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お風呂に入る事よりも大切なこと

別府からホームに入居した方の話しの続きです。

別府から来た方は、絶対にお風呂に入りません。
ホームが「居場所」になってきてはいるものの「家」とは思っていないので、
お風呂にお誘いすると
「ありがとう。でも家に温泉があるからね。ゴボゴボッゴボゴボッっち沸いてきよる。今度、うちに入りおいで」
とおっしゃって断ります。
返す言葉がありません。

このような場合、お風呂に入れようもしても無駄だと思います。
そして、お風呂に入る事よりも大切な事があるとも思います。
そのように考えさせられる事がありましたので対策と共に記します。

お風呂でこんな事件がありました

ある職員は、この方があまりにも入らないので、一回お風呂に入って清潔になって欲しいと考えていました。
そこで、ご気分が良さそうな時に脱衣所までお誘いし、そこで説得して衣類を脱いでもらい、最終的にお風呂に入ってもらいました。
その後に事件が起きました。
お風呂から上がった後に、
「(衣類のズボンに入れていた)お金がない」
と怒ってしまったのです。
「私をお風呂に誘った人を連れてきて!」
「あの人は私からお金を盗る為に私をお風呂に誘ったのよ。入っている隙にお金を盗んだのよ」
という理屈です。

本人の視点に立つと

本人の視点に立つと、そう思われても仕方がないと思います。

  • 家に風呂があるのに、お風呂に誘われた

  • 下着にはいつも通帳を入れていて、下着は取りたくなかったのに取る羽目になった

  • 入っている間、脱衣所で職員が来ていた衣類を回収して新しい衣類に代えたのですが、脱衣所でコソコソしている気配を感じた(予想ですが)。また、実際に衣類が変わっていた

  • 職員は衣類を洗濯したいのでポケットからお金を取って、お部屋の引き出しに入れた(何で引き出し?)

  • 実際に入れていたポケットや衣類を探してもお金がなかった

この状況だったら、例え私でも計画的に盗まれたと疑うと思います。

お金はあったけど…

実際にはお金は居室の引き出しに入れてあったので、職員が本人にお金を渡したのですが、納得行ってない様子だったようです。
本人の身になると、お金があったとしても心底納得できないでしょうし、他の利用者さんにも「盗まれた」と言っていたので、ばつが悪い感じになってしまったのかも知れません。

風呂なんか入らなくて良い

「人の家」の風呂に入る?

そもそも、本人が、ホームを自分の「住み家」と思っていないのに、お風呂に入る訳がないのです。
別府の方なので「お家から温泉が出ている」等の特別な理由もありますが、
そうでなくても本人にしたら
人の家の風呂に入る理由がありません。
私も、友達の家で風呂に入ったことは今までの人生一度もありません。
誰だってよっぽどの事がない限り「人の家」の風呂には入らないでしょう。
だから、基本的にホームで風呂になんか入らなくて良いのです。

会議で周知

一般的に介護事業所の職員は割とすぐに
風呂に入れなきゃ
となります。

うちの職員さんは無理矢理お風呂に入れたりするような方はいませんが、気持ちとして入って欲しいとは思うでしょうし、今日のお風呂担当として
入れなくちゃいけない
とも思うでしょう。


そこでまず、
本人の気持ちになってもらう為に
会議で一人の職員さんとこんなやり取りをしました。

「本人の気持ちはこういう事だと思うんですよね~」
と断った上で
私と職員Aさんでやり取りをしました。

私:「Aさん。ホームのお風呂に入った事ありますか?」
A:「いいえ。入った事ありません。ある訳ないでしょ」
私:「あ。じゃあ。今日入っていっても大丈夫ですよ」
A:「大丈夫です。家にお風呂ありますから…」

利用者さんが知らない場所で風呂に入らない
という感覚は
職員が職場で風呂に入らない
というのと同じだということが伝わったようです。

お風呂に入るには

やっちゃ駄目な事

では、お風呂に入って貰うにはどうしたら良いのでしょうか。
正直わかりません。
ただ、これは駄目というのはあります。
それは、
本人にとってお風呂場が嫌なイメージになる
職員及びホームを信用しなくなる
です。

対策

大前提として、長い目で見る事にしました。
なにか対策をしたからといって
明日入る
となるとは思えないからです。
そして大切な事ですが、
入れば良い訳ではありません。
本人が自らお風呂に入る
ということが大切なのです。

対策1:
カウントをしない

ホームでは、何日お風呂に入っていないかをカウントしていて、日数が遠い人から1日3人入るようにしているのですが、
この方に関しては、そのカウントをしない事にしました。
カウントが増えていくと、
その日のお風呂担当の職員さんが
入れる日
と認識してしまうからです。

入れなくても良い
を基本とする事にしました。

対策2:
ホームが自分の居場所となる関わりをし続ける

ホームが自分の居場所となる関わりをし続けたいと思っています。
入居した最初の週は、毎日
「大分に帰る」
と言って外に出て行ってしまっていたのに、
38日経った現在ほぼ「帰る」と言わずに落ち着いています。
その理由は
本人のニーズに合う関わりをし続けているからだと考えています。
その様に考えると、
関わり次第では、
お風呂及びお風呂場も居心地の良い場所になる可能性があると思っています。

対策3:
信頼してもらう

また、現在落ち着いている理由として、
ニーズを満たそうとする関わりを通して、
他の利用者さんや私達たちを
信頼し始めてくれている事もあると思います。
それなので、
私たちを信頼してくれた先に、
安心して衣類を取ってくれたり、
安心して浴槽に浸かってくれる日は来ると信じています。

ある女性職員は、夜パジャマに着替える時に、暖かいタオルを持って身体を拭いてもらう関わりをし続けています。
そうやって信頼関係を結びたいと考えて動いているそうです。

対策4:
真実を伝え続ける

最終的に、
別府に家がある
というストーリーの中に本人がいる限りは
人の家でお風呂に入る
という認識になってしまいます。
それなので、
ここで住んでいる
と本人が認識した時
「今日は汗かいたし風呂でも入ろう」
自ら入る日は来ると考えています。

その日が来るために、
優しく真実を伝えながら
本人のニーズを叶える関わりをし続けていくしかないと思います。

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