Kite
つい先日出演させてもらったセッション会でホストミュージシャンをした時に、打ち上げでお客さんとお話をさせてもらう機会がありまして。そこでB'zの話になった。なんでB'zの話になったのかは思い出せない…。「B'zで好きな曲は何か」という話になった時にパッとタイトルが出てこなかったのだけれど、シングル『愛のバクダン』のカップリング曲の「甘く優しい微熱」が好きだったなぁと思い出して。
そも、邦楽についてあまり言及することがないので時折驚かれるのだけれど。けっこう好きですよB'z。なんでかシングルカットされてない曲ばかり好きなんだけどね。そういうことが多い。
自分のルーツである洋楽の、それこそ80年代のハードロックでも。WHITESNAKEの『サーペンスアルバス』なら多くの人が「Still of the Night」や「Here I Go Again」を挙げるところ、自分は「Straight for the Heart」や「Don't Turn Away」が特に好きだった。一つとして捨て曲のない名盤ではあるので、ランキング付けができない部分ではあるのだけれども。取っ掛かりとして琴線に触れるのは、いわゆるシングルカットから外れたアルバム曲やカップリング曲が多い気がする。
以前記事にしたBON JOVIの「Radio Saved My Life Tonight」然り、HARDLINEの「Love Leads The Way」然り。畑を飛び越えるがDragonforceの「Lost Souls In Endless Time」(『Inhuman Rampage』日本版収録)なんかも大好き。どうしてシングルカットされていないのかが不思議。BAD ENGLISHなら「Straight to Your Heart」だし、Circus Maximusなら「Last Goodbye」が良い。
今月は過去最高に忙しくて休みが全然無いので(笑えるぐらい無い)、移動の隙間時間に小説を読んだりアニメを消化したりするので手一杯なのだけれど、あえて週に70〜80曲消化しないといけない期間に「音楽を楽しんでみる時間」を設けてみたりもして。朝出かける時や仕事を終えて帰る時に限るけれど。
仕事から切り離して、純粋に音楽に溶け込む時間。音に包まれる、抱きしめてもらうような、混じりっけのない一瞬一瞬に助けられる。何気なく慣例的にヘッドホンをするのではなく、インターフェースを装着することで「今からこの世界に飛び込む」という感覚。
さて、何を聴こうか。どんな曲を探そうか。そんな時間を楽しんでみる。
”最近ぜんぜん聴けてなかったなぁリスト”の中でも、思い入れの強い一曲がU2の『Kite』。疲れた身体を引きずって家路につくには最適な曲なのにね、すっかり引き出しにしまったままだった。自分にとっては”気が付くと鼻歌を歌ってしまいがちな曲”の上位にある一曲でもある。今はもう会えなくなってしまった友人達を思い出す曲でもある。
というのも、この曲が収録されている『All That You Can't Leave Behind』はU2で最初に買ったアルバムで、自分にとってのU2の原風景、原体験が全て詰まっている。古き良きU2ファンからしたら新しい時代の作品なのかも知れないけれど。確かアンジーが実写版でララ・クロフトを演じた『トゥームレイダー』の主題歌だったから買ったんじゃなかったかな。映画キッカケで。
心の一番弱くて脆い部分をそっと撫でてもらえるような、優しくて、柔らかくて、熱くて、芯は静謐な、珠玉のアルバムだと思う。感情の中の濁った部分、モヤモヤや疲れを溶かしてくれる。楽曲ごとの歌詞やテーマも素敵。これまた個人的には捨て曲がない名盤だと思ってはいるのだけれど、やはり『Kite』が飛び抜けている。何万回でも聴ける。
いわゆる応援歌(便宜的にこう表現する)であったり、平和や愛、生きることの痛みについて歌っているけれど、まったく陳腐に聴こえない歌詞の豊かさ、楽曲の堅牢さ、ボノの歌声の優しさがすごいなぁと思う。
ちょっとゴスペルやピンクフロイドっぽい作風かも知れない。次作も名盤だけれど、僕はやっぱりこれが一番好き。
『All That You Can't Leave Behind(置き去りにできないものすべて)』というタイトルも素敵。
歩き疲れた人は、よかったら聴いてみてね。
大切な人と離れ離れになってしまった人も。
明日が来るのが怖い人も。
いつかこういう優しい曲だけカヴァーするみたいな癒し系ライヴとかしたいなぁ。誰か一緒にやらない?