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「1リットルで1000㎞とか2000㎞とか走ってて、ロマンを感じて。」エコラン ―平均時速25㎞の‘スーパーカー’に乗って

 日本のモータースポーツの聖地とも言える「モビリティリゾートもてぎ」。毎年、Hondaエコマイレッジチャレンジ(エコラン)の全国大会会場にもなっているここは、栃木県宇都宮市から車で60分、茨城県水戸市から車で60分など、周辺の大都市からは少し離れた場所に位置します。
 「エコラン」全国大会はなんと、新居浜高専は現地集合!正確には、大会期間中に宿泊するホテルに現地集合。修学旅行がない新居浜高専にとって、その道中はさながら「プチ修学旅行」です。

「1年生は4人いて。4人を、コーチの人が連れて行ってくれて、車で13時間。休憩を挟みながら。まずは岡崎SAに行って、で、誰かが「日本一大きい海老名SAに寄りたい」と言ったんで寄って。東京観光もしました。行きたいところに行こうってことで、東京でいったん降りて、電車で。僕は文房具が好きなんですけど、銀座に有名な文房具屋さんがあるので、そこに行きました。」(本田さん)
「僕は渋谷に行ってきました。渋谷スカイに行ってみたんですけど、チケットが完売していて、あとは渋谷109とかパルコとか、あとは渋谷でゲーセンして。」
(石畑さん)

 こう振り返るのは、1年生ながらエコラン全国大会のドライバーに抜擢された本田さんと、本田さんがドライバーを務めたチームでメカニックを担当した石畑さん。

 僕らは寝台特急で行きました。
寝台特急なんてめったに乗れないので。東京まで行った後に、時間があったんでスタバで遊んで。2時間くらい遊んで、栃木までは常磐線で行きました。面白かったです。

 こう振り返るのは、今年は特に低学年が多かった「エコラン」メンバーを上級生として引っ張った、4年生の松田さんと3年生の西村さん。熱戦を控えての、束の間の楽しみです。
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 部活ではなく、機械工学科の「プロジェクト」であるエコラン。車が好き、モノづくりが好き等々、メンバーそれぞれが確かな熱意を持っています。

 流体力学とかの知識にも興味があるんですけど、機械工学科の中でも、エンジンを触る実習が1年の時にしかないんです。1年の前期にしか。エンジンを分解して組み立てる実習なんですけど、「なんで機械工学科なのに、エンジンを触る機会がないの?」と僕らは思ってるんです。それがエコランに入ってると、エンジンに触れる。エンジンをいじれる。それがエコランならではだな、と思いますね。

 こう語るのは、鳥人間航空研究部や海上自転車などにも参加している、4年生の松田さん。今年の車体製作では、毎年使っている車体の骨組みを活かしながら、新たに挑戦したことがありました。

 今年のカスタマイズの一番は、Bチームのカウル(車体前方の覆い)の形ですかね。前まではアルミで成形してたんですけど、今年はFRPという素材で、新幹線みたいな流線形にして。それを今年初めて作ってみました。
 ほんとはフルカウルにしたいんですけど、まあフルカウルじゃないけど「前だけは、そういう風に新幹線みたいに空気抵抗をなるべく少なくしよう」ということで。技術職員の人と一緒に作ったんですけど、手探りで「こんなんでいいんかなあ」とか言いながら作ってましたね。

 走破タイムではなく、一定周回を走行した後のガソリンの残量から燃費を競う「エコラン」。カウルを流線形にして空気抵抗を少なくし、燃費向上を狙った「Bチーム」の結果は【331㎞/L】。平均時速はだいたい25㎞/h、走り方も「エンジンをかけて加速して、ある程度加速出来たらエンジンを止めて惰性で走り、速度が落ちたらまたエンジンをかけて…」というのを繰り返し、かつ平坦なコースでの記録ですが、331㎞というのは新居浜から伊勢神宮まで直線距離でいけるような距離。出場したカテゴリーの中では中位ぐらいの成績ですが、「1リットルで300㎞以上走る車」というのは驚異的です。

 一方、1年生の本田さんがドライバーを務めた「Aチーム」。中学時代に学校説明会で聞いた「エコラン」に参加するにあたって、本田さんには夢がありました。

 中学のときに学校説明会で「エコラン」って聞いて、自分も帰って調べてみたら、すごいチームは記録が、1リットルで1000㎞とか2000㎞とか走ってて、ロマンを感じて。自分たちも車を改造したりしながら、それくらい行ってみたいなと思って。

 「下級生にも経験を積ませたい」ということで、1年生からも希望者を募ったドライバー役に立候補した本田さん。本番の走行は、やや悔いの残るものとなりました。

 スタートの時に、速度が上がられなくて。スタートがうまくいかなくて。そこがまず残念でした。スタートする時にエンジンの調子が悪くて、エンストしちゃって。そこでガソリンを何回も消費してしまって、という感じですね。でも完走できたので良かったですね。

 2024年大会の、同じカテゴリーの優勝チームの記録は、なんと1700㎞/L超え。歴代最高記録は3600㎞/L以上。大会に参加してそんなチームと同じ土俵に立つと、製作への意欲もいや増します。

 車体もフルカウルとかを作れたら、空気抵抗を減らせると思うんです。もっと技術や、お金があれば。
 あと、燃費が出るところはコンピューター制御にしてる。えー、コンピューターなん?と驚きますね。時速が40㎞まで来たらエンジンが自動で切れるとか。自分たちは30回くらいエンジンをかけるんですけど、上位チームは4回しかエンジンをかけずに7周するので、ホントにそんなことができるんかな、という感じ。ほんとに同じカテゴリ?という感じ。
 そういうの見るとやっぱり、1000kmは目標ですね。まずは400kmとか500kmに届きたいですけど。

 なんと、新居浜から約900㎞の行程で出場車両を運んだ輸送車が「もてぎ」到着直後に故障し、大会後すぐに出場車両を新居浜に戻すことが叶わなかったという、新居浜高専のエコランチーム。そんな状況でも、メンバーはこうおどけます。

 もてぎまで着いて(輸送用の)車が止まって、まだよかったです。道中で止まってたら、エコランカーで走って「もてぎ」まで行かんといけんかった。ははは。でも、「帰りもエコランカーなら、ガソリン2Lちょっとで帰れるわ」とか冗談言ってましたね。

 ガソリン1リットルでどこまでも。学生たちの挑戦は続きます。

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