眠れない夜と眠りたくない夜

街には「静」と「動」の状態があるよな、と思う。

街というのは建物が集まって出来たもののことで、建物というのは人間がさまざまな活動をするためのものだから、建物の状態はイコール人間の活動状態に対応していて、つまり人間の活動が街の状態を左右すると言えるのではなかろうか。

昼間は人間が活動的なので、街は「動」の状態にあると思う。
だいたい明るいし、自然・人工問わずたくさんの環境音がけたたましく鳴っていて、建物を外から見ると小刻みに震えているような気さえする。これは完全に「動」だ。

一方、夜は人間の活動量が落ちるので、どこにいても「静」の状態だと思う。
工事の音も、人の声も、テレビのボリュームも、草木の掠れも、車のノイズも、あらゆる活動から生まれる音がとても小さくなる。

どっちが好きかと言うと、僕は夜が好きだ。
なぜなら昼より静かで落ち着いているから。

睡眠に身を委ねない夜、というのがある。
きっとあなたも一年の内に何回か、そんな夜があるだろう。

色々な理由から睡眠を取らない夜があると思うけれど、眠れない夜と眠りたくない夜があって、眠れない夜は気分がすごく落ち込む。

なんであの時ああしてしまったのだろう、どうせ自分の人生はもう発展しない、どうしてみんなは幸せそうなんだろう、僕はどうすればいいんだろう。

あらゆる要素に責められて、ゆるやかな絶望にどんどん堕ちていく。
眠れない夜というのはそんな感じで、布団と一緒にふかーい夜の底までゆーっくりと降りていくような、無気力でじんわりと最悪の気持ちのまま過ごすことになる。

でも本当は夜なんてただの現象だから、心持ち次第ではなんとなく眠るのが勿体なくて理由もなく眠らないでいる夜、みたいな日もある。

楽しかった日とか、良いことがあった日とか、心の状態が上向きの日とか、あんまり不安を抱えていない日とか、今楽しいからもうちょっと夜を続けたいな、と思う日だ。
そんな夜はなかなか来ないけれど、眠るのを取りやめにして好きな物を見たり、ぼーっと本を読んだりするのは何物にも代えがたい至福だ。

その代わり翌日はやっぱりしんどいし、帰ってきて眠気に勝てないのですぐ寝ちゃう。
そうするとまた変な時間に起きちゃって。2日で1セットという感覚。

どっちでもいいけど良い夜を過ごしたいものだな、と思う。

2019/06/16 真夜中

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