フシギナパラダイス 2話 不思議な鳩 4/8【期間限定公開】
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視線が痛い。
当たり前だ、初日に居眠りなんて醜態を晒してしまったのだから。
ゲームや漫画じゃないんだから人の記憶はリセットされない、目立つようなことをしてしまった以上、悪い意味で注目を浴びてしまうのは致し方ない。
自分の席に着くと、先に来ていた前の席に座る洋太が哀れみの視線を送ってくれたけど、なんとなくその視線の中に「自業自得だぞ」というメッセージも込められている気がする。
言われなくたって自分が一番よくわかってるよ。
っていうか、私のせいじゃないし、神様のせいだし。
って、訴えても誰も信用してくれないだろうな。
本日朝だというのに何度目かになるため息をつくとちょうどチャイムが鳴った。
しばらくすると先生も教室にきて席に座るように声をかけた。
「それでは朝のHRを…」
「先生!その前に聞きたいことがあるんですけど」
「なんですか?」
「昨日、2年生が行方不明になったって聞いたんですけど、事実ですか?」
クラスメイトのうちの一人がそう先生に聞いた
その話を聞いて、クラス中がざわざわとし始める。
クラスメイトは続けてこう聞く
「もしかして、最近噂のあの誘拐事件と関係があるんですか?」
その質問で私は入学式前日に見た、行方不明者の張り紙を思い出した。
そういえば最近行方不明者が増えてるって…あれ、結局誘拐事件なんだ…
他の人もそこに結びついたのだろう、様々な憶測が飛び交い、最初は控えめだった声のボリュームがどんどん大きくなり、クラス中がかなりうるさくなった。
先生はその様子を困惑した様子で教室を見回したけど、一度咳払いして気持ちを整えた後、クラスのざわつきを鎮めるため、先生は手を大きめに鳴らし「静かに!」と言って注意をした。
「…変な憶測が飛ぶのは良くないので、ちゃんと説明します。
確かに、ついこの前、2年生の一人が出かけてから帰ってこない、という連絡を学校は受けています。行方が分からないのも事実で、今警察とも話していますが、最近話題になってるあの誘拐事件と関係があるかどうかは今の段階では判断できません。
とはいえ、今この地域の治安が悪くなっているのは確かです。行方不明の生徒が誘拐事件に関係あるかどうかはともかく、皆さんがいつ誘拐されないとも限りません、登下校の間は身の回りを気をつけるよう心がけてください。」
先生はそういうと、さっきまでうるさかった教室はシーンと静まり返った。
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「あの行方不明の張り紙の人たち、やっぱ誘拐だったのねぇ」
「でも、マッチョのインストラクターの人いなかったっけ?」
「誘拐犯すごいな、マッチョの人を誘拐できるって…一体どうやって」
休み時間、私となるちゃんと心矢は、HRで話題になった行方不明、改め誘拐犯について話していた。
というか、うちのクラスの人間は大体その話で持ちきりだ。
自分の学校で事件に巻き込まれた人間がいるかもしれないというのは、いい意味でも悪い意味でも気になってしまうからだろう、現に私もそうだし。
「まぁ、マッチョの人が誘拐されるくらいなんだもの、中学生男子なんて、簡単にさらえちゃうわよね。」
「そうだけど、さらう理由は?理由がわかんないよ、年齢も性別もバラバラじゃん、恨みにしたって…関係性なさすぎるし…」
「マッチョが好きとか少年が好き…っていうならそういう趣味なのか…って思えなくもないけどね」
人物像が全然浮かんでこない。いや、浮かんだところで何かできるわけじゃないけど。
「ただの愉快犯じゃない?」
「手の込んだ愉快犯だね…」
「それかさ、本当になんかこの世ならざるものだったりして」
「…まさか」
なるちゃんにそれを指摘されて少しドキッとした。
この世ならざるもの…そう言われて神様のことや、入学式の夢のことを思い出したからだ
まさか、あれと関係あるんじゃ…なんか敵の方がなんかやってるとか…
でも、人間を集めて何をしたいのか謎だし、手間かかるし…戦力増やしたいなら、マッチョの男ばっか集めるはずだし…
だったらやっぱり誘拐犯の方がまだしっくり…
「そういえばさ、今日おかしな鳩がずっと校庭にいるんだけど」
「え?」
「あ、あれ、ルイちゃんが今日連れてきた鳩じゃない?」
「え…そ、そうだったっけ?」
「なんか目立つよね〜普通の鳩よりでっかいから、なんかずっと目で追っちゃってたよ」
「先生の話を少しは聞きなさいよね」
…神様…帰ってくれなかったんだ…………
まぁ、別にいいけど…
別に校庭で遊んでてくれている分には私とは何も関係ないし…
…そうだ、この行方不明の話、神様にしてみようか。
もしかしたら関係あるかも…
…いや、別にいっか。そんなギリ私にはないし義務でもないし。
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キーンコーンカーンコーン
下校のチャイムがなりました
「お勤めご苦労様です」
校門で鳩に扮した神様は私のことを心待ちにしていたのか、丁寧な挨拶をしてくださいました。
「あのねぇ…」
もはや告げる言葉も見つからない。
どうせもう何を言ったところでこの神様は外出中は付いてくるつもりだ。
「そこまでしてくれなくてもいいんだけど…そんなことされても、君の話に「いいですよ」って首を縦にふるつもりはないよ?」
「別にいいですよ、僕の自己満足ですし、時間はまだ十分ありますから焦らなくて大丈夫ですよ。」
選ばせてくれているようで、優しく見せているようで、猶予をくれているだけで同意以外は認めないつもりだな。
はぁ…
もういいや、開き直ろう。
枕元に立たれないだけマシじゃない。
「ついてきても文句言わないけど、今日町に寄り道してくから、少し時間かかるよ?」
と思いつつ、ついて来るのがめんどくさい状況になれば、ついて来るの諦めてくれないかな…
「町ですか!?いいですね!ぼく、まだこの時代の現世の町に行ったことないんですよ!ぜひお供させてください!」
この神様ノリノリである。逆に興味を持たせてしまった。
まぁいいか、別に減るものではないし…こんなに目を輝かせている神様を放って置いてしまえば、きっとバチが当たるに決まっている。
こうして私は鳩に扮した神様をお供に連れて、町に繰り出したのである。
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