はじめに ー「試行錯誤の青春展」について
2003年に公開された映画『ロボコン』の一幕です。
「高専ロボコン」に奮闘する学生たちの姿を描いた映画の佳境、全国大会の前夜。
重量オーバーとなった自チームのロボットの軽量化にチーム全員で深夜まで取り組んだのち、長澤まさみさん演じる主人公が、伊藤淳史さん、小栗旬さんらが演じるチームメイトと一緒に、顧問教員の用意したラーメンをすするシーンです。
「ずっと今日が続けばいいのに。」と感傷に浸る主人公に、ニヒルな天才設計士という役柄の小栗旬さんが「1回戦で負けたら、明日の午前でおしまいだ。勝てばいい。そうすれば夕方まで続く。」と応じ、主人公が感極まる。「これぞ青春!」というシーンです。
このような映画の例を引くまでもなく、「青春」と聞いて私たちがイメージする事柄はおそらく、大枠では共通していると思います。汗と、涙と、努力と、笑顔と、おそらく大きな成功と挫折と、海と、夕日と、帰り道と、友情と・・・連想される単語を列挙するとこのような感じでしょうか。
たとえばそれは、具体的には「高校野球」かもしれませんし、映画の主人公も言及している「文化祭」かもしれません。そんな特別なイベントではなく、日々の何気ない放課後、のことかもしれません。
‘かつて高校生だった私たち’が振り返ってみても、「あれが私の青春だったかも」と思い出される記憶が、一つ二つ、ある方も多いと思います。そして、「こんなに本気になったの、はじめてだから。」という主人公のセリフに、心当たりがあると思います。
今回の展示は、青春展です。「青春」を取り上げます。
とりわけ、モノづくりの街・新居浜らしく、「モノづくりに【本気】になった」青春を取り上げます。「試行錯誤の」というのは、彼らが取り組むモノづくりプロジェクトがどんなものか、という概要紹介ではなく、そのようなプロジェクトに取り組む‘青春真っ只中’の学生たちが、何を見聞きし、どのように考え、彼らの青春がどんなトライ&エラーを経たものなのかを、本人たちのことばで紹介したいためです。
忙しい中時間を割いていただき、たくさんの方に話を聞きました。
若きエンジニアたちの、熱い情熱と野心を、少しでも感じていただければ幸いです。
参考文献・論文(順不同)
古厩智之『青春ロボコン 「理数系の甲子園」を映画にする』岩波ジュニア新書2004
浅野健一『勝てるロボコン相撲ロボットの作り方』東京電機大学出版局2001
ニール・バルコム著・松本剛史訳『ロボコン イケてない僕らのイカした特別授業』集英社2014
萱原正嗣著・全国高等専門学校ロボットコンテスト事務局監修『闘え!高専ロボコン ロボットにかける青春』KKベストセラーズ2017
正本ノン・丹内友香子共著『ぼくらが鳥人間になる日まで』ポプラ社2000
中村航『トリガール!』角川マガジンズ2012
森政弘『ロボット考学と人間 未来のためのロボット工学』オーム社2014
久野治義・長谷部信行著『あなたの超小型衛星を作ってみませんか? 設計・制作から運用まで』恒星社厚生閣2023
今井一雅ほか「KOSEN-1 Jupiter radio observation campaign with ground-based radio telescopes」第150回地球電磁気・地球惑星圏学会 会議発表論文2021
今井一雅ほか「Technology Demonstration CubeSat KOSEN-1 for Jupiter Radio Observations」33rd International Symposium on Space Technology and Science (ISTS), February 26-March 4, 2022, Beppu, Japan
若林誠ほか「Report on the 2017 and 2018 KOSEN Space Camps: Mission CanSat to Model CubeSat」TRANSACTIONS OF THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES, AEROSPACE TECHNOLOGY JAPAN 19 (1), 130-134, 2021
梶村好宏ほか「宇宙人材教育のための連動型『モデルロケット講座·モデルロケット大会』の実施成果」『工学教育』65巻3号2017