【3min all-out test】 クリティカルパワーの測定
前回記事でクリティカルパワー(CP)についてお伝えしたので、その測定テストのご紹介をしておきますね。
クリティカルパワー(CP)とは
クリティカルパワー(CP)とはスポーツ科学論文で取り上げられることの多い指標で、簡単に言うとCP以上のパワー発揮はVO2maxゾーンになります。
トレーニング強度の設定を行うときにはどの強度からVO2maxゾーンになるのかを知っていると大変便利です。
今回はVO2maxゾーンの境目にあたるクリティカルパワーを知るためのテスト方法をご紹介します。
3min all-out test
行うことは至ってシンプル。全力で3分間漕ぎ続けます。
そしてラスト30秒の平均パワーがみなさんのクリティカルパワーです。
しかしこのテスト、行う上で注意しておきたいことが複数ありますので順を追ってご説明して、最後にまとめを行いますね。
1.ギア比の設定
現在設定しているFTPパワーで漕いでいるとき、皆さんにとって一番しっくりとくるケイデンスは70-90rpmの範囲ではどのあたりでしょうか?
FTPパワーでしっくりと回せるギア設定をテストで使いますので、覚えておいてください。
2.テスト前の助走
テストは助走した状態から行います。助走は3分間リカバリーゾーン程度のかなり軽いパワーで回します。このときのケイデンスは自由です。
そして最後の5秒(テスト開始5秒前)から110-120rpmほどにケイデンスを上げ始め、その状態でテストに突入しましょう。
テスト開始時に、1で設定したギアにすぐに変速してください。
3.始めから全力(ペーシング禁止)
これが最も大切です。テスト開始と同時に、ラストスプリントをするかの如く本気で回します。恐らくケイデンスは130rpm以上になりますが、それでOKです。
パワー発揮をグラフにすると始めの5-10秒で最高を迎えて、徐々に下がっていくのが理想です。
上図のようになだらかに低下せず、途中からパワーが高くなるようなペーシングを行うと正確性が損なわれますので、テスト失敗です。
そしてダンシングも禁止です。
始めから持てる力を全力投入し続ける3分間が、このテストで求められる成果です。
また、途中でギアの変速はしないで行いましょう。
4.残り時間を見ない
ペーシングにも関わりますが、残り時間があとどれくらいかを見てしまうと無意識にペースが落ちます。
ですので、残り時間の表示は見ないように実施しましょう。
5.最後まで回しきる
テスト終盤はかなり苦しいです。
「ああ、もうだめだ」と脚を緩めてしまうと推定値が低く見積もられてしまいますので、回転数は落とさずに踏み抜きましょう。
以上をまとめます。
<3min all-out test>
3min 助走
3min テスト(始めから最大パワー発揮)
※ペーシング禁止
※ダンシング禁止
※残り時間を見ない
助走の3分間はリカバリー強度で、回転数は自由
助走区間のラスト5秒で回転数を120ほどまで上げる
テスト開始と同時にギアを変える
始めから余力を残さず全力を注ぎこむ
ラスト30秒の平均パワーが、あなたのクリティカルパワーです。
スマートトレーナーがあると理想
勾配が安定した峠道であれば出来るかもしれませんが、全力を出して周りに注意が払えませんので、スマートトレーナーで行うのが良いと思います。
Zwiftなどのアプリがあればトレーニングメニューを自作できます。
・助走区間はERGモードでパワー固定
・テスト区間はフリーモード(ご自身のギア設定)
・テスト区間は30秒×6の区間で分割して作成
でメニューを作成しておけば、予め設定しておいたギア設定を変更せずに助走区間からスムーズにテスト区間へ移行できると思います。
またテストの3分間を30秒×6区切りにしておくとパワーの低下推移を数字で見れて、ラスト30秒の平均パワーもすぐに分かります。
もしアプリがない場合は少し面倒ですが、データのファイル拡張子をファイルコンバーターでCSVファイルに変化すれば、エクセル上でラストの30秒区間の平均パワーを計算することができます。
その他の留意事項
クリティカルパワーの測定は、2-15分の任意5点で全力走を行う方法が最も信頼できるとされています。
しかしこの方法を完了するには日数がかかり過ぎますので、私たちにはフィットしません。
そこで考案されたのものが今回ご紹介した3分間全力走です。
一回の計測で完了するため実施しやすい方法ですが、賛否両論のあるテストでもあります。
具体的には以下のようなことが言われています。
5点をとって測定した正確なクリティカルパワーよりも高い値になりやすい
特にプロサイクリストは高くなりやすい(ペーシングが優秀すぎる)
ラスト30秒の平均ケイデンスがしっくりくるケイデンスよりも+10前後高い場合は低い推定値になりやすい
このようなデメリットがある理由は、ラスト30秒までに無酸素パワーを使い切ることの難しさが関わっています。
無酸素パワーを使い切るためにはどの時点でも最大限のパワーを発揮し続ける必要がありますが、心理的にかなりハードルが高いことはご想像がつくかと思います。
この点をクリアできれば信頼できる値を定期的に測定できて、トレーニングの成果を確認する良い方法です。
是非、試してみてくださいね。
参考文献
Vanhatalo, A., Doust, J. H., & Burnley, M. (2007). Determination of critical power using a 3-min all-out cycling test. Medicine and Science in Sports and Exercise, 39(3), 548–555. https://doi.org/10.1249/mss.0b013e31802dd3e6
Vanhatalo, A., Doust, J. H., & Burnley, M. (2008). Robustness of a 3 min all-out cycling test to manipulations of power profile and cadence in humans. Experimental Physiology, 93(3), 383–390. https://doi.org/10.1113/expphysiol.2007.039883
Bartram, J. C., Thewlis, D., Martin, D. T., & Norton, K. I. (2017). Predicting critical power in elite cyclists: questioning the validity of the 3-minute all-out test. International Journal of Sports Physiology and Performance, 12(6), 783–787. https://doi.org/10.1123/ijspp.2016-0376
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