映画『百万円と苦虫女』を見たら
この映画を見るのは何度目だろう。大好きすぎるので定期的に見ている。
ひょんなことから前科持ちになってしまった鈴子(蒼井優)が、実家を離れ、100万円貯まるたびに住むところと職を変えて様々な人と出会うお話。
それまで自分は得意なことなんか何もないと思っていた鈴子だが、海の家で働いた時にはかき氷を作る才能が開花したり、桃農家で働いた時には桃をもぐ才能を認められたりする。
だが100万円貯まればその地を出て行く。
鈴子の生き方はとてもシンプルに見えて憧れるけど、誰にでも真似できるわけでは無いと思う。
バイトで100万円貯めると言うのは相当切り詰めなければならないし、新しい仕事を覚えるストレスや、新しい地での人間関係づくりなど、億劫なことはたくさんある。
それでも鈴子がこの生き方ができるのは、鈴子の芯の強さにあると思う。
刑務所から出てきた直後に偶然会った地元の女子たちに前科持ちになったことをからかわれて、黙って言われっぱなしになっているのかと思いきや反撃した鈴子。その姿を鈴子の弟が見ていた。弟は小学校でいじめられており、毎日言われっぱなしのやられっぱなしだ。
弟は鈴子に「恥ずかしいことすんなよ。」と言う。
でも鈴子は言うのだ。
「恥ずかしいことなんて何もない。姉ちゃんは恥ずかしいことは一つもしていない。」
そもそも前科持ちになったのも彼女の行き過ぎた正義感が理由。
自分の行動や選択に嘘がない鈴子だからこそできる生き方なんだと思った。
そしてそれがわかる台詞が物語中盤にある。
鈴子の生き方に対して、「自分探し的な感じですか?」と聞かれると、
「いや、違う。むしろ探したくない。どうやったって自分の行動で生きていかなきゃいけないし、探さなくても自分はここにいるから。」
そう鈴子は言う。
どこで生きたって、どうやって生きたって、誰と生きたって、自分には自分しかいないのだ。
人とのつながりは確かにとても大事。だけど鈴子の生き方や言葉には偽りがなくて、その偽りがないということが自分を大切にする1番の方法なんだと気付かされた。
やりたくない仕事、行きたくない飲み会、言いたくないお世辞、張りたくない見栄、したくない我慢
自分に嘘ついてばっかの、そんなことばっかりの人生だけど、でもどうやったって自分の人生の責任を取るのは自分だから。
世間体とか周りの期待とか色々あるかもしれないけど、いつかは自分を1番大事にできる、嘘がない生き方をしたいなあと、この映画を見るたびに思うのです。