第2話 学芸員古沸妖の妄想宇宙論【実体験×科学×オカルト=ビックバン】いっしょにぶっ飛び
3.物語を進めるにあたって
お客様にまず聞いて頂きたいのは、宗教によくある教えの言葉などと受けとらないでほしいという強い思いです。
赤木館主は無宗教ですし、そんな人の上に立つような人間でもありません。
それに、現世ではもろもろの考え方も受け取り方も、性格も色んな方向性のものがごちゃまぜになった世界です。
だから教えるというのは単純な行為じゃないんです、ここでは館主が伝えたい事を、この古沸妖が構成して表現したものとだけ捉えて頂きたいのです、はい、それも──「ぶっ飛んだ」
でも、それも現世の経験だけを通じて考えた事、つまり霊界の伝えたい事など何も考えず、赤木館主が今を生きている実体験から積み上げたものだけをベースに構成するだけです。
肉体に縛られた現世の人生の中で、どう感じてどう思ったかだけのものなのですから…へっへっへっ…だってそうでしょう霊界はこう言ってると言われてたって、スピリチュアル能力の無い大多数の人間が理解できるものじゃございませんでしょう?
どうですか?
「霊界に言われてもなぁ実感ないし」──館主だってそう思いました。
だから現世での経験を伝えるだけ、一人の人間の妄想と思ってもらって結構でございます。
──でも結局は同じところに行き着くのも事実でございます。
それに「答えは全て自分の中にある」というのが館主の口ぐせでもあります。
えっじゃあ教えるってなにかって?
お客様、えーっとそうですな、まずアカシックレコードの00235608924655592310番を引き出しますね。
ピピピッと…そうそうこれこれ─
それは高校生の頃ですな、物理の授業はお客様も受けた事がありますでしょうか? そうですか、文系だったので受けてない。そうでございますか、それでもよろしいんです。
別に難しい事を言う訳ではないんでね、はい。
中学生の理科にも出てくる。地球の周りに大気があって、その周りに宇宙があって、太陽や星々があって、宇宙は広がっているというのを聞いたことがございましょう?
じゃあ宇宙はどこにひろがっているか?
誰でも一度は考えます。
そんなもの──わかりませんよね。
高校の物理の先生は授業の一番始めにこう言った。
「宇宙は広がっている、だから、宇宙の外れはメビウスの帯のようにねじれて時空も物資もねじれて表が裏に裏が表に入れ替わっているかもしれない、表の人が歩いて進んで、いつの間にか裏になっていても気が付かないって事は広がっているように感じるし、若しくは宇宙は二つあるなんていう学説もある、そして、宇宙にある全てのエネルギーを総括するとマイナスになるらしい…訳がわからん。
教科書の最初のページを開くとのってるだろ、アインシュタインの有名な公式。
E=mc²
エネルギーは質量(m)×光速(c)の二乗に等しい、シンプルかつ大変美しい。
しかーし、光速は一定でかつ二乗にするとプラスになるからエネルギーがマイナスになると言う事は質量がマイナスにならないといけないし、宇宙にはダークエネルギーがあって…俺にも訳がわからん。
でも物理法則がないと飛行機は飛ばないし、車は走らないし、音楽は聞けないし、観覧車は逆まわりするし…それでいいのかーお前たち! それが嫌ならしっかりと勉強せーーーー」
わーなんじゃそれ。
へっへっへ──赤木館主もなんじゃそれって思ったんですな、その疑問が妄想宇宙論の発端になりました。
加えて倫理の時間に先生に言われた言葉が胸にズシーンと響いた。
倫理の時間は選択科目で、週一時間で一年で終わってしまいました。
まあ、キリスト教やらユダヤ教やら、仏教や密教やら宇宙を創造したYHWHという神さまやら、密教の大日如来は宇宙そのものやら、道教やら…そう世界中の人々が信じる宗教やら風習やら、考え方やら…つまり生き方ですな、を勉強した。
物理で宇宙ってなんだって思った矢先に、宗教においても宇宙って言葉が出てくるものだから非常に興味を持って授業を受けていた。
倫理の先生にテスト結果を見て、赤木は100点だが、200点やってもいい解答だ! なーんてね言われて図に乗っただけかもしれませんが、兎に角物理も倫理も大好きだった…はい。
だけどね、倫理の先生が3学期の最後の授業でこう言ったんです。
「教えた事の殆どは忘れたって構わない、ただみんなに知ってもらいたかったのは、地球には多様な人々がいる。だから一方の常識だけでは理解がしきれない。草花や木々だって、トラやライオンだって生き物だ。
つまり、この世は多様性を持った生き物で構成されている。
多様な生き物は広大な地球に住んでいる。地球は広い、宇宙はもっと広い、それに唯一対抗できるのは、君たちの──想像力だけだ。
豊かな想像力を持って生きてほしい、これが僕がみんなに一番教えたかったことだ! 」
…ってね。
その言葉は強烈だった。
つまり、この先生から何かを受け取ろうという強い気持ちがあって心を開いたからこそ、最後の言葉が胸に響いたんですな。
そのおかげて、今まで何十年もの間心の拠り所となった。豊かな想像力こそ必要なスキルだと思い続けて、人ってなんだろう?
生きるって何だろう?
宇宙ってなんだろう?
と考え続けながら激動の人生を乗り越えて来たからこそ今がある。
本人の意識を前向きに感化して継続的な学ぶ能力をひきだす。
──これこそが「教える」っていう本当の意味だと身に染みてわかったんです、はい。
でも、
「想像力のせいでもう人生半分以上すぎたーいいのか俺」
なんて叫んでいる時もありますが…へっへっへっ。
だから赤木館主は思うんです、教えるって事は教わる方が相手に心を解放しないと本当の意味で教える事にはならないと。
かと言って教える方も教える事で人生を学ぶんですからそういう意味では上下は無い、お互いの命を敬い、尊敬の念は常に持たないといけない。
だから、人生を使って、自分の時間を使って学んだ知識を惜しげも無く伝えてくれる「教師」という存在は本来とてつもなく──素晴らしいのですな。更に人として間違った行為をした時は、職業とはいえ導いてくれる。
だから、教えるなんておこがましい事は簡単に言えないのです。
古沸妖の妄想宇宙論、ほんの片言でもお客様の心に残ったら幸いです──はい。
つづく
→第3話
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