雲に語りかける
夕暮れ時の雲
見過ごせばなんでもない
気づかなければただの雲
だが、何か不思議というか不気味というか
空に浮かぶ雲の魂のブレには気づかない
気ぜわしい世の中の移りかわりに雲のことなんかどうでもいいこと
一銭の徳にもならない、と思う人も…
ただ、今見ていた雲がちょっと目を離すと様変わりしていることに感動
雲といえば、登山の際の観天望気の世界で天気予測をしていただけだが
南アルプスでガイド中の登山仲間が雪崩で短い生涯を閉じ、北アルプスの鹿
島槍で墜死し還らぬ岳友らを思うたびに、観天望気を越えて自分の生き方を
彷徨う雲と魂との語らいに求め歩きつづけてきた
九州で育ち、東京で長く職に就いた後、見知らぬ群馬に移住したのはなんの
因果だろう
なぜ群馬に、と問われれば谷川岳があるからさ、とキザな言葉でいうだけ
その谷川岳にも、崖壁で散った岳友の短い青春があり谷川岳を恨んだことも
そう、高校生の頃から登山に血潮を燃やしつづけ、いろんなことが身の回り
であり過ぎたが、今は単独で元気で山に向かっている
登山のきっかけは大分・湯布院温泉を見下ろす双耳峰の由布岳
そして今は、信州・川上村の金峰山に狂ったような情熱を傾ける
金峰山頂で、頂上に聳える五丈岩で雲に語りかけることは、心を癒され生き
る力を与えてくれる
そこに、私なりの青春がある