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と学会とかトンデモ本とか

Wikipediaを見ていて知ったことなのだが、2024年3月にSF作家の山本やまもとひろし氏が誤嚥性ごえんせい肺炎で亡くなっていたらしい。

昔はX(Twitter)で時々彼の投稿がタイムラインに現れることがあったような気がするが、最近は特に活動を追っていた訳では無かったので、死去から随分経過してから知ることになってしまった。

山本弘氏は1988年に『ラプラスの魔』で本格的に小説家としてデビュー、その後の代表作に『時の果てのフェブラリー』『神は沈黙せず』『MM9』『アイの物語』などがある。

ただ申し訳無いのだが、僕はそれらSF作品を読んだことは現時点で一度も無い。

ではなぜ彼のことを知っていて、つここで取り上げるかというと、それは彼が執筆したSF以外の文章をよく読んでいた時期があったからである。

彼はSF作家である他、任意団体・と学会の元会長でもあった。僕は、彼(彼ら)の著作を読んでいた時期があるのである。

「と学会」を知るきっかけ

と学会と言えば、代表作は『トンデモ本の世界』シリーズだと思うのだが(ただ、シリーズ第1作は1995年発表である上、2014年頃を最後に新刊が出ていないようなので、若い方は御存じ無いかも知れない)、僕が初めて読んだ山本氏の文章はそれでは無い。

僕が初めて読んだ山本氏の文章は『こんなにヘンだぞ!『空想科学読本』』という、2002年の著作である。

これはタイトルの通り、柳田やなぎた理科雄りかお氏のベストセラー『空想科学読本』シリーズに対し、題材とする作品への不理解、計算ミス、科学的誤謬ごびゅうなどの観点から批判した書籍である。

この著作を読んだのは今から11年前、僕が中学三年生のときのことである(近所の図書館に所蔵していたので借りた)。初めて読んだ時から非常に印象に残っていて、後に『みんはや』で出題する自作クイズの題材にしたこともあるほどである(まあ、正解率は著しく低いが、意外なことに0%では無い)。

あと、柳田氏の言っていることを信用しなくなった(山本氏の批判本の上梓じょうしから22年っているのだからもう許してやれ)

この著作を知った時点ではまだ、「と学会」のことを知らなかったが、序文で軽く触れられていたので知ることになったのである。そして、そこから『トンデモ本の世界』シリーズを読み始めたのであった。

『トンデモ本の世界』シリーズを読んでいた頃

『トンデモ本の世界』を読んでいて、「世の中にはこのような本があったのか!」という発見が多かった。

UFOなどオカルトに関する本、「相対性理論は間違っている」と主張する本、陰謀論(アポロは月に行っていない、とか、アメリカ同時多発テロは自作自演だ、とか)に関する本、などなど。

ところで「トンデモ本」というのは、簡単に言うと「著者の意図とは異なる視点で楽しめる本」のことを指す。

具体的には、科学的な記述に誤りが多い『買ってはいけない』『ゲーム脳の恐怖』、文法的に誤りが多い『リアル鬼ごっこ』(文芸社から発売された初版)などが挙げられる。前述の『空想科学読本』シリーズも、見方によっては「トンデモ本」と見做みなせるのかも知れない。

『トンデモ本の世界』で紹介されるトンデモ本はマイナーなものも多いが、上で紹介したようにベストセラーとなった本も少なからず存在するのである。

個人的に『ゲーム脳の恐怖』については、小学2年生のときに担任の先生が「ゲーム脳」について話していたのをずっと覚えていたので、「いや疑似科学だったんかい!」と思ったものである(先生もその本について説明していた訳では無いが)。

その後

以前の記事(下記リンク参照)で書いた「他人のことを正しく批判できることが頭の良さ」という、今となっては恥ずかしいと思えるような僕の価値観は、彼らの影響を少なからず受けている。

しかし、あるときから彼らの著作を全然読まなくなってしまった

というのは、『トンデモ本の世界』に収録されている山本氏の文章を読んでいると、槍玉やりだまにあげている本のことを見下しているような、上から物を言っているような感じがして、それがどうしても鼻につくようになったからである。

また、今になってインターネットで調べると、彼らの言うことも100%正しい訳では無かったようである

当時の僕は、彼らの言うことを「盲信」していた節があったのだが、そういう意味ではかなり危ないことだったのかも知れない。


冒頭で述べた通り、元と学会会長の山本弘氏が今年3月に亡くなったと知ったので、「と学会」や「トンデモ本」について改めて思い出して、記事にしてみた。

時の流れは早いものだなぁと思う。

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