った。そこには60年にわたって積み上げられてきたサンリオの想いが溢れていて、子どもの頃のサンリオショップの思い出とか、ピューロランドで感じた幸せの答え合わせのような展示だった。
展示はサンリオの始まりから丁寧に解説されていた。当初はキャラクターではなくいちごのモチーフを文房具などの日用品にデザインして売っていたとか、雑誌『リリカ』を発行して手塚治虫などの名だたる作家たちの作品を掲載していたことなど、知らないことがたくさんあってとても面白かった。
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そしてキャラクターたちが誕生して「カワイイ」の歴史を作っていくことになる。初期のキャラクターであるパティ&ジミーは、最初にパティが作られてそのあとボーイフレンドとしてジミーが誕生したとのことで、それぞれの性格や部屋の様子なども事細かに設定されている。キャラクターへの愛や、グッズ等を手に取る人を楽しませたい気持ちをすごく感じるし、デザイナー自身も悩みながらも楽しんで考えていたのではないかと思った。
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マイメロディはピンクのかわいいうさぎとしか思っていなかったけど、そもそもは赤ずきんちゃんをうさぎにしたキャラクターらしく、素朴さのある原画はとても心をくすぐるものがあった。
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会場内にはかつてのデザイン制作室を再現したコーナーもあり、一部屋一部屋がポップなおうちのようになっている様子は、この環境ならかわいいキャラクターが出てくるよなと思ってしまうような素敵さだった。
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キャラクターごとに壁の一定の幅をとって原画やグッズが並べられているのであるが、本当にどのキャラクターも創意工夫が凝らされているのが伝わってきて、よく知らなかったキャラクターにも愛着が沸くほどだった。キキララがファンによるネーミングだったのも知らなかったし、タキシードサムはシンプルなデザインにして電子機器のグッズにも多数採用したことや、ポチャッコが動きがあることを特徴としていたことなど、キャラクターによって役割分担的なものがあったというのも見逃せず、戦略の一端を伺えたのが印象的だった。
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シナモロールやポムポムプリンに至っては子どもの頃好きだったし、近年ピューロランドで見てそのかわいさを再発見してしまった存在なので、成り立ちやラフスケッチを見られたのは感動的だった。
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以上のような有名なもの以外にも、かなりたくさんのキャラクターが生み出されてきているらしく、系統ごとにまとめて紹介されていた。知っているものも知らないものもあり、バリエーションに驚かされた。この中から好みを探すのも楽しかった。
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そして、冒頭に書いた子どもの頃の記憶が喚起されたものとしては、プレミアムマスコットというのがある。サンリオのお店で買い物をするときれいに包んでくれて小さなちょっとしたマスコットをつけてくれていたのをよく覚えている。ものとしては立派でなくても、その小さなおまけがすごく嬉しくて大切にとっておいたくらいだから、子どもの心をつかむのに見事成功していたと言えるだろう。
いちご新聞に綴られたいちごの王様の言葉もたくさん紹介されていた。子どもたちの視点に立って寄り添い、悩みにも答える真摯な姿勢が素敵だった。戦争はやめてみんな仲良くしようと訴え続け、そのためにカワイイを追求してきた姿勢は本当にすごい。カワイイしか言葉が出なくなるサンリオの世界を前にして誰が争いを好むだろうと本気で思わされる。この展示でサンリオをより深く知れて、強い想いをしっかり受け取った。
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