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ロボコン部員たちの青春④ 仲間と、灰のように燃え尽きて。 ―後輩に託す全国への夢

その③の続きです。


「最高ですね」
「大好きですね」
「楽しかったなあ」
「下級生がこう言ってくれて、うれしいですね。しんどい、苦しいはありますけど、それ以上にすっごい楽しい。おって楽しいし。」
「作るのが楽しいっていうのもあるし、メンバーもいいんで。僕は5年生がこのメンバーでないと、辞めてたなあと思います。絶対。」
「僕も、彼らがいなかったら辞めてると思いますね。」
「僕も辞めてますね。」

 5年間の「ロボ研」での活動を、充実感を湛えて語る、専攻科1年の脇さんと、5年生の守屋さん、沖野さん。2023年は準優勝ながら全国への切符を逃した雪辱を期して、一緒に典型的な‘ゲン担ぎ’をした3人です。

「僕ら、本番の3日前?前日?だったかな、金曜日の昼に、カツカレーを食べに行ったんですよ。」
「行った行った。『はまや』行ったわ。」
「僕らはそんな感じで、部活の時間外で、ご飯行ったりとかあるので。」
(ホームセンターの横のカレー屋さんですね。)
「そうそうそうそう。」
「初めて行ったけど、おいしかったね。ゲン担ぎで、僕はカツカレー、守屋君もカツ。こいつだけ唐揚げ。」
「揚がっとるから、いいやん。」
「意味ないやん。普通、カツ、カツ、カツ、やろ。」

 こんなやり取りに象徴されるような、「賑やかなロボ研」の雰囲気を作った張本人とも言える3人の‘全国’への夢はしかし、達成されることはありませんでした。
 四国大会から2週間ほど経って行ったインタビューに、「ロボ研」のロゴの入った作業着を着て現れた沖野さんは、「敗戦のショックからの立ち直りは?」との問いに、こう答えます。
 

 僕らは引きずってて、悔しかったね、って言いながら帰りのバス乗ってましたね。ぜんぜん無理ですよ。立ち直ってたら、これ(ロボ研の作業着)着てないですよ。ほんとは、すっきりしてそのまま部活を終わる感じがよかったですよ。全国大会行って、それが終わって、すっきりして、「ああ、部活終わったなあ」って言いたかったですよ。

 沖野さんと同じく5年生で、「ロボ研」への関わりが一旦区切りとなる守屋さんも、悔しさを隠しません。
 

 僕は何も考えれなくて、ほんと悔しかったですね。彼(沖野さん)は、立ち直ってないけど、ちゃんと後輩の教育とか、別のことをしようとしてるんです。けど、僕は灰のように、燃えつきた。灰のように燃え尽きて、立ち直れてない。

 大会が終わっても毎日、部活に顔を出すという彼ら。それは、「僕らの時と全く違う」とそのやる気を感じ取っている、後輩のためでした。

 「来年は変わるよね。僕らのときとは全く違う。来年は、今までで一番ポテンシャルありますね。全然、僕らの代よりやる気が、比べ物にならない。」
「それは、彼らの努力ですよ。引継ぎとして、技術継承で僕らが教えても、自分たちの努力がないと身にならないので。」

 引継ぎとして自分たち上級生の語る言葉が、しっかりを受け止められている雰囲気。そして、そんな彼らの言葉を確かな糧にしようと、自ら努力しようとする雰囲気。
 「一番のポテンシャル」を感じる後輩たちに全国への夢を託す彼らは、冗談交じりにこう語ります。

「その雰囲気をつくったのは、俺らだと思うけどね。」
「ほんとに、後輩もそう思ってくれてたらうれしいけどね。」
「俺らは、俺らのやりたことをやってただけだけどね。」
「みんな運命共同体なんで。」
「足、引っ張り合って。」
「ははは、手を引っ張れよ、足じゃなくて。」

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