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プロポーザル案件を獲得したいなら〇〇でやりなさい

行政では様々な業務を外注しています。基本的には入札による価格競争方式で受注者が決定しますが、例外として随意契約があります。価格競争によらず相対で契約する方式です。

この随意契約の相手方を選定する方法に、「企画提案競技」「プロポーザル方式」と呼ばれるものがあります。

プロポーザル方式では、価格以外にも業務実績、実施体制、事業実施方針などが評価の対象になります。そのため、案件の公募に参加するためには、定められた各種資料を作成して提出することが必要です。

皆さんもご存じのとおり、行政の公募案件の締め切りは書類作成から提出までの期限がかなりタイトです。公示から締め切りまで3週間程度のことが多いと思います。

こうした厳しいスケジュールの中で勝ち抜くためには、

「チーム」で取り組むことが必要です。タイトルの〇〇は「チーム」が答えです。

プロポーザルの準備ではやり方を間違えると死者が出ます。「なんとかギリギリ間に合ったみたいだけど、担当者が一人で死にそうになっていた」なんて話もよくあります。

加えて、その担当者が異動・退職すると次の案件ではまたゼロベースから始めることになりがちです。これでは、プロポーザルへの応募が地獄の門をくぐることと同じになってしまいます。

そこで本記事では、公募・プロポーザル入札で成功を収めるための「チーム作り」に焦点を当てます。官公庁案件獲得の基本であるプロポーザルで、継続的に案件を獲得するために必要な体制について「属人化を防ぎつつ、短いスパンで効率的に提案書を作り上げるにはどうするか?」という視点でまとめています。



1. なぜチーム作りが重要か

プロポーザルへの参加にあたってなぜ「チーム作り」が必要かというと、次の理由があります。

1-1. 締め切りまで短い

役所や官公庁の公募案件は、想像以上に締め切りまでの猶予が短いです。1~2週間で提案内容を固めて、必要な資料を全部そろえ、誤字脱字までチェックしなければなりません。

しかも、行政案件の公募要項・仕様書には独特の用語・言い回しが用いられていますので、「何を作って提出するか」を把握するにも一苦労が必要です。

結局、期限ギリギリでバタバタした結果、質が落ちてしまうのもよくあるパターンです。

そんな中、提案骨子の作成、実績の整理、体裁の整備、印刷・製本まで、一人で担おうとするとそれは地獄への入り口です。(続きます)

1-2. 作業者1人で作り上げることが困難

公募案件で勝つことは、数百万円~数千万円の受注獲得と同義です。そのため、プロポーザル参加の負担を理解していない上司が1人の担当者に任せた場合、野心的な担当者であれば多少無理をしても作成まで漕ぎつけようとするかもしれません。

しかし、提案書作成にはいろんなタスクが発生します。提出要件の確認、業務仕様の確認、過去実績の収集・整理、会社概要の見直し、技術資料の作成、事業実績予測の検討、読み合わせ、印刷製本、さらに社内稟議や上層部への説明など、さらに細分化すればキリがありません。

担当者自身も普段の業務を持っていることが多いので、これを単独でこなすのは不可能です。通常業務もしくはプロポーザル提案書のどちらかに影響が出てしまいます。

1-3. 属人化させないことで安定的に案件を獲得するため

「あの人がいないと提案書が作れない」という状態が続くと、その人が抜けた途端に受注の流れが止まってしまう懸念があります。特に業務分担の態様から「一人親方」状態にあるチームでは、提案書の内容が個人の力量に左右されてしまいます。

そこで、複数人で情報共有しながら対応できるチーム体制を作ると、属人化を回避しながら仕事を回せます。

チーム全体でノウハウを蓄積していけば、担当者が変わっても一定以上のクオリティを保った提案書をスピーディーに仕上げることが可能です。

結果として、公募案件を安定して獲得しやすくなります。


ここで、プロポーザル参加時になぜチーム作りが重要かをまとめます。

◆まとめ|1. なぜチーム作りが重要か
・公募は短期決戦。役割分担しないと締め切りに追われるばかりでクオリティが担保しづらい。
・担当者一人に集中するとパンクするし、せっかくの受注チャンスも活かしきれない。
・チームでノウハウを共有し、属人化を防ぐことで継続的な獲得につなげやすくなる。

2. プロポーザル参加のためのチーム作りの具体的方法

次に、提案書作成を本格化させるまでに、どのような体制作りをしたらよいのかを説明します。

書いてみると基本的なことが多いのですが、きちんと1つのプロジェクトとして実行する仕組みが重要ということです。

2-1. 役割分担をする(責任者、提案書ライター、資料収集担当など)

まずは、誰が何をするのかを明確にすることが重要です。例を挙げると、以下のとおりです。

  • 責任者:スケジュール管理、提案骨子のチェック、制作物のチェック、承認、上司との調整など

  • 提案書作成者:文章の構成や表現の調整

  • 資料収集担当:各種証明書や参考データの収集、整理

  • デザイン・レイアウト担当:提案書のレイアウト改善や図表の作成など

これだけでも、提案書作成の重たい部分を複数人で分け合えるので、格段に進行がスムーズになるでしょう。実際には、通常業務との兼務状況などに応じて人員を増減させることになります。

2-2. 作業フォルダを作成・ファイル名ルールの共有

チームでやるとファイルのやり取りが増えるので、クラウド上に共通フォルダを作っておきましょう。

また、ファイル名についても、特に作業をするファイルを中心に命名ルールを設けておくことが重要です。

最悪なのがフォルダ内に

・【最新版】提案書
・250124提案書
・【提出用】提案書

が並んでいる場合です。それぞれ

・【最新版】提案書
ファイル作成時に「最新」であったにすぎず曖昧
250124提案書
ファイルを作成した時が分かるがその後の状況が分からない
・【提出用】提案書
ファイル作成時に「提出用」として作成したにすぎず、その後の修正があったか分からない

といった問題があります。

これについては様々な手法があると思いますが、個人的には「バージョン」と「保存日時」を併記することが良いと思います。例えば

【最新版】提案書
⇒ ver.1.0_提案書_ドラフト_25012501
 (バージョン_資料名_年月日時)

のようなイメージです。

バージョンの値は、1の位が資料の構成のバージョン、小数点以下第1位の値は、構成の変更がない修正のバージョンとすることがおすすめです。

「ver.1.0」を作成後、資料中の文章に修正を行った場合は「ver.1.1」にナンバリングして別ファイルとして保存します。その後、スライドを入れ替えたり、一部ページを削除する場合は、「ver.1.1」を修正し「ver.2.0」として保存します。

2-3. 参照する内部資料を集約する

公募・プロポーザルでは「過去の受託実績を証明する資料」や「会社概要・財務諸表」など、多種多様な内部資料を求められます。

これが各部署や各担当者の手元に散らばっていると、都度「この資料どこにあるんだっけ?」となり非効率です。しかも、こうした実績資料・手持ち資料の類は、「どれが最新版か」が不明瞭な場合もあります。

そのため、資料・データ作成者に最新版か否かを確認のうえ、使用する資料をを一箇所に集約しておくことがおすすめです。これだけで大幅にスピードアップできます。

そして資料の収集は、初期にやっておくことが重要です。作成作業の都度必要な資料を持ってこようとすると、提案内容の前提となる条件がチームメンバー全員に共有されない可能性があります。

2-4. 使用する様式をダウンロード、保存する

提案書を作成する上で、行政指定の様式(WordやExcel、PDFなど)が頻繁に更新されることがあります。期日間際に「あれ、様式が変更されてた!」と気づいて慌てるのは最悪のパターンです。

そのため、公示されたタイミングでまずは様式をダウンロードし、必ずチームのフォルダに保存しておきましょう。

念のため、更新日やファイル名のスクリーンショットを取っておくと、後々「どれが正だったっけ?」となったときに助かります。

2-5. 文章作成、資料作成上の禁則集を作成する

複数人で資料を作成するので、文章中の言い回し・使用する語句に違いが表れることが自然です。例えば、自社のことを指す際に「弊社は」「当社は」「私たちは」などと複数パターンの言い回しが作成資料で使われてしまうことがあります。

そのまま作成されてしまうと、まとまりがなく、細かいところに配慮ができない印象を与えかねません。

チームで作成するとは言え、提案書は「1人が作った」ように見えるものであることが望ましいです。

そのためには、提案書中で繰り返し使用される語句・言い回しについて「どれを使用するか」をルール化しておくことが重要です。

ここでルールを作っておくと、作成者が変わっても一定のクオリティを担保できます。

ルール化する語句の例
・当社/弊社/私たち/わたしたち/我々
・この提案/当提案/今回の提案/本提案/当提案書 他
・子ども/子供/こども
・障害/障がい
・いたします/します/させていただきます
※その他、数字や記号の半角・全角の使い分け

2-6. 提案骨子を作成する

いきなり本番レベルの提案書を書き始めると、途中行き詰まり「やっぱり構成を大幅に変えなきゃ…」となったときに手戻りが大きいです。作成途中での構成の変更は、スケジュール的に致命傷になりかねません。

そこで、まずはA4数枚程度の「提案骨子」を作り、全体像・提案の方向性を決めることがおすすめです。

提案骨子には、事業目的・背景、提案内容の概要、期待される効果などをまとめます。骨子案ができたら、チームや経営層で「この内容でいいのか?」をしっかり擦り合わせます。公募の要件に合致しているか、自社の強みがアピールできているか、採算性や実現可能性が示せているかなどをチェックします。この段階でチーム内で認識を合わせるとともに、承認権者まで了解を得ます。

そうすることで、厳しいスケジュールの中でも効率的に分業して提案書を作成することができます。

もし方向性がズレたまま本書きに入ると、書き終わってから大幅な手直しが必要になるので、ここは惜しまず時間をかけましょう。

◆まとめ|2.プロポーザル参加のためのチーム作りの具体的方法
・まずは役割分担をはっきり決めて、担当者が迷わない環境を作る。
・作業フォルダや資料の一元管理で、ファイル探しの手間を削減。
・書式や禁則集を準備して、全員が共通ルールで文書作成できるようにする。
・提案骨子で全体像を固めてから本書きに入ることで、修正を最小限に抑える。

3. まとめ

公募やプロポーザル案件で勝つためには、短期間でクオリティの高い提案書をまとめ上げる必要があります。

そのためには、属人化を避け、チーム全体で役割を分担しながらノウハウを共有する体制づくりがポイントです。

改めてポイントを整理すると、以下のとおりです。

  • タイトなスケジュールにも対応できるよう、チームで効率よく作業を進める

  • 単独作業でパンクしないように、役割分担と情報共有を徹底する

  • 禁則集や提案骨子など共通のガイドラインを設け、クオリティを一定以上に保つ

  • チームとしての“提案力”が向上すれば、BtoGビジネスの可能性はどんどん広がる


公募案件に勝ち続けるためには、一発勝負ではなく継続的な取り組みが不可欠です。ぜひ今回ご紹介したチーム作りのヒントを参考にしていただき、プロポーザル案件の獲得に挑戦していただければ幸いです。

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ここからはおまけです。
私は、BtoGビジネスに参入をご検討の方へ向けたコンサルティングサービスをご用意しております。

  • 「公募案件に興味はあるけど、どれに応募すればいいか分からない」

  • 「提案書のクオリティをもう一段高めたい」

  • 「行政との関係構築や、入札手続きに不安がある」

こうしたお悩みに対して、参入の検討支援から実行まで伴走してサポートいたします。提案書作成はもちろん、受注後のフォローアップまで幅広く対応可能です。

BtoGビジネスを安定的に取り込むための体制づくりを、ぜひ私たちにお手伝いさせてください。まずは「クリエイターへのお問い合わせ」機能やコメントなどでお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。


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