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いま、「仮面ライダーガヴ」がめちゃくちゃ面白い。
2024年9月より、毎週日曜日 朝9時から放映中の「仮面ライダーガヴ」。
人間界で暗躍する知的生命体グラニュート。
彼らは“闇菓子”を求め人々をさらう。
グラニュートによって次々と襲われる人間たち。
異世界からやってきた青年ショウマは、人々を救うために立ち上がる。
お菓子を食べることで生まれる小さなモンスター、ゴチゾウとともに
口のようなベルトで仮面ライダーガヴに…!
セット&イート、変身!
グミ、ポテトチップ、マシュマロ、チョコ、キャンディ…
お菓子の力でパワーアップ、怪物グラニュートから人間を守れ!
“お菓子な”ヒーロー、
仮面ライダーガヴの戦いが今、幕を開ける!
令和ライダー6作目。
確か去年の7月頃に解禁された情報を見たのですが、「お菓子」の力で変身する点に、今作はどう転がっていくんだろう…と感じたことを覚えています。
ライダーのデザインはどうなる?(ダサくならないといいが…)
ストーリーは?(やけにポップすぎて寒くならないかな)
そんな感じで、期待半分、不安半分という想いでいました。
ただ、放映開始からもう半年ほど観続けてきて
今作、だいぶ面白いな…というのが、いま想っていること。
第一印象から大きく変わりました。
そんなわけで、今作の魅力をいくつかお伝えしたく。
「①ストーリー」「②キャラクター」「③デザイン」
この3つの観点から挙げていきたいと思います。
⓪はじめに:登場人物
あれこれ書いていく前に、「仮面ライダーガヴ」の世界の登場人物を紹介しておいた方が良いかなと思いました。
放送終了後に「仮面ライダー公式」のXが相関図をアップしてくれているので、それを使って紹介するのが良いかなと思いました。
「 #仮面ライダーガヴ 」
— 仮面ライダー公式 (@HKR20_official) February 16, 2025
ご視聴ありがとうございました#仮面ライダーWeb の相関図でふりかえりを✨
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主人公とその仲間たち:ショウマ、絆斗、幸果、ラキア
敵(ストマック社):ランゴ、ニエルブ、グロッタ
主人公を取り巻く人々:デンテ、酸賀
このあたりの人物が中心となってストーリーが展開されています。
①ストーリー:ポップになりすぎず、意外とシビア
今でこそ、仮面ライダー作品にも「ポップで明るい」イメージが浸透しつつありますが、平成初期の「龍騎」「555」「剣」あたりが世代だった自分は、もう少し暗くてダークな路線でも良いのではないか、と思ってしまいます(老害じみたこと言ってるなぁ)。
龍騎:ライダーシリーズ初のバトルロワイヤル、最終回前に主人公が脱落、最終的には誰も生き残れない、マルチエンディングだがバッドエンド多し
555:人間に擬態した怪人が人間を襲う怪奇さ、襲われた人間が灰化して消滅する怖さ、ライダー同士の陰湿な人間関係、主人公の死を思わせるラスト
剣:友情を築いた怪人を生かすために主人公が人外化して、仲間たちのもとから消える
そら、適齢期にこの作品を3年連続で観たら、暗い作品好きな価値観も形成されるわ。
「ガヴ」も、変身アイテムに使われるゴチゾウの可愛らしさなど、要所要所にポップになる要素は挟みつつ、ストーリーの根幹は暗く、重く描かれているように感じます。
もう少し具体的に話すと…↓こんな感じ。
・怪人からも人間からも迫害される主人公
主人公・ショウマは、今作の怪人である「グラニュート」の一族である「ストマック家」出身で、怪人の血を引いています。
ただし、人間の母のもとに生まれたため『不完全な子』として忌み嫌われ、最終的には、目の前で母親を闇菓子(後述)の材料にされてしまいます。
その後、人間界へと逃れてきたショウマ。ガヴに変身し、闇菓子の材料にしようと人間を襲うグラニュートから人間を守っても、その異形の姿から「バケモノ」呼ばわりされて怖がられてしまい、身寄りもなく行き倒れてしまうこともありました。
物語の序盤はこういうシーンが多く、特に
自分が誰かを幸せにする
→その人が闇菓子の材料にされるリスクが上がる
(幸福度が高い人のほうが美味しくなるから)
→だったら自分は誰の側にも居ないほうがいい
と思い至り、せっかく自分を受け入れてくれた人たちのもとから去って、ひとり寂しくアテもなく彷徨うシーンには思わず同情してしまいました。
「仮面ライダー」シリーズに代々伝わる、『敵(怪人)と同じ力を使って戦う』『ゆえに人間にも怪人にも馴染めず孤独である』というエッセンスを、現代風に発揮しているように思いました。
最近は、ショウマに理解ある人も徐々に増えてきて、観る側としても嬉しさを覚えるのですが、それも序盤で迫害され、孤独だった姿をしっかり描いているからでしょう。
・「嗜好品」として人間が食べられる
グラニュートたちの間で裏取引されている”闇菓子”。
グラニュート界の大手製菓メーカー『ストマック社』が極秘に作製、密売しています。
口に入れた途端、全身が痺れるような甘い衝撃が走る
ありとあらゆる複雑な刺激が絡み合って衝撃が舌に、腹に、心に絡みついてくる
とのこと。
もうこの時点でおわかり頂けそうですが、これ完全に麻薬の隠語なんですよね。
そして、闇菓子の材料には人間(※)が使われており、間接的に食べられているのです。
「仮面ライダーアマゾンズ」に出てくる怪人・アマゾンみたいに『生きるために喰らう』ではなく、あくまで嗜好品である闇菓子の『スパイス』として味わっており、生きるために不可欠ではないぶん惨さも際立っています。
(※)正確には「人間の幸福な感情」らしく、その感情を吸い取られた人間は絞りカスの如く廃棄されています。さらに惨い…
そして、主人公と密接な関係のある人が、闇菓子の材料にされたり、あるいは闇菓子の売買に関わったことで命を落としています。
・ショウマの母(材料に…)
・絆斗の母(材料に…)
・絆斗の師匠(材料に…)
・ラキアの弟(売買に関わった末、抹殺)
・闇菓子を通じて人間が食べられる惨さ、闇菓子自体に関わった報い
・主人公たちの大切な人がそれに巻き込まれた
これらにより、敵に立ち向かう動機が確固たるものになり、ストーリーに一本芯を通せている(だから観ている側も感情移入できるシーンが多い)のだと思います。
・ネグレクト、出会い系、闇バイト…社会問題にもメスを入れる
先述の通り、ショウマは一族から忌み嫌われていたのですが、当時の回想の中では、人間である母親とともにある部屋に閉じ込められており、2人で寝食を共にしている光景が描かれています。
同じように、ショウマを忌み嫌っていた双子の兄弟、シータとジープも、幼い頃父親や兄、姉に相手にしてもらえなかった(だから2人で手を取り生きていくしかなかった…って展開には思わず同情した)シーンが描かれており、これらを通してネグレクトの酷さを伝えているように思いました。
また、出会い系サイト(意地でも「マッチングアプリ」とは言わない)で知り合った男性がグラニュートで、ショウマが女性のフリをして会いに行って一網打尽にする回もありました。
先日の闇菓子の項でも触れた、ラキアの弟が闇菓子の売買に関わったことで命を落としたことも、昨今の闇バイト問題を反映しているようですしね。
こうして、昨今起こっている社会問題を題材にした、子供たちの教訓にもなる話が多いのも「ガヴ」の魅力のひとつだと思います。
お子様のいる家庭ではぜひ、親子で一緒に観てみてあれこれ話せるきっかけになればと思います。
②キャラクター:ブレない芯を持った人物たち
「⓪はじめに」の項でも紹介した、今作の登場人物たち。
非常にバラエティに富んだ面々ですが、今作を観ていて『良いな』と思うのは、それぞれのバックグラウンドがしっかりしているので、言動のブレが少ないこと。
そのことを踏まえて、直近のストーリーを振り返ると…
ショウマは、自身がグラニュート(ガヴ)であるがゆえに人間に迫害された過去があるから、自分の正体を周りに言えずにいました。
ただ、自分の正体がバレてしまい、絆斗と一時期すれ違います。
なぜなら、絆斗は母親をグラニュートに攫われた過去があるから、グラニュートであるショウマが許せなかったのです。
ただ、その後そうした自分の気持ちが強過ぎたからショウマが自分の正体を打ち明けられなかったのだと内省し、ショウマに謝って和解します。
正義感が強く、真っ直ぐな一面があるからこそ自分の過ちをちゃんと詫びれたのだと思います。
2人がそうやって和解できるきっかけになっていたのが、幸果さんだと自分は思っています。
絆斗から、ショウマがグラニュートだと言われても、そのことに驚くより先に「ショウマの秘密を勝手に喋った」ことに激怒し、自分がこれまで見てきたショウマを信じる姿勢を見せています。
その後ショウマからすべての話を聞いても、グラニュートであることに怖じたりするのではなく、惨い仕打ちをしたストマック家への怒りを露にしています。
これまでに築いてきた信頼関係がそう簡単に崩れなかった点に、観ている側としても安心したことを覚えていますし、それぞれの人物の『芯』がちゃんと感じられて、より好きになれました。
正直、過去の作品だと『早とちりがゆえのすれ違い』や『言動がコロコロ変わる』シーンもあり、『そうはならんやろ』と思うこともありました。
そうした想いに気を取られることがないぶん、作品の魅力がストレートに伝わってきますし、安心して観ることができます。
③デザイン:お菓子モチーフなのにカッコよく芸術的
『ガヴ』がお菓子モチーフであると知った時、真っ先に思ったのは
(デザインがダサくならないといいな…)ということ。
お菓子の要素をどうやって仮面ライダーのデザインに落とし込むのか、まったく想像がつかなかったのです。
ただ、実際に蓋を開けてみれば…
どのライダー、フォームのデザインもカッコ良くまとまっていて良い!
それどころか『よくここまでカッコよく落とし込んだな』と感心してしまい、芸術的であるなとも感じます。
いくつか紹介してみますと…
ガヴ ケーキングフォーム
ショートケーキをモチーフにした、ガヴの中間フォーム。
生クリームの白、イチゴの赤、スポンジの金の3色のバランスが絶妙で、派手でゴテゴテし過ぎず綺麗にまとまっていると思います。
頭や肩にあしらわれたホイップの流線も特徴で、特に頭のそれは王冠のようにも見えて高貴な印象すら感じます。
ヴァレン ブシュエルフォーム
ブッシュ・ド・ノエルをモチーフにした、ヴァレンのフォームのひとつ。
ブッシュ・ド・ノエル=丸太を胴体と肩にあしらっており、チョコレートベースのカラーリングも相俟って、こちらも派手になりすぎず綺麗にまとまっています。
アンテナのように見える、複眼の横の枝木もナイスアクセント。
ガヴのブシュエルフォームはホイップクリームベースで白を基調としているのに対して、ヴァレンはチョコレートベースの色合いである対比も面白いです。
ガヴ ブリザードソルベフォーム
次週より登場する、ガヴの新しいフォーム。
アイスクリームがモチーフなのですが、コーンの意匠の散りばめ方がアートだなと思います。
特に頭部の角のように見える部分!こう落とし込むんだ…って感心しちゃいました。
その下のボディは青や紫(多分ソーダアイス)を基調としたうえで、アクセントとして白のライン(こちらはバニラアイス)が入っているのがかっこいいですね。
また、デザインだけでなく、モチーフにしているお菓子の特徴が戦い方にちゃんと表れていてバラエティ豊かなのも面白いポイント。
今のところ、一番フォーム数が多いガヴを例にとると
ポッピングミ(グミ):基本フォーム
ザクザクチップス(ポテトチップス):機動性が上がり剣をふるって戦うこともできるが、剣の扱いにクセがあり、かつパワーは少し落ちる
ふわマロ(マシュマロ):衝撃吸収性が上がっており、近接戦で有利だが、動きにくく機動性に欠ける
グルキャン(キャンディ):硬度や火力は破格だが、機動性はほぼない
相手によって、これらの特徴を使い分けて戦うシーンも多く、今後もぜひ色んなフォームが登場してほしいと思うばかりです。
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こんなところですかね。
また何か思うことがあったら書きたいと思います。
明日の放送で、放送からちょうど半年になり、物語も丁度折り返し地点。
これからどんな展開が待ち受けているか、今から楽しみにしておきます。