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ジロを走った日本人 書籍紹介#4「僕のジロ・デ・イタリア」山本元喜

現役プロロードレーサーの山本元喜さん(現在:キナンサイクリングチーム所属)が2016年のジロ・デ・イタリアに挑戦した激闘の21日間を綴った書籍をご紹介します。




論文だけでは決して分からない激闘

実際に映像で見るジロ・デ・イタリア、選手たちのパフォーマンスの高さに驚くばかりですが、職業柄か一体どれくらいキツいのだろうかと数値的なもので知りたくなります。

グランツールの厳しさを少しでも感じたいと、いくつかの論文に目を通していますが、やはり実際に闘った人の言葉ほど情報豊かなものはありません

山本選手の文章は本当に読みやすくて、ご自身の体調や仲間の調子、周りの選手の息遣いなどが頭の中に映像として浮かんできます。

この著書から、論文だけでは決して分からない激闘の様子が垣間見えます。

こうして、僕のジロがはじまった。


プロ選手たちはレースを走って強くなる

山岳ヒルクライム中に意識が遠のいたのに登り切ったり、足切り回避のために必死にもがいている様子など、山本選手が苦しんでいる場面や描写がたくさんあったり、

恐ろしいほど速い下りの技術をジロで身に着けていった過程などが感覚や感情とともに描かれています。

ジロ・デ・イタリアで闘った一日一日が章立てされており、山本選手がジロを闘う中で強くなっていっているんだなということを感じます。

プロ選手にすればレースで強くなることは当たり前のことかもしれませんが、私たち一般人には貴重な経験談が書かれています。

一度経験してしまえばこっちのものである。もし次に同じ状況に襲われても(できれば勘弁願いたいが)、僕はもう「知っている」。


日本の若者へのメッセージ

この著書を通じて山本選手は次世代のヨーロッパなどの海外を目指す少年少女に向けてにエールを送っています。

著書には山本選手の少年時代から大学時代も振り返られており、エピローグでは具体的なアドバイスも書かれています。

次代に繋ぐ意志のアツさに感銘を受けました。

なぜなら、ジロを走った僕は「普通の少年」だったから。


おわりに

山本選手のお人柄なのかもしれませんが、文章がすごく柔らかくて、読んでいるこちらが緊張することはありません。

言葉が適切ではないかもしれませんが、プロの威厳が表に出すぎないようにされています。

そのため読みやすくて、レースの状況に引き込まれます。実際に山本選手になってレースを走っているかのように感じられる文章のタッチも、この著書が好きな理由の一つです。

プロロードレーサーの世界を垣間見たい方、そして海外を目指している若手のみなさんに是非おすすめしたい一冊です!

ご興味のある方、是非読んでみてくださいね。

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