暗い話がしたい。

ふと、暗い話がしたくなることがある。
複数人で宅飲み。夕食時ぐらいから開始。テーブル上に広がる宅配ピザを片手に缶チューハイで乾杯。傍らにある大きなドン・キホーテの袋には、2Lのソフトドリンクやピザポテトとかのお菓子が詰め込まれている。机の上のものが平らげられるたびに、ひとつずつ補充されていく。
テレビに映るバラエティタレントや、ニュースの話題を火種に世間話。徐々に、各人の近況などに話題がすり変わっていく。どことなく差し障りなさを覚えるものの、みんなそれぞれの人生があるのだと思える。

夜も深まり、終電やら明日の予定やらの都合で帰る人が出てくる。宴もたけなわといった雰囲気を感じつつ、残った人たちで机の上に置きっぱなしにされていた空き缶やピザの箱、お菓子のゴミを片づけていく。ひと仕事終えたと言わんばかりの晴れやかな表情で、まだ残っている缶チューハイを片手に仕切り直す。みんななかなか帰ろうとしない。

深夜3時頃。
そろそろ寝る体勢になろうと思い、部屋の明かりを消す。豆電球だけは点けたままにしておき、床の上でまだ残っていた友達と雑魚寝。
暗い部屋の中でボーッと天井を眺めていると、先ほどまでの明るい部屋と雰囲気の中では塞き止められていた想いがふとこぼれそうになる。眠気で意識が朦朧としていることもあり、そのまま吐き出す。
仕事のこと、恋愛のこと、今後の人生設計のこと。胸の内から出てくる、本当の本当に思っていること。決して人には言えなさそうなこと。
眠そうな、でもはっきりとした相槌が隣から聞こえてくる。ひとしきり話し終えると、今度は友達のほうから話し出してくれる。それも、普段明るい空の下過ごしている中では決して聞けないこと。
きっと、こんな遅くまで自然と一緒に居られて、こんな暗い話ができる人のことを「友達」というのだと思う。

そんな風に暗い話がしたい。そんな話が出来る空間の中を、いつまでも揺蕩っていたい。

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