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【漢検】文章題の出典を探したい・後編

※本記事は以下の記事の続きに相当する記事となります。先にこちらをお読みください。


さて、ここからは僕の体験談である。

あるとき僕が出典を探していたのは、令和3年度第1回の準1級の試験で出題された津田つだ真道まみち【注1】の『唯物論』である。

【注1】「真道」の読みについて、『デジタル大辞泉』によると「しんどう」「まさみち」とすることもあるとのこと。ここでは『デジタル大辞泉』の見出しとして掲げられている読み方に従って「まみち」とした。

この文章は残念ながら『青空文庫』に収められていないので、前編で書いたように国立国会図書館のホームページで調べたところ、この文章は『津田真道全集 下』(みすず書房)に収録されていることが判明した。

問題は、その文献がどこの図書館に所蔵してあるかである。

この文献を探していた時、僕は埼玉県さいたま市に住んでいた。しかし、さいたま市内の図書館には所蔵が無く、県内だと熊谷市の図書館(具体的には、埼玉県立熊谷図書館)にしか所蔵されていないようだった。

しかし、埼玉県内という条件にこだわらなければ、東京都内にも所蔵している図書館があるらしい。

色々考えた結果、東京都に行って出典にあたることにした。


と、言うわけでやってきたのは、東京都港区みなみ麻布あざぶにある東京都立中央図書館である。近くにJRの駅が無いので、この日は久しぶりに東京メトロを利用した。

この図書館は、有栖川宮記念公園という大きな公園の中にあった。

公式ホームページによると、この図書館には国内の公立図書館では最大級の約225万冊を所蔵、そのうち約35万冊を開架しているという。

今回探している『津田真道全集 下』は開架図書では無かったので、職員に問い合わせて書庫から持ってきてもらった。

ところでこの図書館は、資料の個人貸出かしだしをしていないという。図書館といえば「本を借りる場所」というイメージがあったので、ちょっと意外だった。

まあ確かに、一般的な公共図書館でも辞書類は貸出できないようになっているので(むしろ貸出できるようになっていたら調べ物のときなどに資料が無くて困り果てることになる)、それほど驚くようなことでは無いのかも知れないが。

こうしてようやく、僕は『唯物論』の出典に触れることができたのである。もちろん、前編通して読んだ訳では無いが、本試験で出題された部分はきちんと確認した。

ああ、やっぱり「ショウヨウ」が近くに2つあったのだなあ【注2】、と思った。

【注2】このときの本試験では、書き取りの4番と5番の問題がどちらも「ショウヨウ」だった。ちなみに標準解答は、4番が「少幼」、5番が「従容(縦容)」であった。

それにしても漢検協会も、「ショウヨウ」と読む熟語があまり間を置かず登場するような文章をよく見つけてきたものだと思う。


ここからは後日談になるが、この後僕は大学を中退し、それと同時に栃木県宇都宮市の実家に戻り、現在に至る。

この記事を書くために改めて国立国会図書館のホームページで調べたところ、宇都宮市内の「栃木県立図書館」に今回探していた『津田真道全集 下』が所蔵されていることが判明した。

実家から栃木県立図書館までは自転車で行くことのできる距離である。わざわざ東京まで鉄道を利用して見に行ったのは何だったのであろうか……

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