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映画『スマホを落としただけなのに』


映画の内容に触れますので、ネタバレを避けたい方は読まないでください。


富田誠(田中圭さん)の病院でのシーン。稲葉麻美(北川景子さん)の真実を知った富田が、まず口にした言葉が「僕、自分が彼女を苦しめていたことに全然気づいていなかったんですよね」であった。このシーンは病院に運ばれてから数日たった後だと思う。その時間で色々考えたのかもしれない。真実を知らされたときはとても驚いている様子だった(そりゃ驚きもするだろう)。しかし、それでも病院のシーンでの富田の第一声は彼女(稲葉麻美)に対しての思いやりであった。そのシーンがとても印象的だった。

真実を話した後、稲葉麻美は言っていた。「ずっとだましていてごめんなさい」と。しかし、本当にだましていたのだろうか。「だます」とは何だろう。そこに「秘密」はあったと思う。しかし、だましていたわけではなかったのではないか。だからこそ、富田は「僕はずっとだまされていたんだ」という方向でははなく、「僕は彼女を苦しめていたんだ」という方向になったのではないか。

「秘密」があったからといって、必ずしも相手が「だまされていた」と感じるわけではない。愛していないのに、愛しているフリをしていた(嘘をついてだましていた)わけではないのだ。だからこそ、富田誠と稲葉麻美はカタチを変えながらも二人の関係を結びなおすことができたのではないかと思った。


加賀谷学(千葉雄大さん)の病院でのシーン。「僕、自分が彼女を苦しめていたことに全然気づいていなかったんですよね」「なんか、、、色々と自信なくしちゃって」と話す富田に対して、加賀谷が選んだ言葉が印象的だった。

加賀谷は「うらやましいです」「そんな風に人を愛せるって」と言った。つづけて「見たことありますか?稲葉さんのスマホに保存されていた写真」と言うと、富田は「いえ」と返し、加賀谷は「ふたりの間に何があったのかは知りませんけど、稲葉さんが富田さんを思う気持ちに偽りはないと思いますよ」と伝えた。

加賀谷は「どうすればいいのだろう」「僕に何ができるのだろう」と考えたのではないかと思う。富田に対して何ができるのだろうかと。ほんの少しの時間ではあるが、加賀谷が富田にその言葉を伝えるまでには、しっかりとした「間」があった。この短い時間でその言葉の選択をした加賀谷にとても感心した。

その振る舞いは、とても爽やかな伝達だった。


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