Vol.6 コーチングスキル
コーチは何の専門家?
歯科医は歯に関する専門家、税理士は税金に関する専門家だとすると、プロコーチは一体、何の専門家でしょう。
もちろん、一つの決まった答えはないものの、一般的には、「目標達成と自己実現の専門家」だと考えられています。
誰かからコーチングを受けようとする動機は、コーチングを受けることで何らかの目標を達成したいからです。
さらに言うなら、その目標を達成することで、自己実現、つまり「こんな自分になりたい」という願いを実現したいと思っています。
コーチングスキルは汎用性が高いので、コミュニケーションを良くする技法として使うこともできます。
ただ、プロコーチとしてクライアントにコーチングを提供する場合、コーチングスキルを何の目的で使うのでしょうか?
「クライアントの目標達成や自己実現を、効果的にサポートするためのスキル」
私はこのように説明しています。
この目的に沿って、コーチは質問をしたり、傾聴したり、フィードバックしたりといった様々なコーチングスキルを使うのです。
今から、効果的なコーチングを行うために必要な3つの要素をお伝えしていきます。
全ては「クライアントの目標達成や自己実現を効果的にサポートする」ためです。
クライアントの目標達成や自己実現をサポートするために
1.コーチングスキルそのものを磨く
プロコーチにとってコーチングスキルは、プロとして仕事をする上で、必要不可欠な専門スキルです。
当マガジンでは、コーチングに関する基礎知識があるのを前提にお話しているので、ここでは、コーチングスキルを一つひとつ解説することはしません。
(必要ならば、大手書店などでコーチングスキルについての良書をご覧ください)
はじめてクライアントになる人を引き付けるためには、後述するビジネススキルが必要です。
そして、一度コーチングを受けてくれたクライアントに引き続き受けてもらうためには、コーチングスキルを磨き続けることが大切です。
では、なぜ磨き続けることが大切なのでしょうか?
クライアントのさまざまな状況に対応できるようになるために、コーチングのバリエーションを増やすということももちろんですが、それだけではありません。
コーチングを受けようというクライアントは、前向きで向上心が高い人が多いので、コーチが学ぶことをやめると、「もう得られるものはない」と思って離れていくからです。
コーチングスキルは、どこかのスクールで一度学べばそれでOKとはなりません。
オンリーワンプロコーチは、コーチングに誇りを持っています。
だからこそ、長年コーチを続けていても、なお「より良く」を追求します。
謙虚な姿勢を崩さず、自分の職業に関する専門知識をさらに深め、新たな技術があれば、貪欲に取り入れます。
まるで職人のようにコーチングスキルを磨き続け、唯一無二の光を放ち続けます。
それこそが人を惹きつける源であり、オンリーワンプロコーチがプロである証です。
2.オンリーワンプロコーチが持つ「視点」
これまでに私自身も何名かのプロコーチからコーチングを受けてきました。また、コーチ仲間と相互コーチングをしたこともあります。
その中には、話が弾み、思った以上の成果がでるコーチングセッションもあれば、「一体この30分は何だったんだろう」と迷走してしまったセッションもありました。
熟練したプロコーチは、斬新な質問を次々に繰り出しているというイメージがあるかもしれません。
しかし、必ずしもそうではないのです。
中には、30分のセッションで3~4回しか、質問しないというコーチもいます。
成果が出るコーチングと迷走してしまうコーチング。
一体、両者の何が違うのでしょうか?
色々と検証してみた結果、分かったことがありました。
それは、「視点」が違うということです。
「視点」とは、コーチが何を意図しながらコーチングしているか、ということです。
この「何を意図しているか」がハッキリしていないと、セッションが迷走してしまう元となります。
では、オンリーワンプロコーチは、何を意図しながらコーチングしているのでしょうか。
コーチによって、そして都度のセッションによっても異なりますが、一例をお伝えします。
クライアントが本当に望んでいることは何か?
クライアントの本来の力を妨げている信念は何か?
クライアントはどんなセルフイメージを持っているか?
クライアントのエネルギーレベルは上がっているか、それとも下がっているか?
クライアントの大切にしている考え方と取っている行動は同じ方向を向いているか、それともバラバラか?
ただ、単に話を聴いて質問しているだけのコーチングとは一線を画します。
成果を出すコーチは、同時に2つのことを行っています。
一つは、クライアントに集中し、話を聴いて、質問を投げかけています。
もう一つは、別の視点を意図してコーチングを行っています。
クライアントが成果を作り出すために押さえておくポイントを頭の片隅に置いているのです。
3.効果的なコーチングを行うための「モデル」
成果が出るセッションと迷走してしまうセッション、その違いは「視点」だと前節に書きました。
実はもう一つ、違いがあります。
それは、「モデル」です。
コーチングを効果的にするには、さまざまなコーチングスキルを使えるようになることは大切です。
しかし、それ以上に重要なのが、「モデル」になります。
では、この「モデル」と「スキル」の違いは何でしょうか?
そして、そもそも「モデル」とは何でしょうか?
家作りに例えると、「モデル」は設計図です。
一方、「スキル」は、セメントや木材、鉄筋といった家を建てる材料となります。
家を建てるための材料があっても、どのような順番でどこから建て始めるのかという設計図がなくては、家は建てることができません。
コーチングも同じで、効果的なコーチングを行うには「設計図」にあたるもの、つまり「モデル」が必要です。
もちろん、家の建て方も一つではないように、効果的にコーチングを行う「モデル」も色々あります。
コーチングで用いる様々なモデルの中から、2つ紹介します。
一つ目は、コーチングを習い始めた時期にまず目にするモデルである「GROWモデル」です。
イギリスのプロコーチ、ジョン・ウィットモア氏が彼の著書「はじめのコーチング」で紹介しているコーチングモデルです。
このモデルの特徴は、初心者コーチからベテランコーチまで幅広く使えるというところにあります。特に、クライアントの行動を明確化するのには、とても役に立ちます。
もう一つは私自身が使ってみて、効果が高いと思ったものも紹介します。
「ニューロロジカルレベル」というモデルです。
これは、コーチング独自のモデルではなく、NLP(神経言語プログラミング)という心理学の中で紹介されているモデルです。
5W1Hの質問をどの順番でするのが効果的なのか、そして、なぜそうなのかという理由を明確に説明しています。
「ニューロロジカルレベル」を初めて知ったとき、目からうろこが落ちるような衝撃を受けたことをおぼえています。
クライアントの行動を明確にするだけでなく、何のためにそれをするのかという目的と一致させるのにとても効果的なモデルです。
他にも、コーチングを行う上での「モデル」とされるものは、幾つもあります。
効果的なコーチングを行うために、いくつもの成果の出るモデルを使える状態しておいて下さい。
なぜなら、家の建て方に好みがあるように、一人ひとりのクライアントによって、合う「モデル」が異なります。
コーチングを行う上での「モデル」、つまり「設計図」が一つしか使えないのであれば、どのクライアントのコーチングにも、一つのモデルを当てはめざるえません。
あくまでも中心となるのは、クライアントその人です。
クライアントをスキルやモデルに合わせることではありません。
それぞれのクライアントに対応するためにも、複数のコーチングモデルを使える状態にしておき、その都度、クライアントに合ったモデルを選ぶ必要があります。
クライアントに合うコーチングが臨機応変にできるからこそ、長く活動できるコーチであり続けるのです。そのための研鑽を怠ることもありません。
なお、コーチングに使うモデルを体得するには、やはり専門のコーチングスクールなどで学ぶ必要があります。
もちろん、コーチングの書籍などでも、幾つものコーチングモデルを知ることはできます。
しかし、本を読んだだけでは、そのモデルがなぜ効果的なのかを深く理解しづらいこともあるからです。
あと、スクールではトレーニングの一環として、そのモデルを使ったロールプレイを行います。
実際にやってみて、自身の体験で効果を納得してこそ、使えるようになる準備が整います。
ですので、モデルを体得するには、コーチングスクール等でのトレーニングが必要と、私は考えています。
以上、効果的なコーチングを行うために必要な3つの要素をお伝えしました。
次回は、ビジネススキルについてお伝えします。