人生ってなんだろう(12)

ルドルフ 知行合一を初めて知る

以前娘対して、「人間、思っているだけではダメなんだよ、行動で表せないといけない。いつでも考えたことを行動に出せるように、心の中で準備してなきゃいけないのだよ」と語ったことがありました。我ながら、正論なのですが、我が身を振り返って、その準備が整うようになったのはいつ頃だったかしらと、自問いたしました。

そこで付け加えて、「お父さんも17歳くらいの時は、頭で判っていても何もできない人だったけどね。まだまだ、だったね、あのころは」と自らの経験を話し始めた次第です。

あれは確か高校2年生の春のことでした。いつものように、駅からの坂道を上っておりました。その坂道をいくつかの信号を超えて進み、突き当りを横に折れれば校舎が見えます。坂道をちょうど半ば進んだ時、前をいく人の姿が目に入りました。確か1学年上の男子学生です。直接話したことはありませんでしたが、なんだか賑やかな人だなあとの印象を持っておりました。

彼が少し広めの道路を渡ろうとした時、まだ小学生低学年か幼稚園あたりでしょうか1人の子供が、彼の横を走り抜け、彼を追い越しました。その時にバランスを崩したのでしょう、彼の1mほど先で転び、倒れてしまいました。「あーあ、言わないことじゃない。横断歩道を走って渡るから、転んでしまったじゃないか、危ないことだなあ」
そう思いながら、二人を見つめつつ、歩みを進めました。
前を行く、その1学年上の彼は、何のためらいもなく即座に、少年に近寄りその子を抱きあげ、歩道まで少年を運んで行き、怪我の有無を確認した後、「気を付けるんだよ。横断歩道を走って渡っちゃダメだよ」と声を掛けて、立ち去りました。

この姿を見て、何とも自分の情けなさを悔やんだものです。
「たぶんお父さんが横にいたら、注意することが先になって、あの子を助け起こすことは、二の次になっていたかもしれないね。あの時、自分はまだまだ未熟者だなあと思ったよ」と娘にお話をいたしました。

中国の儒学者王陽明の言葉に「知行合一」があります。
「行動を伴わない知識は未完成である」と解説されています。

この言葉を娘に送った次第です。

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