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二代目桂小南(かつらこなん)という落語家が面白い!

昭和後期~平成初期の落語家、二代目桂小南は、2020年で生誕100周年!

高座で演じる二代目桂小南。

純粋な関西弁でも、標準語でもない、二代目小南にしか演じられない、唯一無二の、ちょっと不思議な上方落語。すなわち「小南落語(こなんらくご)」。
ボケもツッコミも、巧みに演じ分ける、活き活きとした登場人物同士の掛け合いは、絶品でした!
若い人や、今のお笑い好きな人にも、二代目桂小南のことを知って欲しい!
まだまだコロナ禍の続く時代だからこそ、二代目小南の噺を聴いて、いっぱい笑って欲しい!
そんな思いを込め、このページに書きました。
元々は、2020年に、「二代目桂小南生誕百周年」というサイトを作成し、二代目小南のことを紹介していましたが、こちらにも、また、二代目小南のことを書いていきます。
これから先も、人々に語り継がれる噺家でありますように……☆彡

【二代目小南ってどんな人だったの? プロフィールは? 今年生きてたら何歳?】

本名 谷田 金次郎(たにだ きんじろう)
生年月日 1920年1月2日
没年月日 1996年5月4日(76歳没)
出身地 京都府北桑田郡山国村(現在の京都市右京区京北町)

生きていたら、2020年で、100歳でした!
(2022年7月現在では、生誕102周年)
京都府北桑田郡山国村(やまぐにむら)は、京都市中心部から30~40キロほど離れた山間部で、京北町(けいほくちょう)を経て、2005年に京都市に編入されました。
説明すると長くなるからと、「京都出身」で通すことも多かったようです。

二代目桂小南

本名は、「谷田 金次郎(たにだきんじろう)」といいます。
この本名(愛称)である「谷田さん」や「金ちゃん」は、噺の小ネタによく登場していて、『代書屋』は本名を活かしたバージョンもあります。

当時の山国村に住んでいた子供達は、比較的裕福な家庭であっても、小学校を卒業すると同時に、行儀見習いの為に、丁稚奉公に出なければなりませんでした。
谷田少年も例にもれず、小学校を卒業すると同時に、丁稚奉公に出されました。印刷店を経て、呉服店での奉公の際に、東京へ転勤、その東京で見た寄席に惹かれました。

【落語家としてどんな人生を送ってきたの? 50代でブレイク!】

画像はイメージです。

19歳の時に、三代目三遊亭金馬(さんゆうていきんば)に入門しましたが、三代目金馬を選んだのは、電話帳で目についたから、という理由でした。落語家になるという意志は固く、何度もしぶとく通いつめ、ようやく入門を許可されたようです。
落語に対する姿勢はストイックで、暇さえあれば稽古をしていて、腫らしがちだった扁桃腺をわざわざ除去するほどでした。
20代前半で、太平洋戦争に出征しますが、そこで、三代目三遊亭金馬の弟子だと周囲にばれ、休憩中に落語をやっていました。部隊のムードメーカーだったようです。出征中、チフス菌にかかり、死にかけましたが、驚異的な回復を見せました。

画像はイメージです。

若い頃は、寄席には出られず、売店や本屋などもやっていました。
寄席にようやく出られたとしても、京都の山奥で育った「なまり」が災いし、伸び悩む日々が、20年ほど続いていました。
ところが、関東落語から上方落語に転向したところ、純粋な関西弁でも、標準語でもない、唯一無二のスタイルが受け、「小南落語」として人気を博しました。

1974年、若者向けの独演会で演じる二代目小南。

1973年から1975年にかけて、隔月末に、独演会を開き、その様子は「桂小南全集」として音源化されました。この時、50代前半。当時の落語家としては、かなり遅咲きだったようです。

 ・1968年、『三十石』で芸術祭奨励賞
 ・1969年、『菊江の仏壇』、『胴乱幸助』、『箒屋娘』で芸術祭大賞
 ・1989年、芸術選奨文部大臣賞
 ・1990年、紫綬褒章
上方落語に転向してからは、様々な栄冠を手にしています。

【二代目小南の趣味は? 性格は? 酒、たばこは好きだった? 若者に落語を普及しようとしていた?】

二代目小南は、温厚で優しい性格だったようです。
普段はおちゃめな、いじられキャラで、楽屋で着替えている最中、他の噺家に、おへそをいじられて遊ばれる、なんてこともあったようです。
その一方で、芸と礼儀には厳しかったようで、暇さえあれば練習をする努力家だったので、「稽古の鬼」と呼ばれていたようです。

二代目小南が描いた、鈴本演芸場の絵

二代目小南の趣味ですが、絵を描くのが好きで、水彩画や水墨画、イラストなどをよく描いていたようです。二代目小南が描いた絵画が、寄席や展覧会などに飾られることがあったようです。現在も、ごくまれですが、二代目小南が描いた絵画を見ることができます。

二代目小南の嗜好ですが、タバコは、吸わなかったようです。お酒も弱く、付き合い程度しか飲まなかったようですが、但し、噺自体には、タバコや酒が出てくるものもあり、町ゆく、喫煙者や酔っ払いの様子を観察し、演じることも多かったようです。

若者や子供達に、落語を残していこうと熱心でした。
若者向けの独演会を開くこともあり、艶話(エッチな噺)やレアな噺を演じ、今でいうトークイベントのような、ファンとの交流も楽しんでいたようです。
また、子供向けには、「学校寄席」の初代メンバーとなり、二代目林家正楽らとともに、全国を廻っていました。子供向けの落語本も執筆しています。

【小南落語(こなんらくご)って何? わかりにくい? 面白い!】

画像はイメージです。

二代目小南は、上方落語を、関西人以外の人にもわかりやすくアレンジし、独特の「小南落語」を作り上げました。
純粋な関西弁ではない、かと言って関東の言葉ともまた違う、その噺ぶりを、「中途半端だ」「本物の上方落語ではない」と評する人も少なからずいました。
しかし、上方で演じられなくなった噺を復活させた功労者でもあります!

画像はイメージです。

二代目小南が演じた噺は、殆どが古典落語ですが、その中にも、当時の若者文化や流行語、パロディなどを含ませています。恐らく、流行に敏感な方だったのでしょう。
古典落語で、設定は江戸時代や明治時代なのに、カタカナ言葉が出てくることも多々あります。
例えば、『眼鏡屋盗人』。これは古典落語なので、少なくとも明治時代には作られた噺なのですが、プロレスの選手が会話中に登場します。プロレスが日本に普及したのは戦後なので、絶対に有り得ない表現なのですが、それもさらりと取り入れています。

画像はイメージです。

そこもまた、「小南落語」の面白い点だと思います。本質を壊さずに、言葉も設定も、いわゆる既成概念をぶち壊して、自分のものにするという、難しい芸を、二代目小南はやっていました。
小南落語の最大の魅力は、細かい小ネタと、登場人物同士の掛け合いだと思います!
一人で、ボケとツッコミを巧みに演じ分けていますが、それがただ技術的に「上手い」だけでなく、心から笑わせよう、楽しませようとしているのです。所々に出てくる、ノリツッコミも面白いので、是非、登場人物同士の会話に注目して聴いてみてください!
若い方、お笑いが好きな方にも、オススメです!
落語だからカタそう、難しそう、などと思わず、普通に、テレビに出ている若手芸人の漫才を観ている感覚で楽しんでみてください!


【二代目桂小南に後継者はいる?】

現在は、三代目の桂小南師匠がいらっしゃいます。
1996年の二代目没後、長い間、名跡が空席になっていましたが、2017年に、現在の三代目小南師匠が襲名いたしました。

現在の桂小南師匠。
二代目とはまた違った魅力があります。

本名 山崎 徳美(やまざき なるみ)
生年月日 1961年10月20日(60歳)
出身地 埼玉県春日部市

Wikipediaより

お父様は、紙切りの二代目林家正楽(はやしやしょうらく)という方です。
三代目小南師匠は、元々、正楽の長男として、紙切り芸人の跡継ぎになるはずでした。
しかし、正楽は、当代の師匠を、いきなり弟子にはしませんでした。まずは、寄席の空気感や話術に慣れるように、という正楽の意向から、同時期に活動し、親交も深かった二代目小南に入門させたようです。
ところが、当代の小南師匠にとって、この経験が、紙切り芸人ではなく、落語家になるきっかけになりました。
ちなみに、弟の林家二楽(はやしやにらく)さんが、紙切り師としてその跡を継いでいます。
当代の小南師匠には、桂南太郎さん、桂南之助さん、桂南海(なんしー)さん、の三名のお弟子さんがいらっしゃいます。

【三代目小南師匠もまた素晴らしい!】

二代目小南の弟子の中では最後に入りましたが、兄弟子たちからの信頼も厚く、2017年9月、「三代目桂小南」を襲名しました。
三代目小南師匠も、二代目師匠とはまた違っていて、関東出身者でありながら、あずま言葉での上方落語を演じています。
勿論、二代目小南から受け継いだ噺だけではなく、二代目小南が表向きに演じることのなかった、江戸落語新作落語もあります。
当代の小南師匠は、話し振りに重厚感があり、韻を踏んだ流暢な話し口やスピード感が小気味よく、面白いです。威厳と柔和さの表情のギャップ、使い分けも見ものなので、こちらも是非、オススメです!

当代の小南師匠は、「桂小南でございます」というサイトをなされています。
三代目小南師匠の公式サイトにある「小南への道」には、二代目小南の名言が多く掲載されています。「お品書き」の一番下の項目です。
二代目小南の名言が多く、優しくて、面白くて、ちょっぴり厳しい(?)、二代目小南の人柄も窺えますので、是非とも読んでいただきたく思います。

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