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映画『ロボコン』の思い出① 無敵のチームに大金星!は銀幕でも

 新居浜高専ロボット研究部、通称「ロボ研」で現在顧問を務めている松友真哉先生たちの前任として「ロボ研」を率いたこともある、機械工学科の松田雄二先生。
 当時の記憶として今も鮮明に残るのは、当時「常勝軍団」だったあるチームに勝利し、高専ロボコン2002全国大会への出場権を得たロボット「燧のダイバー」のことです。

 「燧のダイバー」は、箱を積み上げていくタイプで、四国で優勝したんですよ。だから、詫間に土をつけたというか。だから、2位が詫間。いや厳密にはもう一校は推薦でいけるので、推薦でいったのが詫間だった。その当時、詫間に土をつけたのは鼻高々でしたね。 

 松田先生が、箱を高く積む競争だった2002年大会をこのように振り返る中に登場する「詫間」というのは、現在の香川高専詫間キャンパス。高松高専と統合して香川高専となる以前の当時は「詫間電波高専」として、全国屈指のロボコン強豪校として知られる存在でした。

 当時は詫間が強い、と言われていたころで。詫間はロボット専門のレジェンドみたいな先生がいらっしゃって、その先生の研究室があって。
 ロボコンは出場校それぞれ、AチームとBチームがありますが、詫間のAとBはドライバー1本貸し借りしない、とか聞いたこともありました。ライバルなんですよね。僕らが大会会場で、偵察のつもりはないけど、詫間をちょっと見に行ったりしても、あからさまに体でこういう風に隠して、他に見せないようにしてましたね。だから、今年もきっとすごいんだろうな、というのは思わされましたね。
(四国からの)全国大会出場の一つは絶対、詫間だったんですよ。

 当時、四国地区大会から全国大会への切符は2枚。「優勝校」と「推薦校」が1校ずつという狭き門を、ほぼ毎年のように突破していたという強豪校「詫間」相手に、「鼻高々」の金星を挙げて、2002年の高専ロボコン全国大会出場を勝ち取った「燧のダイバー」。周囲をあっと驚かせた白星は、現実世界にとどまりませんでした。

 それを再現してか、映画のシナリオでも、うちのロボットが勝つんですよ。

 その「映画」こそ、2003年公開の映画『ロボコン』。主に2002年の全国大会出場ロボットを使用して撮影が進められた、長澤まさみさん主演の青春映画です。
 監督と脚本を務めた古厩智之さんの「勝って勝って勝ちまくる物語にしよう。そう初めから決めていました。‘勝負には負けたけど、もっと大切な何かを得た’、そういう物語も確かにあります。でも今回はそれは違うのではないか。」という思いの通り、作中で描かれる全国大会では「勝って勝って勝ちまく」り、主人公チームは見事全国優勝を果たします。

 それ(現実の四国地区大会での金星)を再現してか、映画のシナリオでも、うちが主人公チームに勝つんですよ。主人公チームは、全国優勝しますよね。だから、映画のストーリーの中で、唯一主人公チームに勝ったのは、うちのチームの「燧のダイバー」だけです。

 誇らしげにこう振り返る、当時の顧問教員・松田先生。
 映画内では、地区大会初戦で「燧のダイバー」と対戦する主人公チーム。主人公チームの顧問教諭が、部長・四谷役の伊藤淳史さんたちに戦術を伝えますが、その戦術では想定外だった機能を「燧のダイバー」が発揮し、主人公チームは完封負け。
 その後「部長の四谷は、顧問教諭が見抜けなかった相手ロボット『燧のダイバー』の機能に、薄々気づいていた」というシーンが続き、伊藤淳史さん演じる部長・四谷の分析力の高さと、それを他のチームメイトにはうまく伝えられない口下手ぶりを印象づけるシーンとして描かれています。
 古厩智之監督は著書の中で

 初めて当たる相手・・・できるだけシンプルで機構が目に見えた方がよい。ということで出演したもらったのが新居浜高専の「燧のダイバー」です。箱を持ち上げ、できるだけ長くアームを伸ばす・・・という単純さ。しかし、機動性と確実性に富み、四国大会優勝のロボットです。

古厩智之『青春ロボコン 「理数系の甲子園」を映画にする』岩波ジュニア新書2004

 とその活躍を評しており、主人公チーム相手に挙げた白星は、監督の目利きに叶う大抜擢の「金星」なのでした。
 「高専ロボコンは、こんなにも青春だ!」というのを存分に表現し、好評を得た映画『ロボコン』。新居浜高専の「BigFatペンギン」「燧のダイバー」という2体のロボットは、現実の大会だけでなくスクリーンでも、助演男優賞ばり(?)の活躍を見せていたのでした。


その②はコチラ


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