ものかきさんにちょうせんじょう。
ならざきむつろさんの企画に参加。
https://note.mu/muturonarasaki/n/n1302d3ed591a
最終回
「親父、行くな。行くなよ!」
首に巻いたスカーフでヘルメットのバイザーを拭った私に、東京の高校で追試を受けていたはずの息子の隼人が、交信中に突如割って入って来た。
「ガフッ!? ゲホゲホーー」
私がひび割れたモニターを引き寄せると、黒い学生服を着た隼人の姿が歪んで見えた。
「お、俺はもう助からん」
「隊長!ーーもう他に。他に助かる方法は無いのですか?」
冷静に聞いてきた楓に、私は不敵に笑う。
「隼人。お前は人類最後の希望だ。世界を……救ってくれ」
「救ってくれ?! あんたがやれよ?! ふざけんな!」
私の答えに、隼人がマイクを握りしめながら声を荒げた。力が制御できずひしゃげている。
「おいおい、無茶いうなよ」
「聞いてくれ! 俺、あんたにまだ伝えてない事が」
隼人がそういって通信が途絶したのを見ると私は、改めて眼前に広がる宇宙怪獣の群れを見つめる。
真ん中で月の半分くらいはありそうな紫色の化物が咆哮をあげているようだった。
「さて、どうするもこうするもないよな」
私は一人呟くと、再び首に巻いたスカーフでヘルメットのバイザーを拭った。