「高専スペース連携」の夢をのせて -超小型衛星「KOSEN-1」前史
「KOSEN-1」は、高知高専の今井一雅教授(当時)をプロジェクトマネージャーとして、高知・群馬・徳山・岐阜・香川・米子・新居浜・明石・鹿児島・苫小牧という全国10校の高専が参画して開発・打ち上げを行った、超小型の人工衛星です。
超小型ってどれくらい?と思うかもしれません。たとえば、気象観測衛星として地球を周回している「ひまわり8号」や「ひまわり9号」の、太陽電池パネルを含まない本体のサイズは、だいたい【2.2m×2.1m×2.9m】。軽四自動車1台分よりちょっと幅が広いくらいのサイズです。国際宇宙ステーションの大きさはなんと、だいたい【108m×73m】。サッカーコート1面分と、超巨大。
これらに比べてKOSEN-1は【10㎝×10㎝×20㎝】というサイズ。おおざっぱにはなんと、500mlのペットボトルと同じくらいの大きさ。この小さな小さな人工衛星には、たくさんの教員の「夢」がつまっていました。
こう語るのは、2020年4月から2024年3月まで新居浜高専に講師として在籍し、現在はチェコ科学アカデミー大気物理学研究所の研究員である今井雅文さん。「KOSEN-1」開発・運用の他にも、合宿型の宇宙教育プログラム「高専スペースキャンプ」や衛星のアイデアコンテスト「高専宇宙コンテスト」など様々な取り組みを通じて、宇宙科学に関する人材育成を目指している教員グループ「高専スペース連携」の教員たちにとって、自分たちの衛星を軌道投入するのは、大きな夢の一つでした。
CubeSat(キューブサット)というのは、【10㎝×10㎝×10㎝】の立方体型の機体を基本単位【1ユニット(U)】とする超小型衛星の総称で、一般的な人工衛星より開発・打ち上げ費用が安価なため、2000年代前半から開発・打ち上げ事例が増えてきた衛星です。
このようなCubeSatの一つである「KOSEN-1」が掲げたミッションは3つ。1つ目は、木星から放出されている強力な電波の総称である「木星電波」を観測するためのアンテナ展開。2つ目は、衛星の姿勢制御について、群馬高専で開発された新しい「デュアル・リアクションホイール」の技術実証。そして3つ目は、衛星本体の制御を担う超小型コンピューターの開発。これらのミッションを設定し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が2018年7月に募集を開始した「革新的衛星技術実証2号機」に応募。最終的に、計9機の衛星が採用された非常に狭き門でしたが、「KOSEN-1」プロジェクトはこれを見事に突破。2018年12月に発表された「選定結果」では、選定理由の一つとして「宇宙に高専という新しいプレイヤーが参画することによる裾野拡大と教育・人材育成にも期待」というコメントも公表され、「高専スペース連携」に関わる全国の高専教員の悲願だったCubeSat開発・運用が「2021年打ち上げ」というゴールに向かって、スタートを切ったのでした。