父の葬儀4 納棺の儀
その日は、朝から実家に集合しました。私は自宅で喪服に着替え、数珠を携えて家に到着しました。タイスケの表と、施主挨拶の原稿(こちらもテンプレをSさんが用意してくれました。そうなんです。挨拶コメントをやることになっているらしいのです)を懐にいれ、まずは続々と弔問に現れる近所の方々へのご挨拶です。妹夫婦も合流し、いよいよというところになりました。
それにしても驚いたのは、母の友人の多さです。ひっきりなしに訪れたほとんどの人は友人で、これだけの人と毎日一緒にいたら母も元気なわけだと、ちょっと嬉しくなりました。近親の親類も到着し、いよいよ、納棺の儀が始まりました。
まずは、葬儀屋さんの方で棺桶や諸々の道具を準備していただき、それを見守ります。遺体を清潔にして、死装束を着せ、三途の川の駄賃(実際の硬貨ではなく紙に印刷されたものでした。火葬場で燃え残らないためだそうです)を用意します。喪主の私と妹とで、足袋を履かせ、装束を着せる手伝いをしました。最後に顔を拭いてあげるということで、一人ずつその場の全員で声をかけながら、そっとお顔を拭きました。その顔が恐ろしく冷たかったのを今でもはっきり覚えています。そうか、人は死ぬとこんなに冷たくなるんだなあと思いました。母は後ろの方で見ているだけでした。最後に、死化粧(男子なので髭の処理、リップクリームくらい)をしていただき、納棺の儀は終わりました。誰も一言も声を発せず、ご遺体への着替えを淡々と行っていただいた葬儀社の方の優しい言葉だけが、ゆったりとそばに流れていました。
そして、男連中が集まって棺を、到着していた霊柩車に乗せました。私は助手席に乗り、遺体に備えてあったお盆(箸のたったご飯茶碗とお団子、生前に父が使用していたコップなどが乗っている)を膝に抱え、葬儀場に連れて行ってもらいました。残ったものは家の戸締りをして、後から葬儀場に向かうことになっていました。
続く。
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