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短編小説【雨の降る日】

  雨の降る日だった。

 目が覚めると私は彼のベッドの中にいた。
 雨で濡れてたはずの服は、気づけば彼の服を私は着ていた。

 着替えさせてくれたんだ…。

 見回すと近くのソファーからこっちを漆黒の髪と瞳でじっと見てる彼がそこにいた。
 何も言わない彼。

 気まずい…。

「怒ってる?」
 私が口を開くと彼はちょっと待って「あぁ」と溜め息をつくように答えた。
「だって…」
「だってはいらない」
「でも…」
「でももいらない」
「イジワル…」
 私は小声で呟いた。
「何?」

 聞こえてるくせに…。

 彼は何も聞こうとしない。
 私から喋り出すのを待っているらしい。
 いつも、彼はそうして来た。
 私を試しているらしい…。

 ≪ end ≫


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赤羽根比呂
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