アメリカの格差社会がもたらす意外な影響
アメリカにあるDisability Insurance(就業不能保障保険)という保険制度をご存じでしょうか?
ニッセイ基礎研究所によると、就業不能保証保険とは、「疾病または傷害により、本来の職業(own occupation)に従事できなくなった場合またはいかなる有給の職業(any gainful occupation)にも従事できなくなった場合」に国からお金が支給される制度です。
すなわち、障害などによって仕事ができなくなってしまった人に給料が支給されます。
この就業不能保証保険を使って、お金を支給されている人数が急激に増えています。
また、場所によっては4人に1人がこの保険制度で生活をしていることも判明しました。アラバマ州のHale Countyでは4人に1人が就業不能保証保険からの支給金で生活をしています。
これはどういうことでしょうか?
いきなり障害を持った人の人数が増えたのでしょうか?それとも他に何か理由があるのでしょうか?
取材で判明した衝撃の事実
アメリカのメディアがアラバマ州のHale Countyで就業不能保証保険について取材に行ったところ、衝撃の事実が判明しました。
メディアの取材でリポーターが「どのような経緯で就業不能保証保険の給付金をもらっているんですか?」と街の人に聞くと、「高血圧になったから」「メタボリックシンドロームになったから」「腰が痛いから」と答えたのです。日本やアメリカの大都市ではこのような病気を持っていても働いている人は多いですが、なぜ給付金をもらえるようになったのでしょうか?
もう少し取材団が話を聞くと、Hale Countyの有名な医者に就業不能保証保険の給付金をもらうように勧められたということが判明しました。なので、取材団はこの医者に話を聞くことにしました。
この医者は、診察の時に患者さんに「何年生まで学校に行ってた?」と聞くそうです。そして、なんと学歴が低い(高校を卒業していないなど)と判断した場合にこの給付金を勧めるというのです!
最初に言いましたが、給付金をもらえるのは「本来の職業(own occupation)に従事できなくなった場合またはいかなる有給の職業(any gainful occupation)にも従事できなくなった場合」です。先ほどの医者曰く、学歴が低く肉体労働をしなければいけない人にとっては、軽い病気でもこの条件に当てはまるというのです。
確かに、Hale Countyでは肉体労働をしている人がほとんどで、そもそも仕事で座ることができるという概念がありません。就業不能保証保険の給付金をもらって生活している人に、取材団が「もし仕事ができたら何をしたい?」と聞くと、「社会保障障害保険の書類の手続きをする人」と答えました。この理由を聞くと、「唯一座れる仕事だから」と彼女は言いました。
就業不能保証保険の給付金は、生活がギリギリできるごくわずかなお金しかもらえません。それでも給付金をもらうということは、いかに人々の賃金が低くなってしまったかを示しているような気がします。
この取材を通して、アメリカの格差社会がどのように影響しているかを少し理解できた気がします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?