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#51 意識の違いで継続時間は変わる

壁に背中をつけて、椅子に座った姿勢をキープ。

だんだんと太もも周りが熱くなってきて、痛みも出てきて、ああ、もダメだ。。

皆さんはこの空気イス、行ったことがありますか?

90秒以上できたら上々、2分を超えたらかなり優秀。

今回はこの空気イスを使って、何に意識を向けると継続時間が長くなるのかを検証した論文をご紹介します。

これを応用してラストスパートなどで辛くなってきたとき、何に意識を向けると良いのかにつなげていきたいと思います。



意識とパフォーマンス

意識とパフォーマンスに関する研究は昔から盛んに行われていて、

体の内か外、どちらに意識を向けるべきか?

という研究では、外に意識を向けて動作を行った方が、内に意識を向けるよりも動作の精度が良いとする論文が数多くあります。

たとえばボールをキャッチする際は、

・飛んでいるボールの感覚をイメージする(外への意識)

ことの方が、

・キャッチしようとする腕の動きに注意を向ける(内への意識)

よりも動作がスムーズで、かつ精度も高いといったものです。

一方で持久系のスポーツでは、トップアスリートはトレーニング中は外への意識、試合中は内へ意識を向けて走っているという報告もあります。(参考文献1)

何に意識を向けるのがベストなのか?その考え方は競技や状況によって異なり、また研究者によっても異なっているのが現状のようですが、一つ一つの検証内容を読み解くことで私たちにも役立てられる知見が数多くあります。

今回の記事では川崎が読んできた「意識」関連の論文の中でも、なるほどなと思えたものをご紹介します。

今回の論文では内/外(Internal/External)の区別に加えて、動作に関係のある事に注意を向ける(Associative)のか、関係のない事に注意を向ける(Dissociative)かといった区別の二軸で意識の矛先をタイプ化しています。

検証はグループAに以下の意識1と2、グループBに意識1と3の方法で実施してもらっています。

意識1:脚に意識を向けて、角度を維持:Internal&Associative

意識2:脚を棒と見立てて、角度を維持するよう意識する:External&Associative

意識3:2m先にある2つのコーンの間に仮想の線をイメージし、それを意識し続ける:External&Dissociative


外への意識で結果が良好

今回の検証では意識1の「脚の角度」に注意を向けることは内への意識(Internal)で、意識2と3は体の外への意識(External)とう方向性でした。

従来より外への意識の方が動作の精度は上がるとされていて、今回の検証では持久的なパフォーマンスも外への意識で結果が良くなる傾向にありました。

(そこまで劇的な変化ではありませんが、以下のように内への意識と外への意識で継続時間に統計的に差があるという結果です。)


外への意識であれば動作への関連度は影響しない

一方外への意識を比較した場合、

・脚を棒に見立てて、角度をキープ
・コーンの間に仮想の線を引いてイメージをキープ

の2つの方法では空気イスの持続時間に差は見られませんでした。


脚を直接意識するよりも、アナロジー(比喩)的に意識すると良い結果

今回の検証で興味深いところは、脚を直接意識するのか(内への意識)、脚を比喩的に意識するのか(外への意識)で結果が異なっていたことです。

論文では脚を直接意識してしまうと付随して疲労感なども強く感じてしまう一方で、脚を棒に見立てることで感覚的なものは排除されて純粋に角度にフォーカスをあてられたのではないかと考察されています。

この結果をペダリングに置き換えると、

太ももの筋を意識しながらペダリングをすること(Internal & Associative)は疲労を助長することに繋がりそうです。

一方で脚をピストンの一部に見立ててペダリングすること(External & Associative)は、疲労の観点からは良いキューイングになるかもしれません。

経験談になりますが、私はVO2max系のトレーニングを行っている最中に意識をどこに向けるかで最後の粘りがかなり違ってきます。

たとえば5分インターバル走中、脚が熱くなってきて、息もかなり荒くなってきたとき、

脚の疲労を気にしていると後半疲労感が強くケイデンスが落ち、ラスト30秒必死に踏んでいる状態だとすれば、

目の前の壁(スマートトレーナーでトレーニング中)にイメージで線を引く(今回の実験のように)ことや脚をピストンのイメージで回すと後半もケイデンスを落とさずにインターバルを終えることができます。

インターバル終了時の脚の辛さも、割合小さい気がしています。

何に意識を向けるかでこんなにも違うんだなあということを改めて感じている昨今です。

皆さんも色々と意識の向け方を変えてみて、疲労の感じやすさやパワーの維持に有効な意識戦略を探してみてください。

一つ言えることは、脚の疲労を気にすることはおススメできません。


今回も最後までお読みくださりありがとうございました。

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また読みに来てくださいね。


併せて読んでもらいたい記事


参考文献

  1. Lind, E., Welch, A. S., & Ekkekakis, P. (2009). Do “Mind over Muscle” Strategies Work? Examining the Effects of Attentional Association and Dissociation on Exertional, Affective and Physiological Responses to Exercise. Sports Medicine, 39(9), 743–764. http://links.adisonline.com/SMZ/


ご紹介した論文

Lohse, K. R., & Sherwood, D. E. (2011). Defining the focus of attention: Effects of attention on perceived exertion and fatigue. Frontiers in Psychology.

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