オフィスアートは禁断とされてきた「個人のエゴ」を出すきっかけになる
正直、僕たちはオフィスアートの世界ではトップランナーだと思う。
なぜかというと、これまでの案件数以上に「質」が伴っていると思っていて。
お客様のなかには、オフィスをおしゃれにするために絵を入れたいという人や、「企業理念をアートにする」ということに面白さを感じてお願いしてみようかなという人もいる。
だけど、僕たちがやってることはそうではなくて。極端な話、別にオフィスに絵を入れなくてもいいと思っている。
普段、どのように企業理念をアートにしているかというと、有志の何名かとまずは企業理念についてディスカッションをする。理想は社員の1人ひとりにと対話ができたらいいけどね。そして、第一弾のラフスケッチを作成して持っていく。
この時、普段の会議の場であれば、社員さんたちも企業理念に対して「うちの企業理念のここがあんまり…」とか絶対に言えない。けれど、「絵」を目の前にした途端、面白いことに「ここが好き」とか「ここがあんまり好きじゃない」とか、みんな言いたい放題言うんだよね(笑)。
それって、長らくこの日本の会社の中であんまりやれてこなかったことだと思っていて。
というのも、「好き嫌い言うじゃありません」と言われて育ってきた人も多いだろうし、職場においては「個人的な感情を持ち込むな」といったことを言われてばかりで、「私はこれが好きです」といった個人的な意見を平気で言える機会ってなかなかないよね。
だけど、アートを持っていくと自分の会社の理念について「うちの企業理念のここが好きやねん」って、みんな言うんだよね。もちろん、関西弁だけじゃなくてね(笑)。
なかには、他社と比較して「うちの会社は業界の中でこの立ち位置にいて、競合○○社とは違って、うちはここが強みなんじゃないかなって、私すごく考えたんです。」って話を持ってこられる方もいたりして。
この工程を、アートが完成するまで何回も繰り返していくわけ。そうすると、自分の会社の理念について段々と個々人のエゴが出てくる。
そうして完成した壁画は、勝手にOVER ALLsのアーティストが独自に描いたものではなくて、従業員のみなさんと一緒に、同じ釜の飯を食うくらいの勢いで共にした時間から生み出された「僕たちのアート」になるんだよね。
それが企業理念を表しているわけだから、すごい精神的な支柱になる。
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リモートワークが広まった社会において、アートは「精神的支柱になる」
実は、リモートワークが広まったアフターコロナの社会において、この精神的支柱となるアートはとても重要になると考えていて。
というのも、リモートワークが推奨されて出社する機会が減ると「快適に働いてもらうこと」を前提としたオフィスよりも、従業員、そして社外のお客様の心をぐっと鷲掴みにするようなインパクトがオフィスに求められる。
つまり、平日はそんなに行かないけれど、礼拝が行われる土日には信者が集い、「元気ですか」なんて話をしながら交流して、心穏やかに帰っていくような「教会」的な役割を果たすようになるのではないかと思っていて。
▼「オフィスの教会化」についてはこちらのnoteもご覧ください
以前、担当者の方でアートが完成したあとに「赤澤さんごめんなさい」っておっしゃった方がいて。
僕としては、「え、なになに?」みたいな(笑)。そしたら、「いや、僕の最初の態度、悪くなかったですか?」って言われて。
「いや、そんなことないですよ!」なんて言いながらも、確かにその人最初だけ少し態度が良くなかったんだよね(笑)。
そこで、「いや実は」と。
「このプロジェクトは社長から言われて発足したものだったので、アーティストがきて、好きなように絵を描くプロジェクトをなぜ僕が担当しないといけないのかっていう意識があったんです。」と。
「だけど、僕正直アートのことなめてました。OVER ALLsさんって、ここまでやるんですね。」
さらに彼は続けた。
「僕、一番今までの中で子供に自慢したい仕事、この壁画プロジェクトです。」
とまで言っていただいて。そこまで言っていただけた理由は、僕たちが常日頃からクライアントさんと真剣勝負してるからだと思っていて。
だけど、やはりアートというものは「好き放題描くもの」といったイメージとか、「アーティストに何ができるの」と感じている人も世の中にはいるのは事実で、僕もこの仕事をしていなかったらそう思ってるかもしれない。
だから、今後もオフィスアートをやるアーティストは増えていくと思うけど、僕たちのクオリティを超えてほしい。
アーティストが、このオフィスアートという土壌を通じて一般の方々、アートファンではない人たちにアートの価値を広げるというのは、とても価値があることだし、タフな仕事だと思っている。
日本にアートを広げるためにもOVER ALLsは引き続きオフィスアートを実践していくし、より多くのアーティストの方を巻き込んで、この日本をアートで埋め尽くしていこうと考えているので、ぜひご協力いただきたいなと思っていますね。(了)
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東京の壁画アートカンパニーOVER ALLsの代表・赤澤(@overalls_aka)が「日本とアートとビジネスとその他諸々」を語る「AKA Channel」シリーズ
※本文は、動画の音起こしを行い、読みやすく一部編集したものです。
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